2014 Fiscal Year Research-status Report
臨床病理学的および分子生物学的検討による肝内胆管癌化学発癌メカニズムの解明
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26462048
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
久保 正二 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80221224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹村 茂一 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00322363)
中沼 安二 静岡県立静岡がんセンター(研究所), 病理診断科, 参与 (10115256)
西尾 和人 近畿大学, 医学部, 教授 (10208134)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肝内胆管癌 / 職業性胆管癌 / 1,2-ジクロロプロパン / ジクロロメタン / 前癌病変 / DNA傷害 |
Outline of Annual Research Achievements |
大阪の印刷事業場S社の職業性胆管癌17例および全国での職業性胆管癌9例の臨床像、臨床検査値、画像診断所見、切除標本における病理学的所見と検討した。その結果、いずれも比較的若年者であり、男性であった。胆管癌診断の数年前よりγ-GTP高値などの肝機能異常が見られる症例が多かった。胆管癌診断時には全例でγ-GTPが異常高値であり、CEAあるいはCA19-9異常高値例が多くみられた。画像診断上、肝内腫瘤像、胆管内腫瘤像、腫瘍による胆管閉塞とその末梢胆管の拡張像に加えて、主腫瘍による胆管狭窄を伴わない限局性肝内胆管拡張像が特徴的であった。主腫瘍は腫瘤形成型肝内胆管癌、胆管内発育型肝内胆管癌や乳頭型肝外胆管癌であった。また、広範囲の胆管に前癌病変であるbiliary intraepithelial neoplasia (BilIN)や intraductal papillary neoplasm of the bile duct (IPNB)がみられ、さらに慢性胆管傷害像やDNA傷害を示すγ―H2AH陽性胆管上皮がみられた。したがって、本病態は広範囲のDNA傷害を伴う胆管傷害、BilINやIPNB病変を経て浸潤性胆管癌に至る多段階発育を示すと考えられた。また、診断時に進行癌の状態であった症例では外科的切除が困難であったが、手術施行例の成績は、通常の胆管癌切除例の成績と同等であった。なお、広範囲の発がんポテンシャルを有するため、臨床的に原発と他部位の発癌と考えられる症例がみられた。 分子生物学的検討については、現在、職業性胆管癌症例の癌部、前癌病変、正常部のDNAを抽出し、Comprehensive Cancer Panelによる遺伝子解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は職業性胆管癌症例の臨床像、臨床検査値、画像診断、臨床経過と治療と成績について検討する予定であったが、大阪の印刷事業場S社の職業性胆管癌17例および全国での職業性胆管癌症例の多くで、その検討が可能であった。すなわち、比較的若年、γ-GTP高値、主腫瘍による胆管狭窄を伴わない限局性肝内胆管拡張像などを明らかにした。また、切除例における切除標本の検討、特に切除標本全体の詳細な検討が可能であった3例では、全割面の検討から、広範囲の胆管に前癌病変であるbiliary intraepithelial neoplasia (BilIN)や intraductal papillary neoplasm of the bile duct (IPNB)がみられ、さらに慢性胆管傷害像やDNA傷害を示すγ―H2AH陽性胆管上皮がみられた。したがって、本病態は広範囲のDNA傷害を伴う胆管傷害、BilINやIPNB病変を経て浸潤性胆管癌に至る進展過程を明らかにした。したがって、概ね当初の計画どおり研究は進んでいる
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Strategy for Future Research Activity |
全国における職業性胆管癌症例の臨床像、臨床検査値、画像診断、臨床経過と治療と成績について、さらに症例を追加し、検討する。さらに、通常の胆管癌症例のそれらとの比較を行い、職業性胆管癌の特徴をより明確にする。 分子生物学的検討については、職業性胆管癌症例の癌部、前癌病変、正常部のDNAを抽出し、Comprehensive Cancer Panelによる遺伝子解析を行い、職業性胆管癌における遺伝子変異等の特徴を明らかにする。 したがって、当初の計画通り研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
実験計画にある免疫組織学的検討における、検討条件決定のためいくつかモノクローナル抗体を利用し、検討条件が確認された。これらの結果をもとに、次年度に集中的に免疫組織学的検討を行う予定とした。このため、今年度の使用予定額を次年度の使用額に加えるようにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
印刷労働者胆管癌症例の切除標本や生検標本などを用い、免疫組織学的および分子病理学的を行う。その際、DNA障害、酸化ストレス、細胞周期関連分子、細胞外マトリックス分解酵素、細胞接着因子、癌関連遺伝子や癌抑制遺伝子の発現を検討する。すなわち、標的とするのは、γ-H2AX、CK7, CK19, p21, p53, cyclin D1, E-cadherin, MUC2, MUC5AC, HSP27, HSP70などであり、さらに塩素系有機溶剤の代謝に関連するGST-T1などの分布等を検討し、胆管癌化学発癌メカニズムでのGST-T1の意義を検討する。これらの結果を、肝内結石や肝炎ウィルスに起因する肝内胆管癌症例や通常の肝内胆管癌症例の結果と比較、検討し、本事例での肝内胆管癌の病理学的および分子病理学的所見の特徴を明らかにする。 これらの研究に、本年度文と次年度文の助成金を使用する予定である。
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