2015 Fiscal Year Research-status Report
次世代シーケンサーを用いた胃癌・GIST患者末梢血中腫瘍由来浮遊DNAの検出
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26461977
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
黒川 幸典 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10470197)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ctDNA / 次世代シーケンサー / 胃癌 / GIST |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、胃癌患者およびGIST患者の末梢血を用いて次世代シーケンサーによる腫瘍由来遊離DNA (ctDNA)の検出を行い、早期発見法や再発診断法あるいは抗癌剤の効果判定法などの確立につなげることを目的とする。 平成26年度は、当院で診療を行った胃癌患者およびGIST患者を対象に、組織の収集とDNAの抽出を行った。特にGIST患者については、イマチニブ耐性病変を持つ患者5名から得た切除検体を用いてシーケンシングを行い、腫瘍特異的な変異を同定した。さらに耐性病変の治療前後での血漿を採取してcell-free DNA (cfDNA)を抽出し、腫瘍で同定した変異を血漿から検出するためのプライマーを新たに設計し、cfDNAのシーケンシングを行い、cfDNA中におけるctDNAの比率を算出することができた。 平成27年度は、胃癌患者に対しても次世代シーケンサー用試薬であるCancer Panelを用いて胃癌原発巣42例における腫瘍特異的な変異を同定した。胃癌原発巣においてTP53の変異を同定した10例のうち6例の術前血液サンプルからcfDNAを抽出し、GIST患者に対して行ったものと同様の手法でシーケンシングを行ってctDNAの割合を算出し、腫瘍ボリューム、臨床病期などとの関連性について解析した。また、手術前後のサンプルについては、術後のctDNAの消失の有無と再発の関連性について検討し、ctDNAが術後の再発診断や再発後の化学療法効果判定を行うマーカーとして応用かどうかを検索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の計画としては、GIST患者だけでなく胃癌患者に対しても、次世代シーケンサー用試薬であるCancer Panelを用いて胃癌原発巣における腫瘍特異的な変異を同定し、シーケンシングを行うことでcfDNA中のctDNAの割合を算出し、腫瘍ボリューム、臨床病期、転移臓器などとの関連性について解析することを予定していた。 本年度は、当科で手術された胃癌原発巣42例を用いて、TP53、APC、CDH1、KRASについて変異報告の多い箇所をはさむようなprimerを設計し、Sanger法を用いたシーケンスを行い、10例(24%)でTP53の変異を同定した。TP53の変異を同定した10例のうち、6例の術前血液サンプルを用いて、血漿中のcf DNAの抽出を行った。それぞれの症例において術前、術後の2サンプルずつから、14.1-58.9ngのcfDNAを回収することができた。回収したcfDNAのdeep sequencingを、次世代シーケンサーを用いて行い、3例で腫瘍と同一の変異を持つctDNAを血漿から検出した。検出例はいずれもStageIIICやIVの非常に進行した胃癌患者であった。再発を認めた際には術後3か月ごとに1年間血液を提供していただき、DNAを抽出した。治療経過中の血液サンプルを追跡したところ、ctDNAの定量値が腫瘍量、治療効果、血清腫瘍抗原の推移と合致していた。 以上より、胃癌症例に関しても平成27年度の計画は達成しており、研究全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、イマチニブ耐性GIST患者5例から白血球ゲノムDNAを抽出し、cfDNAにおける変異解析と同様の手法を用いてシーケンシングを行い、腫瘍に特異的な変異をgermline mutationとして認めないことを確認する。また、本研究で用いる変異検索法において、健常人では患者の腫瘍に特異的な変異を検出しないことを確認する目的で、健常人から白血球ゲノムDNAを抽出し、これまでと同様の手法を用いてシーケンシングを行い、腫瘍に特異的な変異の割合を検索し、ctDNAの検出感度を求める。今回行った手法により、GISTに特異的な遺伝子変異をcfDNAから検出できることが分かれば、関連病院を含めて多施設共同臨床研究を計画し、治療効果予測や薬剤選択において有用であるかどうかを検証する。 胃癌患者に対しては、TP53に加えALKやEGFR、BRAF、KRASなどの48の癌関連遺伝子を一度に検索可能な次世代シーケンサー用のパネルを用いて原発巣の解析を行う。変異が同定できれば、それらの遺伝子についてもctDNAの割合や治療経過における推移を検索し、TP53以外の遺伝子の変異もマーカーとして応用可能かどうかを検索する。
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Causes of Carryover |
術後のctDNAの消失の有無と再発の関連性について検討し、ctDNAが術後の再発診断や再発後の化学療法効果判定を行うマーカーとして応用かどうかを検索を行うための物品を購入したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
イマチニブ耐性GIST患者5例から白血球ゲノムDNAを抽出し、cfDNAにおける変異解析と同様の手法を用いてシーケンシングを行い、腫瘍に特異的な変異をgermline mutationとして認めないことを確認するための物品を購入するため。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Monitoring gastric cancer progression with circulating tumour DNA2015
Author(s)
Hamakawa T, Kukita Y, Kurokawa Y, Miyazaki Y, Takahashi T, Yamasaki M, Miyata H, Nakajima K, Taniguchi K, Takiguchi S, Mori M, Doki Y, Kato K.
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Journal Title
Br J Cancer
Volume: 112
Pages: 352-356
DOI
Peer Reviewed