2014 Fiscal Year Research-status Report
らい菌の細胞内寄生機構の解明とそれを応用したハンセン病検査法の開発
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26461708
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
石井 則久 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター, センター長 (50159670)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 幸一 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 室長 (20206478)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ハンセン病 / らい菌 / 細胞内寄生 / 皮膚抗酸菌症 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハンセン病の起因菌である「らい菌」の真皮内マクロファージにおける寄生の分子機構を解明するために、高血圧ヌードラット(SHR/NCrj-rnu)足蹠で増菌させたviabilityの高いらい菌と加熱による死菌をそれぞれヒト単球系細胞でありマクロファージに分化可能なTHP-1細胞に添加し、培養前後の細胞からRNA、タンパク、および脂質を精製した。RNAは、Agilent Whole Human Genome Oligo DNA Microarray chipを用いたDNAマイクロアレイ解析を行い、得られた膨大なデーターを解析ソフトGenMAPPなどを用いて生物情報学的解析および統計学的解析を行った。また、全脂質を抽出し、Prominence HPLC(島津製作所)とLXQ Linear Ion Trap Mass Spectrometer(Thermo scientific)を用いてLC/MS解析を行った。 その結果、未処置のTHP-1細胞と比べ、死菌を添加した細胞では73の遺伝子の発現が増加し、13遺伝子の発現が減少したのみであったが、生菌を感染させた細胞では、それぞれ1085種と790種の遺伝子発現が有意に変動しており、らい菌生菌は死菌に比較して宿主細胞の遺伝子発現プロフィルに大きな影響を与えることが判明した。その中で特に、転写因子であるperoxisome proliferator-activated receptors (PPARs)によって制御される脂質関連遺伝子群の発現が大きく変動していることがわかり、そのmRNA変動をrealtime PCRで、タンパク変動をWestern blottingで確認した。脂質に関しては、phosphatidylcholine(PC)やtriacylglycerol(TAG)の存在量が大きく変化することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画通り、高血圧ヌードラット(SHR/NCrj-rnu)由来のらい菌をヒトヒト単球系細胞でありマクロファージに分化可能であるTHP-1細胞に感染させ、経時的にRNA、タンパク、脂質を精製した。RNAはDNAマイクロアレイ解析に供し、統計処理を行うことで細胞内脂質代謝関連遺伝子を調節する転写因子PPARsが変動することを解明し、realtime PCRおよびWestern blottingで、それぞれmRNAおよびタンパクの変動を検証した。また、脂質の質量分析も行い、PCやTAGが変動することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたmRNAおよび脂質の解析を継続することによって、らい菌生菌のみによってmRNAやタンパク発現、あるいは細胞内のタンパクの局在などが影響を受ける宿主因子を同定する。さらに、それらの遺伝子やタンパクの変化が、実際に菌の細胞内寄生に影響を与えるか実験的に検証を行う。先ず、らい菌生菌のみによって変動し、菌の細胞内寄生に関与する可能性が考えられた因子について、個別にreal-time PCRやWestern blottingによってその変動を検証する。また、タンパクに関しては細胞内局在の変化やリン酸化状態の変化についても確認する。 次いで、その機能を実際に検証するために、同定された遺伝子の発現プラスミドを導入して当該タンパクを過剰発現させたり、siRNAを用いて遺伝子発現をノックダウンすることによって、らい菌生菌による変化を打ち消すことでそれら因子の作用を評価する。 また、それまでに同定された宿主因子の発現状態をハンセン病患者の皮膚スメアや組織において評価することで、臨床上重要な予後や治療効果、さらにらい反応などを精度良く予測することが可能となるような検査法の開発のための検討を行う。
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Causes of Carryover |
些少な残額であり、初年度予算の大部分は執行できている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
些少な使用額であり、研究計画に変更は無い。
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Research Products
(3 results)