2014 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症の社会機能回復-細胞とオキシトシンを用いた“共感性/気遣い”の脳解析
Project/Area Number |
26461724
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
鵜飼 渉 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40381256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 恵理 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30301401)
石井 貴男 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40404701)
木川 昌康 札幌医科大学, 医学部, 助教 (50581146)
相馬 仁 札幌医科大学, 医療人育成センター, 教授 (70226702)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 統合失調症 / オキシトシン / 細胞治療 / 再生医療 / 社会性機能 / バソプレッシン / 幹細胞療法 / 共感・気遣い |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,統合失調症治療の上で重要な課題である,職業的・社会的機能回復の問題について,聴くこと・語ることの訓練を介して生じる脳機能変化(言語・聴覚関連脳領域の修復・再生~他者への共感・気遣いの機能の増強)を明らかとし,その効果をより高める新たな治療手段としての,薬物・幹細胞併用療法の有用性を検討,開発を進めることである。初年度は,(1) 種々の由来の幹細胞の投与が,モデル動物の脳内にどのような形で生着し,神経回路修復に影響を及ぼすかを検討する目的で,投与細胞の標識法の改良と,複数の投与手段での解析法の確立を図った。具体的には,細胞標識法について,これまで行ってきた(CFSE)色素標識法に加え,投与細胞のより明瞭な脳内(分化)動態を調べるためにGFP遺伝子導入(Electroporation法を用いた)の検討を進め,胎児脳由来神経幹細胞,成体骨髄間葉系幹細胞,およびiPS細胞で,それぞれ明瞭な標識結果を得た。また,投与方法について,これまで主に行ってきた経静脈的投与に加え,脳室内投与,胎児期頭蓋内投与の検討を行い,いずれも良好な結果(投与1か月後の脳内での生存・生着)を得た。さらに,(2) 社会性機能に関わる行動異常とその改善効果を解析する目的で,ソーシャルインターラクション試験を用いた行動薬理学的評価法を行ってきたが,これをラット,およびマウスの両方で実施できるようにするとともに,GABA系インターニューロンの新生増加が社会機能回復に及ぼす影響を脳神経学的に解析する一手段として,モデル動物の脳波学的解析の検討を進め,ソーシャルインターラクション試験において,対象動物が初めての相手に出会った際に,γ-band powerが変化することを記録できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,統合失調症の治療において重要な役割を担っている集団認知行動療法・SSTが,言語・聴覚に関連する脳領域の神経修復・再生促進効果をもたらし,それが,視床下部を含むオキシトシン・バソプレッシン系の活性化を介した(他者への共感・気遣いを主体とした)社会性機能の強化につながっていることを,脳神経回路変化のレベルで明らかとするものです。加えて,その効果をより高めるための新たな治療手段として,オキシトシン・幹細胞投与の併用療法の開発を目指している。具体的には,(1) オキシトシン・バソプレッシン神経系の変化について,オキシトシン,バソプレッシン,CD38の血中濃度変化,および,(それらのペプチドプールが報告されている)血小板中濃度変化を解析する。また,神経新生機能変化に関連して,BDNFおよび(GABA系interneuron産生との関連が報告されている)NG2蛋白の血中・血小板中濃度変化を解析します。また,(2) オキシトシン・バソプレッシン神経系の変化について,種々の脳領域におけるオキシトシン・バソプレッシンと,それらの受容体の発現変化を解析します。加えて,(3) オキシトシン・バソプレッシン神経系活性化に深く関わる行動学的変化として,モデル動物においては,複数飼育・オキシトシン・幹細胞投与処置群で,♂♀社会相互作用試験,養育行動評価試験による比較解析を行います。初年度は,正常動物,およびモデル動物において,種々の投与法による投与細胞の脳内生着と,その観察,および社会性行動と,それに関わる脳機能として,脳波学的解析の準備を進めました。しかしながら,本研究では,社会性行動の回復のメカニズム解析として,実際にオキシトシンを用いる段階には至らず,達成度は100%にはならなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,まず,複数飼育・オキシトシン投与・幹細胞投与による社会性機能変化の機序として,脳内のオキシトシン系発達変化との関連が推察される分子群 (オキシトシン,バソプレッシン,CD38),ならびに言語・聴覚機能関連領域の神経再生・修復との関連が推察され,我々がこれまでに細胞投与によって変化する可能性を示してきた分子群 (BDNF,NG2) の抹消血中濃度変化について,ELISA法で測定し,比較解析を行う。また,これまでの研究で我々は,抗うつ薬の処置が,血小板にプールされたBDNFの血中放出を促進させ,血中BDNF濃度を増加させる作用を持つこと,また,血小板からのBDNF放出機能はうつ病ラットでは著しく低下していることを示してきたこと,および,近年の研究で,血小板はオキシトシンを含むホルモンの貯蔵庫にもなっていることが分かってきたことから,血小板からのオキシトシン,およびバソプレッシンの放出機能と,オキシトシン/バソプレッシン受容体発現変化のプロテオミクス解析を実施する。尚,血小板に発現する各受容体分子蛋白の定量化がうまく進まない場合には,連携研究者で,精神疾患発症に関与する分子解析研究に携わってきた岩本和也(東京大学医学部付属病院 特任准教授)の協力による遺伝子発現レベルでの解析に切り替えて行う。
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Causes of Carryover |
3月末の学会参加の経費として見積もっていたところ,若干見積もり額が増えたことで,年度内の使用額を超えてしまったため翌年での使用とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会参加費として計上します。
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