2014 Fiscal Year Research-status Report
高齢精神障害者のサクセスフル・エイジング達成のための心理社会的特性の解明
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26461772
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
新村 秀人 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70572022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 雅文 東邦大学, 医学部, 教授 (80245589)
根本 隆洋 東邦大学, 医学部, 准教授 (20296693)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 精神障害 / 高齢化 / サクセスフルエイジング |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)精神科病院長期入院患者の地域移行支援として福島県郡山市で行われている「ささがわプロジェクト」では、2002年3月に精神科病院を閉院して長期入院患者を脱施設化し、12年を経た。その経過と、患者の高齢化など新たに見えてきた問題点について検討した。同プロジェクト参加者のうち、2014年3月現在あさかホスピタルで加療を継続する患者61名を対象に、退院時から12年後までの精神症状(PANSS)・全般的機能(GAF)・社会機能(SFS)・生活の質(WHO-QOL 26)・認知機能(MMSE)の変化と退院後の12年間に要した再入院期間について検討した。退院時年齢は53.9±6.8歳、総入院期間は24.6±9.9年だった。対象者は退院後12年のうち90%の期間を地域で過ごし、身体的理由を除くと、51%が精神症状悪化を理由に入院することなく過ごせていた。PANSS・GAFは退院後の5年間は緩やかに改善したが、その後は悪化に転じた。MMSEは緩やかに悪化し、SFS・およびWHO-QOL 26は有意な変化を認めなかった。再入院を要した期間の割合は退院当初は数%で推移したが徐々に増加し、12年目では17.6%に達した。統合失調症長期入院患者の地域移行において、多職種による包括的支援の寄与により、12年間で地域生活できた期間は90%に達した。退院からの5年間では精神症状・全般的機能は緩やかに改善したが、その後は悪化に転じ、高齢化の影響が考えられた。認知機能低下は生活能力の低下に直結し、包括的支援を得る中でも生活維持が困難となり、再入院や高齢者施設入所を余儀なくされるケースも認めた。 (2)サクセスフルエイジングの基盤となるポジティブな心理社会的特性を評価するための評価尺度として、知恵尺度(Three-Dimensional Wisdom Scale)の日本語版の作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地域生活する精神障害者の諸因子の検討、および、ポジティブな心理社会的特性を評価するための評価尺度の作成を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
地域生活する精神障害者の心身の機能・社会機能についての検討をひきつづき行っていく。平成27年度は、地域生活する精神障害者の、①身体機能、特に、血液検査、心電図、認知機能検査についての検討、②高齢化にともなう生活上のニーズの変化、運動機能、認知機能との関連についての検討、を行う。 また、サクセスフルエイジングの基盤となるポジティブな心理社会的特性を評価するための評価尺度の信頼性と妥当性の検討を、健常群において行い、精神障害者における評価の準備を進めていく。
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Causes of Carryover |
ポジティブな心理学的特性を評価する尺度の健常群における信頼性と妥当性の検討をまだ行っていないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ポジティブな心理学的特性を評価する尺度の健常群における信頼性と妥当性の検討の調査費として使用する。
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