2014 Fiscal Year Research-status Report
物質の三態を制御したRn/Atジェネレータの開発とα線内用療法への展開
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26461848
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鷲山 幸信 金沢大学, 保健学系, 助教 (80313675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 明彦 金沢大学, 物質化学系, 教授 (80230655)
西中 一朗 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (70354884)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | α放射体 / 放射線 / 癌 / 薬学 / 内用療法 / アスタチン-211 / ジェネレータ |
Outline of Annual Research Achievements |
α放射体の211Atは、治療に応用することが期待されている。しかし、211Atの製造には4Heを28-29MeVに加速できる中型加速器が必要であることや211Atの半減期が7.2時間と短いことから、広範囲の需要に応えることができない。本研究では、211Atの広範囲での利用を目的とし、別の核反応系を利用して親核種211Rnを製造し、その211Rnから壊変して生成する211Atを利用した211Rn/211Atジェネレータを開発することが目標である。 211Rnの製造には、232Th(p,spall)211Rnや209Bi(7Li,5n)211Rnが核反応として知られている。そのうち、生成核種数が少なく、また化学分離操作も簡便と考えられる209Bi(7Li,5n)211Rn反応系が製造方法として望ましい。本研究では209Bi(7Li,5n)211Rn反応の最適条件を検討するために、基本的な製造因子である211Rnの核反応断面積を求めた。 高純度Biを高純度アルミ箔に蒸着したものを6枚重ねて1スタックとし、7Liの入射エネルギーをAl箔で減弱させながら合計3スタックの照射実験を行った。照射後の試料はγ線スペクトロメトリーを行い、211Rn, 210Rn, 210At等の核反応断面積を算出した。 211Rnは測定した40-60MeVのエネルギー範囲において、文献値に比べて高い値を示した。文献値は化学操作の介入により生成量を過小評価しているため、我々の値に比べて低くなったと考えられる。211Rnの核反応断面積は53-55MeVで極大となり以後エネルギーの増加と共に減少した。一方、210Rnと210Atを個別に測定した結果は我々の手によって初めて得られた。210Rnの核反応断面積は50MeV以降から7Liの入射エネルギーである60MeVまで増加していった。211Rnを製造するには、7Liの入射エネルギーを押さえつつ、照射後の冷却時間の設定により210Rnを積極的に減衰させる必要があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来の研究計画では、211Rnを捕集するための有機溶媒をいろいろと変化させて、状態を評価する予定であった。しかし、211Rn/211Atジェネレータを一般化するためには基本的な核反応を正しく理解し、最適な照射条件を提示するという基本的なことが必要なため本実験を先行した。本実験では従来から既に知られている211Rnの核反応断面積だけでなく副反応で生成する210Rnや210Atの核反応断面積を正しく求めることに成功した。これは、210Rnや210Atから壊変して生成する210Poの放射能を正確に見積もることに役立ち、放射性医薬品を作った場合に於いても、副作用を低減化することが可能となる。しかし、当初予定していた実験ではないため、やや遅れているとの評価をした。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り211Rnの各種炭化水素溶媒への捕集に対する温度依存性を検討する。その後、温度を変化させ炭化水素溶媒の液体から固体への変化に伴う気体中への損失を検討する。これらを総合的に評価し、最適炭化水素溶媒および最適温度条件に基づくジェネレータを開発し、その安定性を評価する。
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