2014 Fiscal Year Research-status Report
脳脊髄液中のマイクロRNAを用いた精神疾患バイオマーカーの開発
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26461731
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
服部 功太郎 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所疾病三部, 室長 (50415569)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マイクロRNA / バイオマーカー / 精神疾患 / 脳脊髄液 / リアルタイムPCR / 特許 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、統合失調症、うつ病など精神疾患の脳脊髄液(CSF)中miRNAマーカーを開発することが目的である。候補分子(申請時39分子)は既にマイクロアレイの解析で得られており、その検証のため、本年度はまず、定量PCRによるmiRNA測定系の構築を行うことを目標にしていた。結論としては、リアルタイムPCRを用いた場合、miRNAの検出自体は多くの分子で可能であるが、候補マーカーの検証に必要な定量性を確保することが困難であることが判明した。CSFからのRNA抽出はマイクロアレイと同じ方法(Qiagen社のキット)で行い、当研究部の保有するリアルタイムPCR解析装置(Applied Biosystems社)にて、内在性コントロール(RNU44, 28)や比較的高発現が見込まれる候補(mir-24)、低発現が見込まれる候補(mir-4513)を中心に、TaqMan microRNA assay(Applied Biosystems社)にて解析を行った。通常のプロトコールでは比較的高発現と見込まれるRNU44やmir-24であってもCT値35以上であった。mRNAの測定ではCT値25-30以下でないと、必要な定量性(CV 20%以下)は確保できないことが分かったため、逆転写反応やPCR反応系の改善などを中心に測定を行ったが、高発現分子でもCT値32を割ることはできなかった。 申請時点でマーカー候補分子として39個のmiRNAを選択していたが、特許を出願するため、更に詳細な統計的解析を行った。具体的には、平均値の差、正常値からの逸脱症例数、症状との相関などを再選択、グラフを作成して確認を行い、最終的に統合失調症45分子、うつ病97分子を含む合計193分子を選択し、特許を申請した(「miRNAを用した精神疾患判定マーカー」、特願2015-008710)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度中にCSF中miRNAのリアルタイムPCRによる定量系を確立するという目標は果たすことができなかった。CSF中のmiRNAの量が非常に低いことが、その原因であった。マイクロアレイでは十分に検出できていたため、より高感度と思われていたリアルタイムPCRで、十分な測定ができなかったことは予想外であった。後述するように、その対応としてデジタルPCRを利用できることが判明したため、導入されるまで、本研究で他にやるべきことに注力した。すなわち、既存のデータの再解析をおこない、有望なマーカー候補を、より多く得て特許の出願を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
最近、当研究所の共通機器としてデジタルPCR(Lifetechnology社QuantStudio 3D)が導入された。デジタルPCRは、核酸の検出および定量における新しいアプローチで、リアルタイムPCRを含む従来の技術で検出が困難であった低濃度の分子の検出を可能にすると言われている。数コピー単位の検出が可能、標準サンプルとの比較を必要としない、直接的な絶対定量を行うことができる等の特徴を持ち、前年度の課題であった低濃度miRNAの定量にまさに適していると考えられる。H27.5月に説明会が行われるが、我々が積極的に使用する許可を関係者より得ている。
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Causes of Carryover |
研究実績の概要で述べたように、リアルタイムPCRを用いた測定系では、本研究の目的(脳脊髄液中miRNAマーカーの開発)に必要な要件を満たさないことが判明した。そのため、大規模検体解析用の試薬の購入を行わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はデジタルPCRを用いた解析を行う予定である。デジタルPCRで測定可能であることが判明したら、必要試薬を購入する。また本研究のための実験補助員の給与・謝金にも利用する。
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