2015 Fiscal Year Research-status Report
キマーゼ阻害薬・MMP阻害薬を用いた肝類洞閉塞症候の予防および治療効果の検討
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26462049
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
米田 浩二 大阪医科大学, 医学部, その他 (70531896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高井 真司 大阪医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80288703)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | キマーゼ / 肝類洞閉塞症候 / マトリックスメタロプロテアーゼ / モノクロタリン / 酸化ストレス / 肝細胞壊死 / 肥満細胞 / TNF-α |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度、マウスにモノクロタリンの200 mg/kgを腹腔内に投与し、モノクロタリン投与後の血液および肝臓組織を継時的に解析し、肝類洞閉塞症候モデルがマウスで確立できた。平成27年度は、本モデルの肝障害に対するキマーゼ阻害薬の影響を評価し、更に肝臓組織中で著増するキマーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9およびTumor necrosis factor (TNF)-αに対する影響も解析した。 モノクロタリン投与後48時間の時点で約20%のマウスが死亡し、120時間の時点では約70%が死亡したため、モノクロタリン投与後48時間の時点の肝障害におけるキマーゼ阻害薬の各パラメーターに対する影響を評価した。モノクロタリン投与後48時間において、血液中のアルブミンは有意に減少し、AST、ALTおよび総ビリルビンはすべて有意に増加したが、キマーゼ阻害薬投与群ではそれらの変化がすべて減弱されていた。肝臓組織抽出液中のキマーゼ活性およびMMP-9活性は、モノクロタリン投与後48時間の時点で有意に高値を示したが両活性共にキマーゼ阻害薬にて有意に低下した。また、肝臓組織抽出液中のTNF-αレベルやキマーゼ、MMP-9、TNF-αの遺伝子発現もモノクロタリン投与後48時間の時点で著明に増加したが、キマーゼ阻害薬投与群で有意に低下した。肝臓組織切片の解析においてもモノクロタリン投与後48時間の時点で認められた肝細胞の壊死と炎症細胞の集積がキマーゼ阻害薬投与群にて明らかに減少した。 これらの結果より、マウスにモノクロタリンを200 mg/kgを腹腔内投与して惹起する肝類洞閉塞症候に対してキマーゼ阻害薬は、モデル作製後に著増するMMP-9活性およびTNF-αの産生量を減少させることを介して肝障害を予防する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度に確立したマウスの肝類洞閉塞症候モデルを用いて肝障害に対するキマーゼ阻害薬による影響の解析を平成27年度の目標とした。キマーゼ阻害薬(TY-51469)は、マウスにモノクロタリンの200 mg/kgを腹腔内に投与する直前に尾静脈より投与した。キマーゼ阻害薬の使用濃度として0.1、0.3、1、3 、10 mg/kgを検討し、48時間後に肝臓組織抽出液で有意に増加するキマーゼ活性を低下させるには少なくとも1 mg/kg以上の濃度が必要であったので、1 mg/kgのキマーゼ阻害薬を用いてモノクロタリン誘発肝類洞閉塞症候モデルの肝障害に対する影響を解析した。また、解析時期としては、モノクロタリン投与48時間の時点とした。その理由として、血液中のアルブミンの減少と総ビリルビンとASTとALTが増加し、明らかな肝組織の壊死増が確認できていたからである。キマーゼ阻害薬は、血液中のアルブミンの減少と総ビリルビンとASTとALTが増加を抑制した。また、肝臓組織抽出液でMMP-9やTNF-αも48時間後に有意に増加してきたが、この上昇もキマーゼ阻害薬によって抑制されることが確認できた。