2015 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災の災害救援業務において救援者が被る心理的影響に関する縦断研究
Project/Area Number |
26461779
|
Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
長峯 正典 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 准教授 (70725217)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 邦夫 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 教授 (00531641)
吉野 相英 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 教授 (20191629)
重村 淳 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 准教授 (90286576)
角田 智哉 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 助教 (10638620) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 東日本大震災 / 心的外傷後ストレス障害 / 災害支援者 / 二次的トラウマ / 遅発性PTSD / 心理的苦悩 |
Outline of Annual Research Achievements |
主要アウトカムとして設定していた、精神疾患簡易構造化面接の結果について集計・分析し、第61回防衛衛生学会において報告した。全国の陸上自衛隊駐屯地のうち、16カ所の駐屯地において本研究協力を得ることができ、合計83名に対して精神疾患簡易構造化面接が実施された。対象者の約3分の1となる28名に何らかの診断が該当し、このうち19名(約7割)は精神科の受診歴がなく、今回のような介入の有効性が示唆された。しかしながら、精神疾患簡易構造化面接の実施数は100例に満たず、分析を実施するには困難と考えられた。従って、本研究の主要アウトカムを心理的評価尺度であるIES-R及びK10へと変更した。 東日本大震災への派遣後、1年間に渡りIES-R及びK10が評価された陸上自衛隊員約5万7千名のデータに対し、3年後のIES-R及びK10データを連結して得られた、33901名のデータを解析した。IES-R平均得点は時間経過に伴って有意に低下し、3年後の高得点者(25点以上の者)は0.9%であった。派遣後1年間に一度でも高得点となった1278名のうち、派遣3年後にも高得点を示していた者は138名(10.8%)であった。一方、派遣3年後に高得点を示していた315名のうち、派遣後1年間に高得点でなかった者は177名(56.2%)と過半数を超えていた。派遣3年後のK10平均得点は、派遣終了後1年間のいずれの値よりも有意に高い値であった。しかしながら、派遣3年後のK10得点を陸上自衛隊全体でみると、東日本大震災に派遣された隊員は、派遣されなかった隊員よりも有意に小さな値を示しており、震災派遣による影響ではないと考えられた。派遣3年後のIES-R高得点に関連する有意な要因のうち、オッズ比が2以上のものは、自身の被災(オッズ比2.5)と派遣後の過重労働(オッズ比2.0)であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画としては、(1)災害派遣3年後までの調査データの集計/解析・学会発表(2)平成28年度調査(5年後調査)に向けてのアンケート項目の見直し/準備、の2項目を予定していた。これらについては、現在のところ概ね予定通りに実施できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要でも示した通り、当初主要アウトカムとして予定していた精神疾患簡易構造化面接については、現在の研究体制では十分のケースを集めることが困難と判断し、今後は心理的評価尺度であるIES-R及びK10を主要アウトカムとして研究を進める。
|
Causes of Carryover |
平成27年度は、ビックデータの連結費用・論文校正費用・学会参加費用に関して、組織の研究費から大幅に支出することができた。そのため、当初予定していた支出額を減額することができ、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
主要アウトカムを心理尺度であるIES-R及びK10へと変更したことに付随し、今後も心理尺度のデータを連結するための費用が生じるため、これらの費用として充当する。 また、震災派遣に関連する過去の分析結果に関して、学術発表の許可を所属機関より得ることができた。これらを発表・出版するための諸費用としても、今後これらの費用を充当していく。
|