2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26462230
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
若林 良明 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 非常勤講師 (00431916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 光裕 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (90451971)
早乙女 進一 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (20401391)
大川 淳 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30251507)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経科学 / 再生医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、末梢神経損傷モデルを使用し、神経筋接合部(NMJ)の変性保護に注目し、神経損傷における神経再生ならびに拘縮予防の新規治療法の開発を目指すものである。 昨年度の結果から組織学的に神経線維(NF)の変性が腓骨神経切断1週間で出現することと3週経過してもNMJをラベルするボツリヌス毒素(BTX)陽性数が維持されていたことが明らかとなった。今年度は、昨年同様に腓骨神経切断モデルの作製と切断後の前脛骨筋(TA)内NMJの評価および運動機能の変化を超短期(損傷1日、3日)と長期(28日、42日)に観察して解析した。昨年同様、シュワン細胞のマーカーであるS100でも免疫染色を行い、BTX陽性と近接するNFおよびS100陽性数を定量した。BTX陽性数は、正常側と損傷側で比較すると損傷42日目まで陽性数が維持されていた。一方、NF数は、損傷1日目から減少し、3日以降、陽性数の観察はできなかった。しかし42日目ではわずかに陽性線維がBTX陽性部近傍で確認できたことから切断断端からの再生が得られたものと推測された。S100は、損傷1週で観察されたものの2週以降はBTXと近接する部位が観察されなくなり比較的早期に陽性細胞が消失していくことが明らかとなった。NFの変性に注目してThy1-YFPトランスジェニックマウスを利用した。同マウス腓骨神経切断直後に各断端を1針で縫合する神経再建モデルを作製した。縫合3日後のTAを観察するとYFP陽性線維が観察されNMJと近接する線維も確認できた。可及的であっても神経断端同志の接合が神経変性を予防するために必要であることを示唆する所見であった。一方、神経筋接合部は神経切断後も長期に残存しており神経損傷後慢性期であっても神経再建による軸索再生で運動機能の獲得が見込まれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、腓骨神経切断後の神経線維とシュワン細胞、神経筋接合部の変性経過を経時的に明らかにすることができた。また、数個の個体であるがYFPマウスを用いた神経再建実験が実施でき、神経変性が早期に出現することと神経断端の接着が重要であることが組織学的に明らかとなった。また、腓骨神経切断から6週が経過しても標的筋の神経筋接合部が残存していたことから、筋萎縮が強くても神経再建方法を工夫すれば運動機能獲得が得られる可能性が明らかとなった。よって当初の計画通り損傷慢性期において切断端に他のマウスから採取した遊離腓骨神経を用いて架橋縫合を行う。一方、萎縮筋に対する分子生物学的評価に関してNGF、BDNF、GDNFといった神経栄養因子の発現が予想より低くプライマーの設計等再考を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、当初の計画通り損傷慢性期において遊離腓骨神経によって神経再建を行い、標的筋にL型Caチャネル作用薬やEGFR阻害薬の投与の有無によって運動機能の促進が図れるか検討を行う予定である。Thy1-YFPトランスジェニックマウスの飼育を継続して末梢神経損傷後のNMJを中心にプレ・ポストシナプス、シュワン細胞の活性に注目して解析を継続していく予定である。運動機能評価については、足趾の動きに注目したsciatic nerve function index (SFI)とperoneal nerve function index (PFI)の算出を行い、知覚テストや両足圧力差痛覚測定機器を用いた荷重測定を併用することで多角的に神経機能を評価する予定である。昨年同様に、萎縮前脛骨筋に対する電気生理学的評価は未施行となっている。神経再支配と筋張力について経時的に明らかにし、今後の治療評価項目として確立したい。
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Causes of Carryover |
昨年度に購入したThy1-YFPトランスジェニックマウスを飼育しているがホモ個体を得るのが難しく、今年度内で一定の実験用個体を得ることが困難であった。そのため使用予定の抗体や分子生物学試薬の消耗品が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度も昨年と同様にマウスを使用した動物実験が中心となる。手術用マウスについては、年間で予備実験や予期せぬ死亡(全体の約10%程度)を含めると100匹程度必要となる。動物実験施設におけるマウス購入および飼育費用がかかる。組織染色には、HE染色などの一般的な染色液のほかに神経および筋細胞に特異的に反応する抗体が解析に必要であり、同部位を可視化するには蛍光標識付きの二次抗体が必要である。遺伝子発現など分子生物学的解析には試薬が必要であり、適宜購入が必要である。昨年度まとめたデータについては積極的に学会発表を行い、研究計画を遂行することでデータを追加し論文として成果をまとめる。
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