2015 Fiscal Year Research-status Report
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26461928
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
田中 和生 昭和大学, 医学部, 教授 (50236569)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | サイトメガロウイルス / 再活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)MCMV潜伏感染マウスを用いたMCMV再活性化の機序解明:平成26年度の実験でMCMV潜伏感染マウスを妊娠させると母乳中に再活性化MCMVが検出され、経母乳感染により新生仔マウスが感染することを示した。平成27年度はこれを詳細に検討した。一方、経母乳感染した新生仔マウスでは唾液腺、肺、肝臓においてもウイルスは検出できた。さらに経母乳感染したマウスの生後21日の体重は平均7.7g (n=8)であり非感染対照群の体重(13.0g)に比べ60%も低下しており、発達障害が認められた。 (2)CMV再活性化を調べる手段として平成26年度はMCMV (Smith strain), HCMV (AD169) のIE領域にGFP遺伝子を挿入した変異ウイルスの作成を試みた。しかしこの変異ウイルスは共に感染効率が悪く、実験に用いることが出来なかった。そこで、平成27年度はGFP遺伝子を挿入しても感染効率には影響を与えないとされるHCMVの臨床分離株の供与を受け、変異ウイルスを作成し、現在感染効率を検討中である。 (3)計画外研究:ヒト母乳には高頻度に再活性化したHCMVが検出されるが、平成26年度の研究で電子レンジで40秒加温することにより感染性ウイルスの量を検出限界以下にすることが出来ることを示した。そこで平成27年度はこの加温が母乳中のホルモン(レプチン、グレリン、アディポネクチン)および脂肪酸に与える影響を調べた。その結果、この加温では母乳中のホルモン、脂肪酸には影響を及ぼさないことを示した(要旨は平成27年の日本ウイルス学会にて発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)母乳を用いた再活性化に関する研究:おおむね順調に経過している。この実験系はMCMV再活性化の検討を目的とした系であるが、再活性化したMCMVが経母乳感染した新生仔の病態はむしろ経胎盤感染(先天性感染)に近い。胎盤の構造の違いからマウスではMCMVの経胎盤感染は起こらないとされていたが、本実験の経母乳感染モデルは発育障害が顕著であり、何らかの発達障害も伴っているものと考えられる。ジカウイルス感染症が大きな社会問題となっており、ウイルスの経胎盤感染は医学的に極めて重要な問題となっている。本実験系は経母乳感染モデルであるが、経胎盤感染に近いモデルと考え、平成27年度は新生仔マウスの検討にも時間を費やした。 (2)In vitroの再活性化機序の解明に必要な変異ウイルスの作成が難航している。CMVの再活性化の第一のステップはCMVの Major Immediate/Early Promoter (MI/EP) の非アセチル化ヒストンがアセチル化され、この領域の遺伝子が活性化される。その後、MI/EP領域にNF-κB, CREB, AP-1などが結合して、MI/EPの下流にあるI/E遺伝子が活性化され、CMV再活性化が起こるものと考えられている。そこで、I/Eの下流にGFP遺伝子を挿入した変異ウイルスの作成を試みた。平成26年度は MCMV (Smith strain), HCMV (AD169) を用いて変異ウイルスの作成を試みた。しかし、これらの変異ウイルスはGFP遺伝子挿入後、感染効率が著しく低下していた。そこで、平成27年度は遺伝子を挿入しても感染効率への影響が少ないとされるHCMV臨床分離株を用いて変異ウイルスを作成し、現在感染効率を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に従って(1)、(2)の実験を行う。さらに平成26、27年度に得られた知見からNF-κB, CREB, AP-1などの発現には常在細菌叢が関与していることが示唆された。そこで、新たに(3)の実験系を加える。 (1)NF-κB, CREB, AP-1などの転写因子の妊娠、出産時の動態をリアルタイムPCR法によって調べる。 (2)変異HCMV(再活性化するとGFPが発現し緑色を発色する)をTHP-1細胞に感染させ、トリコスタチンA(脱アセチル化阻害剤)を添加し、HCMVの再活性化の有無、NF-κB, CREB, AP-1の動態を調べる。 (3)MCMV潜伏感染雌マウスの飲水中に非吸収性の抗生物質を加え、腸内細菌除去マウスを作成する。このマウスを腸内細菌除去雄マウスと交配させて、出産後の母乳中の再活性化MCMVの有無を調べる。
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Causes of Carryover |
当初の計画では平成27年度分として、物品費90万、旅費25万、謝金5万と計上していたが、旅費は使用せず、その分を謝金に回した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越した60238円は謝金の一部として使用する計画である。
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Research Products
(3 results)