2015 Fiscal Year Research-status Report
蓄積蛋白質の構造異常による認知症の分子病理診断法およびモデル動物の開発
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26461733
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
新井 哲明 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90291145)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 認知症 / 蛋白質 / 病理 / 変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
大部分の認知症性疾患においては、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43などの蛋白質が細胞内に凝集蓄積する。蓄積蛋白にはリン酸化および断片化が生じている。本研究の目的は、各々の疾患に本質的な蛋白質の異常分子種を明らかにし、蓄積蛋白の生化学的特徴に基づいた分子病理診断法を確立するとともに、ヒト疾患の病態に近いモデル動物を作成することである。今年度の目標は、分子診断法の確立のために、各タウオパチーにおける疾患の本質を示す異常タウ分子種を明らかにすることとした。アルツハイマー病(10例)、ピック病(5例)、進行性核上性麻痺(9例)、皮質基底核変性症(8例)の患者剖検脳から抽出したサルコシル不溶性タウをトリプシンで処理後、免疫ブロットにて解析したところ、トリプシン耐性タウのバンドパターンは、疾患ごとに異なったパターンを示したことから、不溶性タウ線維のコアの構造が疾患によって異なることが示唆された。トリプシンによる切断部位が疾患によって異なることは、質量分析により証明された。これらの結果は、タウオパチーにおいて、プリオン病と同様に、プロテアーゼ耐性タウの生化学解析によって分子病理診断が可能であることを示唆するとともに、疾患特異的なタウ線維の形成機序を明らかにすることがタウオパチーの病態解明につながると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標での一つである剖検脳を用いた病理生化学解析では、プロテアーゼ耐性タウの解析により、異常タウの構造の特異性が疾患特異的な病理像形成と関連することを明らかにし、タウオパチーとプリオン病と病態の類似性について解明した点で意義深い。さらに、昨年度GRN遺伝子をノックアウトした遺伝子改変マウス脳の病理生化学解析により、タウのリン酸化亢進を明らかにしたが、その結果に基づいたGRN変異を有するヒト剖検脳の解析に着手し、従来指摘されていたTDP-43だけでなくリン酸化タウの蓄積が生じていることを明らかにしつつある。以上から、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
疾患患者剖検脳および遺伝子改変マウス脳の病理生化学的解析を継続して行う。さらに、異常蛋白の細胞間伝播による病理進展機序の解明およびモデル動物作成を試みる。
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Causes of Carryover |
次年度に疾患患者剖検脳および遺伝子改変マウス脳の病理生化学的解析をさらに行うこととしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越した費用を使用して、疾患患者剖検脳および遺伝子改変マウス脳の病理生化学的解析により、認知症性疾患の臨床病型および病理構造と蓄積蛋白の生化学的特長との対応を明らかにする。
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[Journal Article] Biochemical classification of tauopathies by immunoblot, protein sequence and mass spectrometric analyses of sarkosyl-insoluble and trypsin-resistant tau.2016
Author(s)
Taniguchi-Watanabe S, Arai T, Kametani F, Nonaka T, Masuda-Suzukake M, Tarutani A, Murayama S, Saito Y, Arima K, Yoshida M, Akiyama H, Robinson A, Mann DM, Iwatsubo T, Hasegawa M.
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Journal Title
Acta Neuropathol.
Volume: 131(2)
Pages: 267-280
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Inositol hexakisphosphate kinase 2 promotes cell death in cells with cytoplasmic TDP-43 aggregation.2015
Author(s)
Nagata E, Nonaka T, Moriya Y, Fujii N, Okada Y, Tsukamoto H, Itoh J, Okada C, Satoh T, Arai T, Hasegawa M, Takizawa S
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Journal Title
Mol Neurobiol.
Volume: 0
Pages: 0
Peer Reviewed
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[Journal Article] An autopsied case of corticobasal degeneration showing severe cerebral atrophy over a protracted disease course of 16 years.2015
Author(s)
Kondo D, Hino H, Shibuya K, Fujisawa K, Kosaka K, Hirayasu Y, Yamamoto R, Kasanuki K, Minegishi M, Sato K, Hosokawa M, Arai T, Arai H, Iseki E
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Journal Title
Neuropathology.
Volume: 35
Pages: 280-288
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] PSPとCBPの生化学2015
Author(s)
新井哲明
Organizer
第34回日本認知症学会学術集会
Place of Presentation
青森(リンクステーションホール青森・ホテル青森)
Year and Date
2015-10-02 – 2015-10-04
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[Presentation] 肝性脳症にうつ病を併発した1例2015
Author(s)
山本駿, 塚田恵鯉子, 野尻美流, 福田邦明, 新井哲明
Organizer
第104回東京精神医学会学術集会
Place of Presentation
東京(東京大学医学部附属病院 入院棟A 15階 大会議室)
Year and Date
2015-07-04 – 2015-07-04
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[Presentation] BPSDを理由に精神科に入院した認知症患者の治療および転帰の実態2015
Author(s)
新井哲明, 池田学, 烏帽子田彰, 北村立, 松岡照之, 安野史彦, 横田修, 安部秀三, 栗田裕文, 畑中公孝, 田中芳郎, 大川恵子, 池嶋千秋, 太刀川弘和, 朝田隆
Organizer
第30回日本老年精神医学会,
Place of Presentation
横浜(パシフィコ横浜)
Year and Date
2015-06-13 – 2015-06-13
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[Presentation] うつ病における音声バイオマーカーの検討2015
Author(s)
田口高也, 太刀川弘和, 根本清貴, 鈴木雅之, 長野徹, 立花隆輝, 西村雅史, 新井哲明, 朝田隆
Organizer
第111回日本精神神経学会学術総会
Place of Presentation
大阪(大阪国際会議場・リーガロイヤルホテル大阪)
Year and Date
2015-06-06 – 2015-06-06
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[Presentation] 非定型タウオパチーの二剖検例2015
Author(s)
河上緒, 新井哲明, 池田研二, 大島健一, 新里和弘, 細川雅人, 長谷川成人, 秋山治彦
Organizer
第56回日本神経病理学会総会学術研究会
Place of Presentation
福岡(九州大学医学部百年講堂)
Year and Date
2015-06-05 – 2015-06-05
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