2016 Fiscal Year Research-status Report
自閉症スぺクトラム障害の社会相互性障害の新規治療薬とantioxidant機構
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26461777
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
油井 邦雄 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (90101352)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム / 抗酸化タンパク / セルロプラスミン / トランスフェリン / 臨床モデル / 結節性硬化症 / 難治性症状の改善 / 根治薬への架橋 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度には自閉症スペクトラム障害(ASD)症例における抗酸化機能の様態を結節性硬化症(tuberous sclerosis, TSC)の自閉症スペクトラム障害症状と比較、検討した。 TSCのASD随伴の4例では、異常行動尺度(Aberrant Behavior Checklist, ABC)と社会性障害ス握度(Social Responsiveness Scale, SRS) の改善につれて、抗酸化タンパクのceruloplasmin (Cp)とtransferrin (TF)の血清濃度が著明に上昇した。症状は30-60%と大幅に改善し、特に難治性の社会的相互的性と言語的コミュニケーションが改善した。この知見は一般の自閉症スペクトラム障害症例に比べて、抗酸化タンパクの機能亢進が病態要因として大きな役割を担うことを示している。 一般のASD症例では、症状の改善につれてTfと抗酸化タンパクの suoeroxide dismutase (SOD)の血清濃度の上昇がみられた。しかし、一般のASD例の20%の症例では言語性コミュニケーションと相互的社会性は改善しなかった。この点で、TSCの自閉スペクASD例における社会的相互的性と言語的コミュニケーションの著明な改善は世界中の学童期―青年期の約20%のASD例に認められる難治性の言語性コミュニケーション障害の改善に寄与する知見である。 一般ASD例で抗酸化機能とDNA損傷も検索した。一般ASD例では正常群にくらべてtotal antioxidan capacity(TAC)が低下し、酸化ストレス負荷が大きかった。この2要因の病態に対する役割を標準化偏回帰係数を算出して比較討した結果、TACが有意に重要な役割を担うことを世界で初めて突き止めた。この成果は有力な英文専門誌2誌で公表され、さらに2報が公開予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は一般の自閉症スペクトラム障害症例における抗酸化機能とDNA損傷の検索であったが、自閉症スペクトラム障害の臨床モデルとして難治な結節性硬化症の自閉症スペクトラム障害を取り上げて、抗腫瘍薬エベロリムスの効果と奏功機序を検索した。その結果、難治な相互的社会性と言語性コミュニケーションの障害が著明に改善し、血清の抗酸化タンパクのceruloplssminと transferrinの機能亢進という奏功機序を見出した。このことは、治療抵抗性の一般の自閉症スペクトラム障害症例の根治薬につながる知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
自閉症スペクトラム障害の臨床モデルとして、難治な結節性硬化症の自閉症スペクトラム障害を取り上げて、抗腫瘍薬エベロリムスの効果と奏功機序を検索した。その結果、難治な相互的社会性と言語性コミュニケーションの障害が著明に改善し、血清の抗酸化タンパクのceruloplssminと transferrinの機能亢進という奏功機序を見出した。このデータを積み上げて、治療抵抗性の一般の自閉症スペクトラム障害症例の根治薬につながる知見を見出すために、名古屋大障害児小児科、国立国際医療研究センター病院小児科、聖隷浜松病院小児神経科、大阪大泌尿器科、神戸大泌尿器科、埼玉井地泌尿器科の教授らと連携して研究を進めつつある。 今後は京都大精神科、名古屋大精神科の自閉症スペクトラム障害の病態研究をしている准教授ら専門家とも提携を図って、一般の自閉症スペクトラム障害の根治薬の開発に貢献したい。
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Causes of Carryover |
自閉症スペクトラム障害の臨床モデルの結節性硬化症の自閉症スペクトラム障害の症例が予定の3例が集まらず(研究対象のクライテリアを狭めたための)、次年度に研究協力者を追加して、研究を実施するためです。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
結節性硬化症の自閉症スペクトラム障害例の抗酸化機能の検査費用と研究協力者との会合費用に使用します。
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Remarks |
該当なし
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