2014 Fiscal Year Research-status Report
神経接着因子NrCAMが形成する依存脳の神経ネットワークと依存表現型の解明
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26461716
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
石黒 浩毅 山梨大学, 総合研究部, 講師 (20375489)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経細胞接着因子 / 依存 / グルタミン酸 / GABA / マイクロアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は物質依存のGWASにて同定した依存関連分子である神経接着因子NrCAMに着目したものであり、この神経接着因子が制御する依存形成における脳神経分子メカニズムを網羅的に解明することを目的としている。神経接着因子の中枢神経系での役割は重要であり、脳の発達・成熟や薬物依存形成において、神経ネットワークの構築に働く。神経接着因子が依存脳を形成するにあたり、様々な神経系のリモデリングがある。研究代表者は依存の発症前後に認められる多彩な臨床的表現型を説明するいくつかの分子を明らかにしたが、依存に関わるさらに多くの個々の分子とそれら複数の分子の相互作用を網羅的に明らかにすることが目的として研究を進めた。 Nrcamノックアウトマウスに覚せい剤などの依存性物質を投与して脳を摘出し、マイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析を行った。依存性物質に影響を受けた脳と生理食塩水を投与された脳をそれぞれNrcamの野生型とヘテロ接合型間にて比較した結果、その発現が1.5倍以上であり、有意な差を以て変化する遺伝子が複数検出された。検出された遺伝子の中で機能について自他の既知のデータから考察を行い、依存により大きな役割を果たすと考えられる分子群(現時点ではグルタミン酸系、GABA系、およびモノアミン系)に着目したところ22遺伝子が抽出された。さらにこの中で2つの遺伝子については依存形成との関連が知られており、依存症の性格行動特徴への影響を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年中の研究計画は概ね予定通り遂行されており、予定の解析試料の過半数は作成と解析が終了した。しかし予定とする残りの解析試料について、モデル動物の飼育・実験施設である山梨大学動物資源センターが感染症発症のため7か月間の閉鎖となったため幾分の解析計画の遅れが生じたものである。 しかし、動物資源センターの消毒が終了し、5月末に再開されるため、既存の試料と合わせ計画通りに試料が作成され、その後の解析遂行が可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果と他の依存性物質について同様のアレイ解析を行う結果を統合し依存関連分子を網羅的に明らかにする。幾つかの同定した分子については、2つの解析をさらに進める。1つ目は該当する遺伝子に機能に変化を持つ遺伝子多型を持つ場合に、アルコール依存症との関連を解析し、依存症易罹患性のバイオマーカーの樹立に寄与する。2つ目は当該遺伝子が働く依存関連性格行動特性についてモデル動物を用いて薬理行動学的に明らかにする。 以上の解析から、バイオマーカーによる予防医学と新規治療薬の開発への寄与を図り、同時に生物学的手法による依存症患者の精神病理学的治療法の裏付けと発展を目指すものである。
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Causes of Carryover |
平成26年11月頃より本研究が遂行される山梨大学動物資源センターに感染症トラブルが発生し、解析室等が閉鎖になったため一部の実験が保留となった。間もなく平成27年5月末頃に再開されることになるが、そのために前年度に計上した予算の一部が本年度にて用いる必要が生じたものです。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
再開されるモデル動物の実験動物の飼育管理費、薬剤投与実験における薬品と注射器や紙類、遺伝子発現解析試薬類などの物品費に充てる。
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