2014 Fiscal Year Research-status Report
プロドラッグシステムを応用した増殖型レトロウイルスによる新規膵癌治療法の開発
Project/Area Number |
26461936
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平岡 圭 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (10719587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 聡 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50322813)
土川 貴裕 北海道大学, 大学病院, 助教 (50507572)
七戸 俊明 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70374353)
中村 透 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70645796)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レトロウイルス / プロドラッグ / 膵癌 / 遺伝子治療 / ウイルスベクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、標的腫瘍細胞内で酵母由来シトシンデアミナーゼ酵素(yCD)を発現させることで抗真菌薬であるフルシトシン(5FC)を抗癌剤であるフルオロウラシル(5FU)に変換して抗腫瘍効果を得ることを目的としたプロドラッグシステムと増殖型レトロウイルスベクター(RRV)による遺伝子発現システムを組み合わせた膵癌における新規治療法の確立を目指している。今年度は、RRVを用いた実験に必要となる各種申請を行い、実験環境の整備と培養膵癌細胞株を用いた感染実験を行った。 まず、本邦においてRRVを用いた実験に必要となる総長承認申請に基づく施設認可を、当教室が所有する実験施設および本大学が所有する動物実験施設において取得した。続いて、本研究に使用するRRVウイルスとRRV産生に必要なウイルス産生用プラスミドを米国の共同研究施設より入手することができた。 最初の実験として、ウイルス産生プラスミドをウイルス産生細胞にトランスフェクションすることでRRVを産生、抽出、保存した。ヒト膵癌細胞株、およびマウス膵癌細胞株を用いた細胞実験系において、マーカーとして緑色蛍光タンパク(GFP)遺伝子を組み込まれたRRVを用いて感染効率、増殖能を検討した。蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、ゲノム定量PCRを用いることで、その高い感染効率と速やかな増殖能をin vitroで確認することができた。 また、本研究の治療ベクターであるプロドラッグ変換酵素yCD遺伝子を有するRRVを培養ヒト膵癌細胞株およびマウス膵癌細胞株に感染させ、プロドラッグである5FCを投与して培養を行った。MTSアッセイにより、プロドラッグ5FCのRRV感染細胞に対する強力な殺細胞効果を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RRV実験に必要な施設認定を取得した後、共同研究施設よりウイルスベクターを入手し、計画よりやや遅れて実験開始が可能となった。本年度の目的であったヒト膵癌培養細胞株におけるRRVの感染効率、増殖能、遺伝子導入効率の検討を行い、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、定量PCRを用いてin vitroで確認することができた。また、治療遺伝子を有するRRVをヒト膵癌細胞株に感染させ、プロドラッグ投与による殺細胞効果をMTSアッセイによって判定することができた。しかし、免疫染色やウエスタンブロッティングを用いた感染細胞における導入遺伝子の発現確認や、膵癌初代培養細胞におけるウイルスベクターの感染能の検討はまだ進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、膵癌細胞株のマウス皮下移植モデルを作製し、皮下腫瘍内におけるRRVの増殖能をフローサイトメトリーやゲノム定量PCRを用いて検討する。さらに、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を導入した膵癌細胞を用いてマウス膵臓癌同所移植モデルを作製し、5FC投与によるRRV感染腫瘍の縮小効果をIVIS生体イメージングシステムで計測する。安全性試験としては、治療マウスより採取した臓器を用いてゲノム定量PCRを行いRRVのバイオディストリビューションを確認する。以上の前臨床試験において本治療システムの治療効果と安全性を確認できれば、国内臨床試験に向けて環境を整える。
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Causes of Carryover |
平成26年度に、実際の手術検体を用いた膵癌初代培養細胞におけるウイルスベクターの感染能を検討する予定であったが、適切な手術検体を十分に確保にするためには当初予定していたよりも時間を要するため、計画を変更してさらに多くの膵癌細胞株を用いて検討を行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由により、膵癌初代培養細胞におけるウイルスベクターの感染能の検討は次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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