肝臓組織切片の解析を用いた肝細胞壊死面積はヘマトキシリン-エオジン染色にて解析し、48時間の時点で認めた明確な肝細胞壊死面積がキマーゼ阻害薬にて減少された。これらのことより、キマーゼ阻害薬は、マウスモノクロタリン誘発肝類洞閉塞症候モデルにおける肝障害を予防できる可能性が示唆された。 今年度の目標として、キマーゼ阻害薬による肝障害予防効果とその機序の解明に加えて生存率に対する影響も確認する予定であったが、生存率に対する影響の検討は未実施に終わった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度にマウスのモノクロタリン誘発肝類洞閉塞症候モデルを用いてキマーゼ阻害薬による肝障害における影響を明確できたが、生存率に対する影響を評価する予定である。また、キマーゼ阻害薬に加えてMMP阻害薬についても同様に薬効を評価する予定である。 本モノクロタリン誘発肝類洞閉塞症候モデルにおける生存率に対するキマーゼ阻害薬の影響は、モノクロタリンを投与する前よりキマーゼ阻害薬を投与し、生存したマウスを用いて血液および肝臓組織の解析を行う予定である。モノクロタリン投与後120時間の時点で非投与の場合、生存率が約30%になることより、生存率に対するキマーゼ阻害薬の影響は、この時点で評価する予定である。血中の測定項目は、AST活性とALT活性、TNF-αとする。そして、肝臓組織抽出液を用いて、キマーゼ活性を測定すると共にMMP-9、TNF-αや炎症の指標としてインターロイキン-1βとインターロイキン-6も測定する予定である。肝臓組織切片を用いてヘマトキシリン-エオジン染色にて肝臓壊死面積を定量し、炎症細胞の浸潤程度も評価する。また、トルイジンブルー染色にて肥満細胞数も測定する予定である。 本モノクロタリン誘発肝類洞閉塞症候モデルを用いて、モノクロタリン投与後48時間における肝障害に対するMMP阻害薬の予防効果を解析し、モノクロタリン投与後120時間における生存率に対するMMP阻害薬の影響も解析する予定である。これらの実験は、キマーゼ阻害薬による本モノクロタリン誘発肝類洞閉塞症候モデルにおける肝障害予防効果の機序を明確にするのに有用と考えられる。解析項目は、キマーゼ阻害薬を用いた場合と同様のパラメーターを解析する予定である。
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Causes of Carryover |
モノクロタリンを投与してマウスの肝類洞閉塞症候モデルを作製し、肝臓組織でのキマーゼ活性に対するキマーゼ阻害薬の効果を検討するため、使用するキマーゼ阻害薬の濃度として、0.1、0.3、1、3 、10 mg/kgを用いた。当初、正常ラットを用いてキマーゼ阻害薬投与後の肝臓組織中のキマーゼ活性の測定を行ったが、10 mg/kgでも有意な抑制効果を認めなかった。一方、モノクロタリン投与後48時間後にキマーゼ活性が著明に増加するが、その時点でこれらの薬物によるキマーゼ阻害活性を評価したら1 mg/kg以上の濃度で肝臓のキマーゼ活性の上昇を抑制できることが確認できた。この使用キマーゼ阻害薬の濃度を決定するのに時間とマウスを要し、そのため、生存率に対する影響が確認できず、結果として使用マウス数の削減および解析が遅延し、使用費用が減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用分として、マウス肝類洞閉塞症候モデルのモノクロタリン投与後120時間における生存率に対するキマーゼ阻害薬の効果を評価し、生存したマウスの血液および肝臓の解析を行う予定である。これらの解析は前年度に実施予定であったが、予想以上にキマーゼ阻害薬の使用濃度を決定するのに時間を要したため、その解析を今年度に行う費用が発生した。 当初の予定では、キマーゼはMMP-9の活性化に深く関与することより、キマーゼ阻害薬が本マウス肝類洞閉塞症候モデルの肝障害に有効であった場合、その機序の解明のため、MMP阻害薬を用いた同様の実験を行う予定であった。これらの実験も一部は前年度に行う予定を立てていたが、それらの実験もすべて今年度に行う予定にしており、それらの予算が計上されている。
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