2014 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌におけるオキサリプラチン耐性の異なる二つの分子マーカー同定と臨床応用
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26462031
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
冨田 尚裕 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (00252643)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山野 智基 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00599318)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オキサリプラチン / 大腸癌 / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はヒト大腸癌細胞株DLD1、HCT116からクローニングしたオキサリプラチン(以下OHP)耐性細胞株DLD/OHP1, DLD/OHP4, DLD/OHP5とHCT/OHP1, HCT/OHP3, HCT/OHP5を用いてオキサリプラチン耐性のメカニズムを解明することを目的とする。DLD1由来のOHP耐性細胞株はOHPのみに耐性で5FU,CPT-11には感受性を維持していたが、HCT116由来のOHP耐性株は5FU、CPT-11にも耐性であった。 HCT116の多剤耐性メカニズムを見つけるためにDLD1, DLD/OHP1, DLD/OHP4, DLD/OHP5 ,HCT116, HCT/OHP1, HCT/OHP3, HCT/OHP5のエクソーム解析とマイクロアレイ解析を行った。HCT由来OHP耐性株全てでCDS内に変異のある遺伝子は224個あった。その内マイクロアレイで有意に発現が上昇しているのはCABP1とSMAD7のみであった。 マイクロアレイ解析からHCT116由来OHP耐性クローン全てで遺伝子発現が有意に変化し、エクソーム解析でも有意な変異があるのは46遺伝子あった。文献報告からFKBP5、IRF9、SMAD7を候補として抽出した。まずHCT116、OHP耐性クローンでOHP未投与、OHP投与で、これらの遺伝子発現変化を定量的RT-PCRで確認した。FKBP5はクローンでの発現がHCT116と大差無かった。IRF9とSMAD7は耐性クローンでの発現が大きく増加し、マイクロアレイの結果と同様であった。 そこで次に臨床サンプルでの遺伝発現を検討した。抗癌剤耐性の評価が臨床例では困難なため、術前化学療法を行った症例と、行わなかった症例でIRF9、SMAD7の発現を定量的RT-PCRで比較した。SMAD7では術前化学療法を行った症例で、行っていない症例に比べて有意に発現が高くなっていたが、IRF9では有意差が無かった。IRF9、SMAD7ともに正常大腸粘膜よりも癌で発現が低下している症例が多く、今後の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はヒト大腸癌細胞株DLD1、HCT116からクローニングしたオキサリプラチン(以下OHP)耐性細胞株DLD/OHP1, DLD/OHP4, DLD/OHP5とHCT/OHP1, HCT/OHP3, HCT/OHP5を用いてオキサリプラチン耐性のメカニズムを解明することを目的とする。 エクソーム解析とマイクロアレイ解析による耐性遺伝子の絞り込みから候補遺伝子がIRF9、SMAD7が見つかったことから予定通り研究は進んでいる。 これらの遺伝子は抗がん剤耐性に関する論文報告はあるものの、薬剤代謝に直接関与するものではない。マイクロアレイ解析の結果から感受性遺伝子を抽出した報告は多いが、臨床応用されているものはない。耐性クローンを複数用い、エクソーム解析とマイクロアレイ解析を併用した同様の研究は無く、候補遺伝子が分子マーカーとなる可能性が高いと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにDLD1 、DLD/OHP1、 DLD/OHP4、 DLD/OHP5、HCT116、HCT/OHP1、HCT/OHP3、HCT/OHP5のエクソーム解析とマイクロアレイ解析が終了した。今後行う予定の研究は以下になる。①IRF9、SMAD7が薬剤耐性のマーカーであるかどうかを細胞培養実験(発現抑制で感受性が回復するか)と臨床サンプル(遺伝子発現チェックと遺伝子変異の有無確認)で行う。②HCT由来のOHP耐性株全てが5FUとCPT-11にも耐性を示し多剤耐性となっていたために、OHPにのみ耐性となるDLD1由来のOHP耐性細胞株での解析は進んでいない。DLD1に関してもその耐性関連遺伝子をHCT116の場合と同様に抽出する。③HCT116に関してもCDS内でクローン共通で遺伝子変異が見られたものは224個あったが、マイクロアレイ解析で発現変化が評価出来ていない遺伝子も認められる。この内で、薬剤耐性との関与が報告されているものにFOXC1、MUC16、MUC5B、PRB2がある。これらについては定量的RT-PCRで遺伝子発現変化を確認する。④マイクロアレイで遺伝子発現に差があっても、エクソーム解析で変異が認められないものは検討していない。薬剤耐性に関与する遺伝子もこの中には含まれているので、候補遺伝子として抽出する。エピジェネティックな変化(メチル化、ヒストン脱アセチル化)によって遺伝子発現が変化している可能性があるので、脱メチル化剤やヒストン脱アセチル化酵素阻害剤との併用によりOHP耐性が解除されるかも生じうるので、検討する。⑤耐性メカニズムが分かっても、治療法が無ければ患者の利益は少ない。耐性細胞に関して有効な薬剤が現在大腸癌で使用可能な薬剤で無いかを検討する。現在トリフルオロチミジン、MMC、Olaparibでの薬剤感受性は検討済であるが、更に薬剤を増やしていく。
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Causes of Carryover |
おおむね予定通りの実験を行ったが、臨床サンプルでの遺伝子発現の解析数が少なかったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子発現解析の実験に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)