2015 Fiscal Year Research-status Report
癌細胞由来エクソソームによる腫瘍血管新生および浸潤転移機構の解明
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26462043
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
和田 浩志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00572554)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永野 浩昭 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10294050)
小林 省吾 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, その他 (30452436)
富丸 慶人 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70528570) [Withdrawn]
江口 英利 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90542118)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / 血管新生 / エクソソーム / マイクロRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞癌の浸潤・転移機構を解明するために,肝癌由来細胞から分泌されるエクソソームの腫瘍増殖および血管新生への影響について検討した。 まず,ヒト肝癌由来細胞(HuH7,PLC/PRF/5,HLE,HepG2)を通常酸素下および低酸素下で培養し,細胞増殖と分泌されるエクソソーム量を比較した。低酸素培養下では,いずれの細胞株も増殖能が低下したが,細胞1個当たりから分泌されるエクソソーム量は,通常酸素下よりも低酸素下で増加した。 次に,HuH7,PLC/PRF/5より抽出したエクソソーム 50μg/mlをヒト血管内皮細胞(HUVECs)に添加したところ,対照群と比較し増殖能が抑制された。HuH7のエクソソームを用いて,Tube formation assayにより1視野あたりのbranch point(分枝細胞数)を算出すると、対照群(13±2.3/view-fields)と比較し、エクソソーム添加により血管新生が促進され、通常酸素下エクソソーム添加(23.5±5.9/view-fields)より,低酸素下エクソソーム(39.5±6.0/view-fields)の方がより血管新生を促進した(p<0.05)。PLC由来のエクソソームも同様に低酸素下由来エクソソームが脈管形成能を促進した。 これらの結果から,肝細胞癌から分泌されるエクソソームは,血管新生能があり,特に低酸素環境下の肝癌細胞より分泌されるエクソソームは血管新生促進作用を有していた。このエクソソームが,門脈血を介して肝内に散布されることにより,血管内皮細胞に作用して転移しやすい環境づくり(前転移ニッチ)に関与している可能性も考えられる。今後,エクソソーム内に含まれる蛋白質,mRNA,miRNAを解析することで,治療標的となりうる分子を同定していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,肝細胞癌由来エクソソームが腫瘍増殖と血管新生に影響することを証明した。さらに,通常酸素下より低酸素下に分泌されたエクソソームは,血管新生能が強いことが示唆されている。この通常酸素下と低酸素下のエクソソームの違いを検証することで,血管新生に関与する物質を同定することが可能であると考えられる。また,すでに,エクソソーム内に含有されるmicroRNAについての検討を開始しているため,概ね順調に進展していると考えます。
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Strategy for Future Research Activity |
低酸素下で培養した肝癌細胞からの抽出したエクソソームは,通常酸素下で培養した肝癌細胞からのエクソソームと比較して血管新生促進作用が強いことが考えられた。そこで,低酸素培養下および通常培養下で回収したエクソソームをマイクロRNAの網羅的発現解析を行うことで,血管新生能を有するマイクロRNAを同定する。また,血管新生に関与する代表的なマイクロRNAとして,miR-21,miR-26a,miR-122,miR-146a,miR-155,miR-182について,エクソソーム内での発現変化を検討する。標的となるマイクロRNAを同定したのちに,anti-miRを使用して肝癌細胞株での発現を抑制し,血管新生能の変化を検討するとともに,マイクロRNAの標的分子の強制発現およびノックダウンを行い,その標的分子の働きを解明する。癌細胞由来エクソソームが血管新生および前転移ニッチ形成を促進していることが証明されれば,エクソソーム分泌を阻害する薬剤を治療に応用することが可能となる。また,このエクソソーム内の血管新生に関与するマイクロRNAを同定することで,浸潤・転移機構を解明でき,分子標的治療の足がかりとなると期待している。
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Causes of Carryover |
肝細胞癌由来エクソソームが腫瘍増殖と血管新生に影響することを証明するための物品を購入したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
癌細胞由来エクソソームが血管新生および前転移ニッチ形成を促進していることが証明するために必要な物品を購入する。
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Research Products
(3 results)