2016 Fiscal Year Research-status Report
定量的MRI解析、MRSを用いた児童思春期の強迫性障害、発達障害の脳機能研究
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26461762
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中川 彰子 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任教授 (70253424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富安 もよこ 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任助教 (10443079)
吉浦 敬 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (40322747)
平野 好幸 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任准教授 (50386843)
浅野 憲一 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任助教 (60583432)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 強迫性障害 / 自閉症スペクトラム障害 / 認知行動療法 / MRI / MRS |
Outline of Annual Research Achievements |
強迫性障害(OCD)は、慢性化重症化し、生活を障害する難治な疾患であるが、近年認知行動療法(CBT)の効果が実証されている。一方、難治なOCD症例では、自閉症スペクトラム障害(ASD)の併存が報告されており、当センターでも併存例が増加している印象がある。 本研究は、児童思春期のOCDの患者を対象に、CBTの前後での脳の形態画像、脳内代謝物の変化を調べ、さらにASDの有無による差異を定型発達児を対照群として検討することにより、OCD、ASD両障害の病態生理の解明とそれにもとずく治療指針に役立てることを目的とする。 現在までの研究参加希望者は40名であったが、選択基準に該当する症例は22名であった。治療前のMRI画像を18名から、そのうち治療後のMRI画像を4名から取得したが、サンプル数が少ないため画像の解析はまだ行えていない。 治療前後のCY-BOCS(Children Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scale)が得られた14名(男7名、女7名)の平均年齢は14.07(±2.06)歳、治療前は26.82(±8.35)、治療後は16.57(±9.79)であり、t=5.68、df=13、p<0.01、r=0.85と有意に減少していた。このうちASD非併存例7名の治療前後のCY-BOCSは、25.43(±9.48)から12.71(±8.81)と有意水準1%で有意に減少した(t=5.33、df=6、p<0.01、r=0.91)。ASD併存例7名は28.29(±6.42)から20.43(±9.07)と有意に減少したが、非併存例の変化には及ばなかった(t=3.07、df=6、p=0.02、r=0.78)。これらの結果より、認知行動療法は、ASD診断の有無に関わらず、今後脳画像を用いて病態生理の検討を行うのに十分な治療効果をもたらしたことを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
児童思春期のOCDの特徴として、自我違和感が少なく、患児が症状による苦悩を感じにくいこと、あるいは、強迫症状自体を恥ずかしいこととして、隠したがる傾向を見せる患児もあり、相談につながる割合が少ない。一方、症状に対する自我違和感、不合理感があり、症状に苦しんでいても、当センターは平日のみの診療であるため、通学などを優先せざるを得ないために、定期的に治療を行うことを選択できないケースもみられた。このような状況が、治療参加希望者が予想以上に増えなかった原因と考えられる。一方、医療機関から紹介される患者が除外基準を満たさない場合も半数近くみられ、対象患者数が伸び悩んだ要因であった。 さらに、治療後の脳画像撮像を半年から1年後のフォローアップの間に設定しているため、治療前後の脳画像解析までに要する期間が長いことも全体のデータの蓄積が進まないことにつながっていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
対象患者数増加の方策として、ホームページに改良を加え、治療内容などを丁寧に説明し、治療効果のあることをアピールする内容とし、さらに、紹介機関に対し、除外基準などを明示し、エントリーできる患児の割合を大幅に増やすことを目指す。
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Causes of Carryover |
研究参加希望者が当初の予定よりかなり少なく、アセスメント受診で除外基準に当てはまってしまう患者が予想以上に多く、研究対象者のリクルートが見込みよりも大幅に遅れ、また、治療後のMRI撮像が治療終了後半年から1年の間に設定しており、その結果、治療前後のデータが集まるのにかなりの時間を要することにも影響を受けているため、謝金や検査を施行するための人件費などの使用額が低いことがあげあられる。 そのため、当初予定した国際学会への発表予定者の見送りなども重なって、旅費の使用額も減少しているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は、研究対象者のリクルートのための広告料、研究対象者への謝金、研究成果発表のための国際学会への旅費、画像解析専用のPC及び周辺機器の購入などを予定している。
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Research Products
(4 results)