2015 Fiscal Year Research-status Report
直腸癌術前化学放射線治療における肛門括約筋障害と肛門機能温存に関する研究
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26462019
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
西澤 祐吏 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医員 (50545001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 誠志 国立研究開発法人国立がん研究センター, 臨床開発センター, ユニット長 (30314743)
中村 達雄 京都大学, 再生医科学研究所, 准教授 (70227908)
道川 祐市 国立研究開発法人放射線医学総合研究所, 緊急被ばく医療研究センター, 主任研究員 (20360688)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 直腸癌 / 放射線化学療法 / 排便機能障害 / 脂肪幹細胞 / 再生医療 / 肛門温存手術 |
Outline of Annual Research Achievements |
直腸癌の術前化学放射線療法(CRT)は局所再発のリスクを軽減させるが、内肛門括約筋切除術(ISR)において術後肛門機能を低下させる最も大きな要因の一つであり、その理由としてCRTが残存する括約筋組織の組織変性を引き起こしていることを報告してきた。本研究の目的は、動物実験において肛門組織の放射線障害動物モデルを作成して、これを評価対象にした再生医療の手法を用いた、肛門組織障害を軽減させる治療モデルを作成することである。 動物実験における放射線照射実験と照射後の動物管理を精度よく施行する目的にて、27年度より放射線総合医学センターから共同研究者に加わっていただき、実験のスピードアップを図る事ができた。本来、ラットの肛門組織を用いた放射線障害モデルを作成していたが、動物管理の観点からマウスの肛門を用いた方が実験数が増やせることと、マウスを用いた同様の肛門組織評価において、放射線障害の評価と肛門括約筋組織の認識が可能であったことから、マウスを用いた実験を施行している。 マウスに放射線照射装置を用いて5Gy、10Gy、20Gyを照射するモデルをそれぞれn=5として3週まで、マウスの体重と肛門周囲の便付着に関して経過観察し、3週後に肛門組織を採取して組織障害を検討した。5Gyと10Gyでは観察中に死亡する個体はなかったが、20Gyでは1例が観察中に死亡した。また、組織障害を評価すると、5Gyでは組織障害の有無が評価できなかったが、10Gyと20Gyでは組織障害の所見を認め、特に20Gyでは粘膜下に感染巣を形成していることがわかった。 10Gyと20Gyのモデルに関して骨髄間葉系幹細胞を静脈投与することで、個体の全身状態と組織障害について治療効果に関する検討を開始し、経過観察中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、動物実験において肛門組織の放射線障害動物モデルを作成して、これを評価対象にした再生医療の手法を用いた、肛門組織障害を軽減させる治療モデルを作成することである。最初はラットを対象とした、放射線照射実験を行っていたが、27年度より放射線総合医学センターから共同研究者に加わっていただき、実験のスピードアップを図るためにマウスを対象とした実験に移行した。これは、実験数の確保と動物管理の面で有用であり、今回の動物モデルの作成に関してはその種別で評価系に差異が生じないことがわかったことから、マウスを対象とした実験を施行することとした。 放射線の照射量に関しては、20Gyでは個体死を招き、5Gyでは組織障害の所見が得られないことから、10Gy相当が望ましいことがわかった。ただ、マウスにとって数Gyの照射量の差が、大きな障害になり得ることから、現在8Gy,10Gy,12Gy,14Gyと細かく線量を区切った、照射実験を施行中である。この結果より、適切な照射線量が確定できると考えている。 治療に関する、再生医療では放射線照射による、個体死などの全身状態に影響する変化を認めたことから、脂肪幹細胞の局所投与だけでは、治療につながらない可能性も考慮して、まず骨髄間葉系幹細胞の全身投与を施行して、治療効果を検討するところから着手した。 動物実験の種類を変更したこと、局所の放射線障害が全身状態に与える状況も加味する必要が出てきたことで、放射線障害モデルの作成に時間がかかっているが、これまでの実験結果で新たな放射線障害の知見も得られていることから、本研究の重要性はさらに増していると考えている。当初計画より、多少の遅れを認めているが、放射線総合医学センターの協力によって研究のスピードも速くなっているので、来年度の実績を着実に積み重ねていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線障害モデルの動物実験に関しては、放射線総合医学センターとの共同研究を進めていくことで、研究を推進していくことが可能である。また、障害モデルの評価に関しては当病院内の病理部門との連携で研究を進めているためスムースな対応が可能である。実験の評価に関しては、定期的に出張等でミーティングを開くことと、テレビ電話会議を導入することで推進していき、協力施設との連携をさらに深めて来年度の研究実績に繋げていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
27年度の実験計画において、再生医療を用いた実験計画が、放射線障害モデルの作成に時間がかかったため、導入部分しかできておらず、その費用を28年度に持ち越した。 また、27年度の海外学会への参加を見送って、28年度に予定することとしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
放射線障害モデルにおける再生医療を用いた治療モデルの開発に関する、動物実験に使用予定であり、海外学会、国内学会、また各施設とのミーティングにおいて、使用する計画である。
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Research Products
(9 results)