2014 Fiscal Year Research-status Report
肝免疫、肝再生を視点とした肝類洞機能を重視した人工肝臓補助システムの開発
Project/Area Number |
26462040
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
藤井 秀樹 山梨大学, 総合研究部, 教授 (30181316)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肝類洞 / 人口肝臓補助装置 / 肝マクロファージ / マクロファージ刺激因子 / 血管内皮増殖因子 / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的に関して、その重要な構成組織である肝類洞機能の中心の肝マクロファージを刺激するM-CSFに肝発癌作用があるかは非常に重要である。そこでM-CSF欠損マウスにDENを投与した肝発癌動物モデルを使用し、M-CSFが肝細胞に対して発癌のinitiationあるいはprogressionとして働き得るかを検討した。検討項目は血清M-CSF濃度と肝細胞癌の発生率、肝癌の癌部、非癌部でM-CSFの発現と活性化肝マクロファージの分布、肝細胞のアポトーシス、増殖の程度、そして血管内皮増殖因子の産生の程度とした。 結果は、活性化肝マクロファージが抑制されているマウスの発癌率は極めて低く、同時に血清M-CSF濃度は増加していた。また、活性化肝マクロファージの分布はM-CSF欠損マウスでは、腫瘍内のみに認められたが、通常マウスでは主要部のみならず、正常肝組織にもその浸潤が認められた。また、組織内炎症性サイトカインの発現をm-RNAのレベルで検討したが組織内炎症性サイトカインは、M-CSF欠損マウスでは通常マウスに比較して有意に抑制されていた。さらに、肝細胞のアポトーシスの誘導はM-CSF欠損マウスで通常マウスに比較して有意に強いことが明らかになった。また、血管新生の程度を血管内皮増殖因子の発現を免疫染色で検討したところ、通常マウスはM-CSF欠損マウスに比較して有意に血管新生が促進されていた。活性化肝マクロファージをM-CSFと共培養したところ、M-CSFを添加しなかった場合と比較して血管内皮増殖因子の産生は著しく促進されていた。これらのことから、肝類洞機能の中心である肝マクロファージを刺激する必要性のある本研究の遂行において、その刺激にM-CSFを使用することは、人工肝臓補助システムのもう一つの構成要素である肝細胞の癌化とアポトーシスを誘導する可能性があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のもっとも基礎的部分である、活性化肝マクロファージの肝実質細胞に及ぼす影響を検討することは、最重要課題である。研究代表者のめざす人工肝臓補助装置においては、特に肝実質細胞がアポトーシス、あるいは発癌を誘導することがあってはならない。また、前年度の研究で、使用するマクロファージを活性化状態で維持し制御するためには、granulocyte colony stimulating factor (G-CSF)が極めて重要であることを明らかにした。G-CSFが肝マクロファージの存在下で肝実質細胞にいかなる影響を与えるかを検討することは極めて重要である。このような観点から、肝類洞機能の中心である肝マクロファージを刺激する必要性のある本研究の遂行において、その刺激にM-CSFを使用することは、人工肝臓補助システムのもう一つの構成要素である肝細胞の癌化と、アポトーシスを誘導する可能性があることが明らかになった。このことは、次年度の研究に大きな進展をもたらすものであり、本研究はおおむね順調に進呈しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果により、肝マクロファージをgranulocyte colony-stimulating factor (M-CSF)で刺激する必要性はないことが明らかになり、肝実質細胞機能活性化のための肝マクロファージの制御は必要がないことが判明した。すなわち目指す人工肝臓補助装置は単純に肝実質細胞と肝マクロファージを混合すればよいことが明らかになった。 そこで、今後の研究の推進の方向性として、肝実質細胞を特殊なポリウレタン膜を使用して大量に培養し、それらから昇温時ゲル化型可逆ハイドロゲルを使用しスフェロイドを作成する。肝マクロファージも同様にスフェロイドとして作成する。次いでスフェロイドより臓器特異性が高いと考えられるオルガノイドを、肝実質細胞のスフェロイドからポリウレタン膜を重層させhepatocyte growth factor (HGF)を添加することにより作成する。重層ポリウレタン膜を使用して中空糸型モジュールを作成し、同モジュール内に肝実質細胞オルガノイドを作成する。同時に肝マクロファージの中空糸型モジュールも作成する。最終的にこれらのモジュールを血液循環回路に組み込んだバイオリアクターを作成する。このように肝実質細胞と肝マクロファージの層が影響が明らかになったため、今後の研究の展開はかなり加速されると考えられる。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、試薬、抗体等が定価より安価で購入できたため未使用金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
サイトカイン測定に必要な抗体、スフェロイド及びオルガノイドの作製に必要なポリウレタン膜、ハイドロゲル等を平成26年度の未使用金と合わせて購入予定である。
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