2014 Fiscal Year Research-status Report
脳DNAメチル化再編の次世代への継承と生化学的環境変化
Project/Area Number |
26461711
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松澤 大輔 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10447302)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / エピジェネティクス / 恐怖条件付け / 次世代 |
Outline of Annual Research Achievements |
青年期に好発する不安障害やうつ病などの精神疾患の発症脆弱性や治療反応性の有無には個人のストレス耐性の差が強く関与していると考えられる。それには出生後に発現調節を受ける、DNAメチル化に代表されるエピジェネティックな現象、特に小児(発達)期における脳内遺伝子のエピジェネティックな再編成の関与が考えられる。本研究ではマウスにメチルドナー制限食を用いて促した小児期のDNAメチル化の再編成が、成長後のストレス耐性、刺激に対する生理的反応、不安・抑うつ・社会性等の行動面に影響を与えることを多角的に検証、発達期脳内遺伝子制御の与える精神疾患への影響を探り、再編成したDNAメチル化の回復が治療につながることを検討する。以前の我々の研究で、マウスの発達機脳内におけるDNAメチル化の再編成は、恐怖や不安の学習に海馬における遺伝子発現の変化を伴いつつ変化を生じていることがわかった。本研究では、それが回復可能なのかを、高速液体クロマトグラフィーをもちいてまずはDNAメチル化再編された脳で、どのような神経伝達物質の変化が生じているのかを探り、その後どのような環境下、もしくは治療薬にて変化した行動を回復させることが出来るのかを検証する。さらに、親世代で脳DNAメチル化再編と行動変化が会った場合に、それが次世代に伝達可能な情報として伝わるのかを検証する。これまでに、匂いによる条件付けでは、マウス精子の嗅覚受容体DNAメチル化変化が次世代に親世代の行動変化を受け継がせることは発表されている。一方我々のような情動行動に対する変化が同様の形式で次世代に移行しうるかは検証されていないため、本研究にて検証していきたいと考えている。現在、行動実験は、次世代(F1)マウスに対して、恐怖学習とオープンフィールド、高架式十字迷路などを行って、親世代(F0)の行動結果が反映される結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在は特に次世代への影響について、オスの親世代マウスから生まれた子供に対して、親世代と同等の行動実験を行い、一定の結果を得ている。また、脳内のメチル化再編成に対して、治療可能性を探るために、高速液体クロマトグラフィーHPLCによる微量物質測定を行っており、恐怖や不安に関係するモノアミン類の計測を行った。さらに、メチル化再編がされた後に成体となった個体に対してメタボローム解析を行い、代謝物質の網羅的な変化を把握し得た。
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Strategy for Future Research Activity |
①次世代への影響を引き続き解析する。オスの親世代のみでなく、メスの親世代のメチル化再編が影響するか、②HPLCの結果から既存の薬剤による治療可能性、③メタボローム解析の結果からバイオマーカーの候補を選択する。
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Causes of Carryover |
マウス使用数を想定より少なくし、使用額を抑えたこと、類似の研究費の獲得により、そちらの出費で実験試薬や旅費を賄うことができたことなどが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、マウスの利用、特殊な餌の購入、各種行動実験機械の制作、論文の校正、投稿、学会旅費など当初の想定どおりに利用を進める予定である。
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Research Products
(4 results)