2015 Fiscal Year Research-status Report
連続寝台移動型PET装置を用いた全身ダイナミック撮影による腫瘍診断に関する研究
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26461869
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
村上 康二 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50200267)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | PET/CT装置 / 連続寝台移動 / FDG-PET / ダイナミック収集 / 時間放射能曲線 / 悪性腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在のFDG-PET検査は通常FDGの注射後60分-90分後から撮影を始め、体軸方向に15-25cm程の範囲を撮影し、位置を変えながら全身を撮影する手法が一般的である。すなわち画像は一時点における放射性薬剤の静的分布を画像化しているのにすぎず、さらに厳密に言えば最初に撮影する部位と最後に撮影する部位とは時間的に数10分の時間差が存在する。一方PET検査において放射性薬剤の経時的な分布変化を見る「ダイナミックPET」が従来の静的画像に新たな情報を加える可能性がある。たとえば現在のPET検査は集積の強弱のみで診断をしているが、臨床上は生理的集積や炎症への集積など、腫瘍病変以外への様々な集積が診断能の低下の要因となっている。これに時間軸という新たなパラメータを加えて解析をすれば診断能の向上につながる可能性がある。本研究の目的はダイナミックPETによって得られる時間放射能曲線を解析し、様々な腫瘍診断においてダイナミックPETがどのように臨床診断に寄与するかを解明することである。 ところで従来から脳や心臓領域など限られた範囲・臓器でダイナミックPETが施行された報告はあるが、腫瘍は転移巣も含めると広い範囲の撮影が必要であり、今までの1テーブルごとに画像収集する方式では全身のダイナミック撮影は困難である。一方3年前に登場した連続寝台移動型PET装置は連続的に寝台がゆっくりと移動しながら全身を撮像する方式であり、本法を応用すれば全身のダイナミックPETが可能である。つまり全身のダイナミックPETは従来の撮像装置では実施が難しく(撮像範囲ごとの重なりがあるため撮像時相が一定でない)、新装置の開発により初めて可能となった。従って過去に類似の報告は無く、腫瘍診断においては特に原発巣と転移巣の相違や良悪性度の診断、生理的集積との鑑別に有用性が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は連続寝台移動撮像法(以下FMT)の基本性能を確認するべく、従来の撮像法との画質の比較やファントム実験を中心に研究を実施した。臨床試験は従来法とFMTの比較を目的とし、対象をPET検査が必要な全ての担癌患者とした研究計画をたて、院内の倫理審査委員会に認可を得た(承認番号2013-363) まず全身ダイナミック撮影に関して、正常ボランティア1名についてFDGの注射後1時間半に渡り全身のダイナミックデータを収集した。ファントム実験の結果から寝台速度が10mm/s以上では明らかにノイズ成分が増え信頼性が劣ることから、速くても5mm/s以下の寝台速度にする必要があるものと思われた。 ところで、現在臨床的なPET検査は全身撮像が15-20分程度で終了する。そこでダイナミック撮像においても実用上は同程度の撮像時間内に、画質を担保しながら実施する必要がある。そこで我々は臨床研究のパラメーターを寝台速度5mm/s, 180sec/scan X 5scanと設定した。すなわち1スキャンで90cmの範囲を3分間で撮像、これを5回繰り返す事になり、合計15分間の検査時間で5ポイントの時間放射能値を得ることができる。本年4月現在で合計22例の患者に同意書を取得の上、本法を実施した。 まず我々はダイナミック撮像で得られた画像と従来法で得られた画像と比較して診断能に差がないかどうかを検討した。すなわちダイナミックデータで得られた画像による診断能が従来法よりも劣れば、本法は臨床上使いづらいことになる。そこでダイナミックデータを全て重ね合わせた画像処理を考案し検討した。重ね合わせの方法にはサイノグラムのデータを重ね合わせる方法と画像を重ねる方法が有り、まずこの2法を比較した。その結果、この2法ではSUVに有意差が出ないことが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の懸案事項であったサイノグラムベースの画像融合と画像ベースの画像融合の2種類が予定通り可能となったため、今年度は臨床データで両者を比較検討することが可能となった。しかし本来であればファントム実験も必要であるため、臨床データの裏付けとなるデータを実験により得る予定である。また従来法と重ね合わせ画像の比較も臨床上は困難で有り(どうしても撮像時間にずれが生じるため)、これについてもファントム実験によるシミュレーションが必要と考えている。 今年度は研究の最終年度であるため、当初の目的とした正常組織の時間放射能曲線(TAC)、生理的集積のTAC、病的の集積のTACの解析を行う予定である。まだ症例数が少ないために疾患ごとの解析は困難と考えられるが引き続き症例の蓄積を進めたい。 また解析ソフトウェアにおいても未解決の懸案事項がある。ダイナミック解析するには異なった時相の画像の同部位にROI(関心領域)を設定でき、時間放射能曲線を描ける必要がある。しかし現時点では手動でROIを設定せねばならず、誤差を生じる要因となる。これを自動的に設定でいるようにすれば信頼性の高いデータを得ることが可能となる。この件は引き続きソフトウェアメーカーに要求しているところである。
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Causes of Carryover |
1
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1
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Research Products
(6 results)