2015 Fiscal Year Research-status Report
らい菌の細胞内寄生機構の解明とそれを応用したハンセン病検査法の開発
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26461708
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
石井 則久 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター, センター長 (50159670)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 幸一 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (20206478)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ハンセン病 / らい菌 / 細胞内寄生 / 脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に、らい菌ヒト単球系THP-1細胞に添加した後のmRNAを用いたDNAマイクロアレイ解析をおこなった結果、脂肪代謝に関連する遺伝子発現が大きく変動していたことから、それらの発現調節に重要な働きをする転写因子であるperoxisome proliferator-activated receptors (PPARs)をらい菌感染後の細胞内脂質蓄積に重要な分子として同定した。そこで今年度は、PPAR-α、PPAR-δ、PPAR-γおよび脂質の輸送に直接関連する遺伝子群の発現がらい菌感染後にどのように変化するかreal-time PCRによって確認した。その結果、らい菌を感染させるとPPAR-γとPPAR-δのmRNA発現が誘導されることが明らかになった。らい菌の加熱死菌ではそのような誘導は起こらなかった。また、PPARsシグナルの活性化がマクロファージにおいて脂質蓄積を誘導できるかどうかを調べるために、PPARsのアゴニストでTHP-1細胞を処理すると、細胞内に大量の脂質蓄積が誘導されることがオイルレッドO染色により明らかになった。これらの結果より、らい菌が宿主マクロファージに感染することにより、脂質代謝や免疫反応に関わる転写因子であるPPAR-γとPPAR-δの発現を誘導することでファゴゾーム内に脂質を蓄積・維持し、菌の寄生に有利な細胞内環境を構築することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
らい菌感染によってPPAR-γとPPAR-δのmRNA発現が誘導されることが、細胞内脂質蓄積につながることが明らかになった。一方、当初予定していたPPARタンパク発現については、使用した市販の抗体ではWestern blottingで特異的バンドを確認することが出来なかったため、他の抗体を用いてさらなる検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を基に、らい菌感染後に発現が大きく変動し、患者の予後や治療効果を反映する臨床検査マーカーとなる可能性がある様な候補遺伝子をPPARs下流の脂質代謝関連遺伝子群の中から選び出す。らい菌感染後の遺伝子発現変化はRT-PCRおよびreal-time PCRで行い、発現量が高くかつ発現変動が大きいような遺伝子を選別する。最終的に、治療前後のハンセン病患者皮膚スメア材料から抽出したmRNAを対象として、上記で選び出した候補遺伝子の発現変化を検証する。発現に変動が確認された遺伝子は有用な臨床検査マーカーとなるばかりでなく、さらにその機能について検討を進めることによって新しい治療の分子標的となる可能性が期待される。
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Causes of Carryover |
些少な残額であり当該年度予算の大部分は執行されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
額が小さく研究計画に変更は無い。
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