2015 Fiscal Year Research-status Report
肝免疫、肝再生を視点とした肝類洞機能を重視した人工肝臓補助システムの開発
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26462040
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
藤井 秀樹 山梨大学, その他の部局, 理事 (30181316)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肝類洞 / 人工肝臓補助装置 / 肝マクロファージ / interleukin 17A |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、肝マクロファージ(肝φ)がさまざまな環境下でどのような動態を示すかを検討してきた。前年度は肝φを刺激するM-CSFが肝細胞の癌化とアポトーシスを誘導する可能性を明らかにし、この機序に肝φから産生される炎症性サイトカインであるTNF-αが関与していることも示唆された。一方、肝φが産生するTNFα産生がinterleukin 17A(IL-17A)により増強されることを研究代表者はすでに明らかにしている。したがってTNFαの産生を制御するために、IL-17Aを制御する可能性が示唆される。そこで今年度は肝障害にIL-17Aがどのように関与しているかの検討を行った。まず、LPS/GalNを野生型マウスとIL=17Aノックアウトマウスに投与し、急性肝障害モデルを作成した。またノックアウトマウスにrecombinant mouse IL-17Aを投与したマウスも作成した。検索項目は24時間後の生存率、さらには時系列的に、好中球浸潤の程度アポトーシスマーカー、monocyte chemotactic protein 1(MCP1)、IL-17A、high-mobility group box 1 (HMGB1)、soluble intracellular adhesion molecule 1(ICAM1)である。結果としては、IL=17Aノックアウトマウスは野生型のマウスに比較して生存率が高かった。好中球浸潤の程度ならびにアポトーシスの程度は野生型でIL=17Aノックアウトマウスに比較して強かった。さらに、血清ALT、TNF-α、MCP1、IL-17A、HMGB1、ICAM1は、野生型のマウスはIL-17Aノックアウトマウスに比較していずれも高値であった。今年度の結果から、IL=17Aの抑制により肝φの肝細胞障害的な過剰な活性を抑制することが可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者のめざす肝類洞機能を有した人工肝臓補助装置においては、活性化肝マクロファージの肝実質細胞に及ぼす影響を検討することは最重要課題である。特に活性化肝マクロファージが肝実質細胞を障害しアポトーシス、あるいは発癌を誘導することがあってはならない。初年度の研究では使用するマクロファージを活性化状態で維持し制御するためにはgranulocyte colony stimulating factor (G-CSF)が極めて重要であることを明らかにし、さらに前年度はG-CSFが肝マクロファージの存在下で肝細胞の癌化とアポトーシスを誘導する可能性があることを明らかにし、この原因がIL-17Aにより肝マクロファージ~誘導されるTNF-αであることも明らかにした。これらを背景に今年度はIL-17Aが肝障害モデルのいかなる因子に作用するかを検討し、IL17-Aが炎症細胞浸潤を誘発し、この浸潤好中球から種々のサイトカインが誘導され肝障害が誘発されることを明らかにした。この成果は次年度の研究に大きな進展をもたらすものと考えられ、今年度の研究はおおむね順調に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果により、肝マクロファージをgranulocyte colony-stimulating factor (M-CSF)で活性化することが可能ではあるが、過剰な活性化のため肝細胞障害が惹起されることも明らかになった。一方でinterleukin 17-Aを抑制することで肝マクロファージの過剰な活性化を抑制できることも明らかになった。すなわち、研究代表者は肝マクロファージの活性化の程度を自由に操作可能なツールを得たといえる。そこで、今後の研究の推進の方向性として、肝実質細胞を特殊なポリウレタン膜を使用し大量に培養し、それらから昇温時ゲル化型可逆ハイドロゲルを使用しスフェロイドを作成する。肝マクロファージも同様にスフェロイドとして作成する。次いでスフェロイドより臓器特異性が高いと考えられるオルガノイドを、肝実質細胞のスフェロイドからポリウレタン膜を重層させhepatocyte growth factor (HGF)の添加、あるいは抗interleukin 17-A抗体の添加の2種類の回路を有する中空糸型モジュールを作成し、同モジュール内に肝実質細胞オルガノイドを作成する。同時に肝マクロファージの中空糸型モジュールも作成する。最終的にこれらのモジュールを血液循環回路に組み込んだバイオリアクターを作成する。このように肝実質細胞と肝マクロファージの相互の影響が明らかになったため、今後の研究の展開はかなり加速されると考えられる。
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Research Products
(3 results)