2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26461718
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
菱本 明豊 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50529526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽良 一郎 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40322713)
泉 剛 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60312360)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自殺の生物学 / ゲノムワイド関連研究 / 神経前駆細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は本研究の予備的研究として、自殺既遂者500例と健常者サンプル8000例のGWASを施行し、PTCHD3遺伝子および隣接するRAB18遺伝子関連のSNP がp value = 1×10-7~-5のクラスターを形成することを見出した。今年度までに、保有する自殺既遂者DNAが800サンプルに達したため、上述のクラスターを形成するSNPについてTaqmanプローブ法によるvalidation解析を行った。対照の健常者サンプルはGWASとは別の新規サンプル約800例を用いた。結果、自殺既遂者サンプルを増やしたvalidation解析においても、ほとんどのSNPについて有意な相関を認めた(p<0.05)rs7342136(PTCHD3)とrs10764698(RAB18)のハプロタイプ解析において、Global p value = 1.2×10-19と非常に強い相関を認めた。 今年度の動物実験は、2週齢のC57BL/6マウスの脳組織におけるPTCHD3とRAB18の発現分布をISH法により確認した。PTCHD3は全体的に発現が弱いものの、視床や視床下部、中脳、橋、延髄に比較的強い発現を認めた。RAB18は脳組織全体に豊富な発現を認めた。拘束ストレスを用いたうつ病モデルラットの扁桃体においてRAB18発現の有意な減少を認めた。前年度には同ラットの前頭葉・海馬においてPTCHD3発現の有意な増加を認めたことから、我々は自殺の生物学的機序として、中枢神経系でのPTCHD3増加とRAB18減少が関与している可能性があると考えた。 前年度より確立した新生仔マウス海馬由来神経前駆細胞の初代培養系において、強制発現ベクターを用いたPTCHD3の過剰発現と、RNAi法によるRAB18遺伝子発現ノックダウンの処置を実施し、増殖・分化・生存といった細胞表現型に来す変化を解析しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① 予備的研究のGWASで同定した自殺感受性遺伝子候補の関連SNPについて、海外にも類を見ない規模の800例という自殺既遂者DNAを用いてvalidation解析を遂行し、有意な相関を再現することができた。 ② 多型解析の結果をもとにPTCHD3とRAB18という2つの遺伝子に着目し、うつ病モデルラットの中枢神経系において、上記2つの遺伝子発現の変化を確認することができた。 ③ モデル動物の中枢神経系での遺伝子発現変化の結果をもとに、今年度までに当研究室において確立した新生仔マウス海馬由来神経前駆細胞の初代培養系を用いて、PTCHD3の過剰発現とRAB18発現減少が中枢神経系に与える影響を解析することを最終年度の目標としている。それにあたってのPTCHD3強制発現ベクターの作成は完了しており、RNAi法によるRAB18遺伝子発現ノックダウンが神経前駆細胞初代培養系において可能なことを既に確認済である。また増殖・分化・生存といった一連の細胞表現型解析の予備実験がほぼ終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、H26~H27年度の分子遺伝学的解析およびモデル動物の中枢神経系における発現解析により、自殺の生物学的機序として、中枢神経系でのPTCHD3増加とRAB18減少が関与している可能性があると考えている。 最終年度は、当研究室にて確立した新生仔マウス海馬由来神経前駆細胞の初代培養系において、強制発現ベクターを用いたPTCHD3の過剰発現と、RNAi法によるRAB18遺伝子発現ノックダウンの処置を神経前駆細胞に実施し、増殖・分化・生存といった細胞表現型に来す変化を解析することを目標とする。増殖については、FACSを用いたBrdUアッセイで評価する。分化については、Tuj1など各細胞腫特異的なマーカーを用いた免疫染色により評価する。特にニューロンにおいては、樹状突起・スパイン密度の計測および各種プレシナプス・ポストシナプスマーカーの免疫染色により詳細な解析を行う予定である。生存(抗アポトーシス)については、FACSを用いたTUNEL法で評価する。 自殺既遂者サンプルは非常に稀少なこともあり、生物学的機序の解明は大幅に遅れている。我々は今回、海外にも類を見ない規模の自殺既遂者サンプルの多型解析によりPTCHD3とRAB18というまったく新規の自殺感受性遺伝子候補を見出すことに成功した。これらの遺伝子についての動物モデルや中枢神経系細胞での機能解析は現時点ではほとんど報告がないため、本研究を遂行できれば、自殺の生物学的解明に大きく貢献できるはずである。
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[Journal Article] Rare truncating variations and risk of schizophrenia: Whole-exome sequencing in three families with affected siblings and a three-stage follow-up study in a Japanese population.2016
Author(s)
Watanabe Y, Nunokawa A, Shibuya M, Ikeda M, Hishimoto A, Kondo K, Egawa J, Kaneko N, Muratake T, Saito T, Okazaki S, Shimasaki A, Igeta H, Inoue E, Hoya S, Sugai T, Sora I, Iwata N, Someya T.
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Journal Title
Psychiatry Res.
Volume: 235
Pages: 13-18
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Association analysis of the HLA-DRB1*01 and HLA-DRB1*04 with schizophrenia by tag SNP genotyping in the Japanese population.2015
Author(s)
Ratta-apha W, Boku S, Mouri K, Okazaki S, Otsuka I, Watanabe Y, Nunokawa A, Someya T, Shirakawa O, Sora I, Hishimoto A.
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Journal Title
Psychiatry Res.
Volume: 229
Pages: 627-628
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Assessment of copy number variations in the brain genome of schizophrenia patients.2015
Author(s)
Sakai M, Watanabe Y, Someya T, Araki K, Shibuya M, Niizato K, Oshima K, Kunii Y, Yabe H, Matsumoto J, Wada A, Hino M, Hashimoto T, Hishimoto A, Kitamura N, Iritani S, Shirakawa O, Maeda K, Miyashita A, Niwa S, Takahashi H, Kakita A, Kuwano R, Nawa H.
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Journal Title
Mol Cytogenet.
Volume: 8
Pages: 46
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Association analysis of the Cadherin13 gene with schizophrenia in the Japanese population.2015
Author(s)
Otsuka I, Watanabe Y, Hishimoto A, Boku S, Mouri K, Shiroiwa K, Okazaki S, Nunokawa A, Shirakawa O, Someya T, Sora I.
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Journal Title
Neuropsychiatr Dis Treat.
Volume: 11
Pages: 1381-1393
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant