2016 Fiscal Year Research-status Report
脳DNAメチル化再編の次世代への継承と生化学的環境変化
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26461711
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松澤 大輔 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (10447302)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / エピジェネティクス / 恐怖条件付け / 次世代 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内DNAメチル化の変化が発達期に与える可能性を、マウスを用いて検証してきた。出生後のメチル化変化を制限するために、メチル化反応に使われるメチルドナーを欠乏させた食事をマウス生後3-6週に与えて(メチルドナー欠乏群、以下FMCD群)、発達期=小児期にDNAメチル化が制限されるモデルとした。このメチルドナー欠乏群はメチルドナー制限後(6週齢)でも、発達後の12週齢期においても、海馬におけるメチル化や記憶に関連した遺伝子群(Dnmt3やAMPA受容体遺伝子)のメチル化を変化させ、恐怖や不安反応に違いをもたらした(Ishii et al.,2013,Tomizawa et al.,2015)。本研究では、そのように発達期に脳内メチル化の変化を受けたオス個体を親(F0)とする子ども世代のオス(F1)が行動的に変化をきたすかどうかを分子レベルの背景の変化ともに検証した。結果として、F0世代に不安様行動の減少、恐怖反応消去の遅延と再発、海馬におけるカルモジュリン2キナーゼα(CaMK2α)の発現低下が見られたが、F1ではF0世代とは異なる行動と遺伝子発現結果であった。F1世代では不安の増大、恐怖消去の促進、一方でCaMK2αの発現上昇が見られた。このことから、発達期のメチルドナー欠乏は次世代にストレス応答性や恐怖に対する脆弱性に影響を及ぼす可能性が示唆された。この結果は第23回日本時間生物学会にて発表した。また、F0世代、FMCD群とコントロール群の6週オスマウスの海馬をサンプルに、代謝物質濃度を包括的に求める、メタボローム解析を行っており、次年度に解析予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年5-7月において、使用するマウスの研究に使う第2世代の子どもを十分な数得ることが想定外に遅れた点、その後平成28年8月以来、リアルタイムPCRによる発現遺伝子絞込みに際して、当初想定とは別な遺伝子変化もあったため、解析を追加するために遅延した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)H28年度の研究において示した遺伝子変化を受けて、CaMK2αの下流に位置するタンパク質の遺伝子発現について、尚代表的なものの解析を追加する。 2)バイオマーカー検索として施行したメタボロームの解析を追加する。これはFMCDマウス群の海馬における代謝物変化を探るもので、本解析により変化が認められる代謝物質があれば、その代謝に関連したタンパク質の遺伝子発現解析を追加する。 3)以上の成果をまとめ、学会発表および論文発表を行う。
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Causes of Carryover |
平成28年5-7月において、使用するマウスの研究に使う第2世代の子どもを十分な数得ることが想定外に遅れた点、その後平成28年8月以来、リアルタイムPCRによる発現遺伝子絞込みに際して、当初想定とは別な遺伝子変化もあったため、解析を追加するために遅延したことにより、進捗が遅れたことが次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、マウスの利用、特殊な餌の購入、各種実験機械の維持、試薬購入といった物品購入、及び論文校正、投稿、学会旅費などに利用予定である。
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Research Products
(2 results)