2014 Fiscal Year Research-status Report
病院内の自殺事故の実態調査および病院管理者と医療者に対する自殺予防教育
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26461771
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
河西 千秋 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50315769)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 耕太郎 岩手医科大学, 医学部, 講師 (00337156)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自殺予防 / 医療安全 / メンタルヘルス / 教育 / 悲嘆ケア / 多職種チーム |
Outline of Annual Research Achievements |
1.日本医療機能評価機構と協力し、主として、医療安全管理者と心理臨床従事者(医師、看護師を含む)を対象とした自殺事故予防のための研修プログラムを計3回実施した。プログラムの内容は、①自殺と自殺企図者の本質の理解、②患者安全、および自殺の1次―3次予防の原則に立脚した病院内の自殺予防対策の必要性と、その病院管理業務への導入、③自殺予防対策を含む病院の安全管理システムの構築であった。研修参加者は、計103名で、このうち病院管理職者は、計36名で、内訳は、病院管理者0名、医師管理職5名、看護管理職26名、その他の管理職者5名であった。これらの参加者に対して、研修の効果測定を目的に質問紙調査を実施した。 2.医療スタッフを対象に、自殺事故予防のための教育プログラムのための資材を開発した。具体的には、①メンタルヘルス不調への気づき、②声掛け、③傾聴、④(自殺の)リスク確認、⑤安全確保、⑥問題解決、⑦情報提供、⑧相談勧奨、⑨セルフ・ケアの強化、⑩家族支援、の10の行動目標を設定し、相応するモジュールを作成し、パイロット・プログラムを開発した。 3.2005年実施の“病院内の自殺事故の実態調査(岩下ら,2006;Kawanishiら,2007)”を基盤として、“10年後調査”のための調査紙作成について検討を行った。 調査の対象は、2005年実施の時と同様に、日本医療機能評価機構認定病院を対象に行うこととし、調査項目は、前回同様に、①過去3年間における自殺事故発生数、②発生場所、③自殺手段、④治療主担当科と診断名、⑤患者に見られた危険因子と発生状況、⑥自殺事故後の対応、⑦医療者の事故後のケア、⑧通常実施されている自殺事故対策等とし、これに新たに、病院内の自殺予防と事後対応に関する学習機会情報知悉の有無、こららの研修会への参加実績、そして自殺予防と事後対応実施の障壁を問う項目を追加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.当初、病院管理職を対象とした研修プログラムの開発を予定していたが、まずはじめに、既存の標準的な研修プログラムにおける管理職者の研修効果を測定することとし、その結果を得て研修プログラムの開発を行うこととした。これにより、何等かのデータ、根拠に基き高品質の研修プログラムの開発が期待されると考えられた。管理職者の研修効果については、年度末の研修参加者のデータを合わせて解析中である。 2.心理臨床従事者と、それ以外の臨床従事者を対象とした自殺事故予防のための研修プログラムの個々の資材の開発は予定通りに完了した。 3.2005年実施の“病院内の自殺事故の実態調査(岩下ら,2006;Kawanishiら,2007)”を基盤とした“10年後調査”のための調査紙作成については、ほぼ予定通りに原案を作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究、およびその基盤となっている病院内の自殺予防と事後対応のさまざまな取り組みについては、平成26年度中に、第27回日本サイコオンコロジー学会、第28回東京精神科病院協会学会にてシンポジウム講演を行い、また、平成26年度の医療機能評価機構患者安全推進協議会全体フォーラムや病院管理職者向けの講演なども行い、その周知や啓発を行った。 病院内の自殺予防と事後対応の定着には、医療機関の管理職の啓発による理解が非常に重要である。平成27年度は、病院内の自殺予防と事後対応に関する研修会に参加した病院管理職の研修効果測定の結果を解析し、その特徴を明らかにし、病院管理職者向けの効果的な教育プログラムの開発を目指す。 また、平成26年度に作成した”10年後調査”の確定版を作成し、その全国配布を予定通りに実施する。なお、前回の2005年実施の調査は、その結果が全国紙やテレビの全国ネットワークで紹介されるなど、社会的インパクトが非常に大きく、その後の日本における自殺予防対策事業について重要な知見を提供するところとなったが、今回も調査結果を正確に、また広く周知し、社会的啓発を行いたい。 自殺の事後対応におけるスタッフ・ケアは、広く医療事故後のスタッフ・ケアの在り方示唆を与えるものとして、上記のシンポジウムやフォーラムなどで注目を集めている。本研究の成果の応用について(特に医療事故対応や、事故に関わらずメンタルヘルス不調を抱えた医療職のケアに関して)、検討を進めたい。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた研修プログラムとそのツールの開発が、次年度以降に繰り越され、支出額が減額となった。 その他、旅費支出等で支出を圧縮したために減額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度に予定されていたものを、次年度以降に使用する。また、計画が予定よりも早期に進行した場合には、研究のプロセスや成果公表の機会を増やし、旅費などで使用する。
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[Journal Article] Effectiveness of assertive case management for suicide attempters who were admitted to emergency departments: a randomised controlled multicentre trial in Japan, ACTION-J.2014
Author(s)
Kawanishi C, Aruga T, Ishizuka N, Yonemoto N, Otsuka K, Kamijo Y, Okubo Y, Ikeshita K, Sakai A, Miyaoka H, Hitomi Y, Iwakuma A, Kinoshita T, Akiyoshi J, Horikawa N, Hirotsune H, Eto N, Iwata N, Kohno M, Iwanami A, Mimura M, Asada T, Hirayasu Y
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Journal Title
Lancet Psychiatry
Volume: 1
Pages: 193-201
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Effects of a training workshop on suicide prevention among emergency room nurses.2014
Author(s)
Kishi Y, Otsuka K, Akiyama K, Yamada T, Sakamoto Y, Yanagisawa Y, Morimura H, Kawanishi C, Higashioka H, Miyake Y, Thurber S
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Journal Title
Crisis
Volume: 35
Pages: 357-361
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Interventuions to repeat suicidal behavior in patients admitted to an emergency department for a suicide attempt: a systematic review and meta-analysis.2014
Author(s)
Inagaki M, Kawashima Y, Kawanishi C, Yonemoto N, Sugimoto T, Furuno T, Ikeshita K, Etoh N, Tachikawa H, Shiraishi Y, Yamada M
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Journal Title
J Affect Disorder
Volume: Epub
Pages: 66-78
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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