2014 Fiscal Year Research-status Report
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26461748
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡本 泰昌 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 准教授 (70314763)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 認知行動療法 / うつ病 / fMRI / サイバーボール課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
健常者を対象とした“こころの痛み制御課題”の作成および妥当性の検証 Onoda et al.(2009)で用いたこころの痛み制御課題を改変した。統制条件では「ボタンの動作確認をしたいので、画面に表示されているキャッチボールを見て、ボールを受取った人の側のボタンを押してください。」と教示し、自然に画像に注意を向けるように求める。次ぎに、受容条件ではカバーストーリー上のITでつながる別の被験者(実際にはプログラム)とのキャッチボールを行い、均等に参加(おおよそ3/10スロー)できるが、排斥条件からはボールは回ってこずキャッチボールに参加できず社会的な排斥を受ける。支持条件では参加者は支持的な言葉を研究者(他者)より与えられることにより情動制御を行う。各条件終了後に“こころの痛み”の強さを評定する。Presentation Ver7.3を用いて、刺激と課題作成を行なう。各条件では、1ブロック(計25s)としてそれぞれ5ブロックずつ行い、課題遂行中の脳活動をfMRIで測定した。 被験者46名は全員右利き,うち29名が女性(平均年齢19.6歳),17名が男性(平均年齢20.2歳)であった。主観的な社会的苦痛は排斥条件で受容条件およびサポート条件より有意に高かった。排斥により眼窩前頭皮質,腹側帯状回,島皮質,中心後回の活動が増加し,情動的サポートにより両側側頭極,上側頭溝,側頭頭頂接合部,腹側から外側の前頭前野,楔前部が賦活した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨今、精神科臨床では、認知行動療法(CBT)に大きな関心が集まってきている。心理学的視点から作用機序の説明を試みた研究は多いが、神経科学的機序は解明されていない。脳内のどのような機序を介してCBTが効果発現に至るかを解明することは、医学的な治療としてCBTを臨床に用いる際に必要不可欠と考えられる。本研究は、CBTによって強化された情動制御方略がどのような脳部位を介して“こころの痛み”に関連する情動処理を変えるかを明らかにすることを目的とする。3年間の研究計画において、初年度は健常者を対象とした“こころの痛み制御課題”の作成および妥当性の検証を目的としており、実績の概要で述べたように、課題を作成し妥当な本課題に対して予想された脳活動が得られたことより、概ね順調に進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
認知行動療法(CBT)によるうつ病の情動制御機構の変化に関する脳機能解析 アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-IV)において大うつ病性障害の診断基準を満たす症例30例、および年齢、性別、利き手をマッチングさせた健常対照者(謝金)30例を対象とし、すでにわれわれがBeck et al.(1979)に基づいて作成し有効性が確認されたCBTプログラム(1回2時間、計12週間)を行い(業績18)、第三者的に観察することを訓練する。昨年度確立した方法を用いて、うつ病症例においては、認知行動療法プログラムの前後でこころの痛み制御課題遂行中の脳機能測定を2回行い、健常対照者に関しては3ヶ月の期間を空けて2回の測定を行う。 健常対照 vs うつ病の比較;健常対照者と比べてうつ病患者では認知的情動制御に関連する前頭前野の活動が低下しており、腹側前帯状回によるこころの痛みの制御が行えず、より大きな情動反応を生じるかを検証する。 うつ病 CBT前 vs CBT後の比較;CBTが認知的再評価に関わる脳機能の活動を促進するか、さらに、CBTによって促進された認知的再評価に関わる脳活動が、こころの痛みに関わる腹側前帯状回などの活動を抑制して情動反応を減少するかを検証する。
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Causes of Carryover |
ボランティアスタッフの協力により、当初予定した人件費が不要となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し分(102,300円)については、概ね順調に研究計画が進んでおり、測定サンプル数を増やすため、その他(機器レンタル料)の支出に充当する。
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