2014 Fiscal Year Research-status Report
脳損傷後に生じる社会的行動障害の多面的・縦断的研究-構造・機能画像を用いて-
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26461766
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 敬太 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60573079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉原 玄一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70402261)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高次脳機能障害 / 神経心理学 / 脳損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、MRI装置自体を更新する必要があったため、新規の撮像は大幅に遅れた。そのため、既存のデータの解析を優先した。 まず、既にMRI撮像と神経心理検査を終了したびまん性軸索損傷例10名、および性別・年齢を統制した健常被験者12例について、Voxel Based Morphometry法を利用し、灰白質・白質の体積低下部位を検出した。白質では脳梁に顕著な体積減少を認め、その部位については、Diffusion Tensor Imaging法を利用してFractional Anisotropy (FA)値を算出した。びまん性軸索損傷症例では、Wechsler Adult Intelligence Scale-IIIにおけるProcessing Speedの成績が健常者と比較し2SD以上の低下を認めたため、その値と脳梁体積とFA値の相関を確認すると、それぞれ相関係数0.82 (p=0.004), 0.846 (p=0.002)となり、脳梁の損傷が処理速度に強く影響していることが示唆された。 一方で、二次性ナルコレプシーをきたしたびまん性軸索損傷の一例については、ケーススタディを行った。性別・年齢をマッチさせた12例の健常者との比較では、従来ナルコレプシーの原因とされてきた視床下部の体積低下、左扁桃体、脳梁体積の低下をそれぞれ、Zスコア換算で2.56 (p=0.005), 2.70 (p=0.003), 2.21 (p=0.013)認め、一方で右の扁桃体には体積の有意差は認めなかった。また全灰白質・白質体積には有意な差が無かったことから、ナルコレプシーが脳全体の体積からすると非常に小さいこれらの領域の損傷が原因として生じていることが推測された。この結果については、既に学術雑誌に投稿し、受理されている (J Clin Sleep Med. 2015 Feb 10.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
既存の3TMRI装置が損傷し、MRI装置自体を交換する必要があったため、新たな撮像が大幅に遅延した。新しいMRI装置での撮像開始にあたり、アーチファクトの軽減など様々な細かい調整を必要とし、そのため、新しい被験者への撮像開始を遅らせざるを得なかった。そのため、これまで撮像していたデータを単独で解析することとし、その解析を優先した結果、報告に値するいくつかの結果を得ることができたため、その意味では大きな遅れにはなっていないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在新しいMRI装置が順調に稼働しており、脳損傷症例の紹介なども順調に集まっており、当初の予定通りに進行することが可能であると考えている。
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