2015 Fiscal Year Research-status Report
材料表面マイクロ形状による骨関連細胞の分化と機能の制御
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26462263
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
名井 陽 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (10263261)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 美奈 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (50457008)
吉川 秀樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60191558)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイオマテリアル / 骨芽細胞 / 破骨細胞 / 微細表面構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.quartz及びpolystyreneプレートを用いた細胞培養実験 細胞培養実験は、polystyrene(平面構造)、quarts(平面構造;control)、pillar構造を有するquartz(pillar)の3種類の培養皿を用いて行った。①マウス頭蓋骨由来骨芽細胞用細胞MC3T3細胞を骨分化誘導培地で培養し、骨分化マーカー遺伝子の発現をqPCRで解析したところ、ALP,runx2,collagenの発現に有意差は認められなかったものの、pillar上で培養した場合、controlと比較してOsteocalcinの発現量が有意に上昇している事を確認した。Osteocalcinは骨芽細胞の分化過程において比較的後期に発現するマーカーであり、pillar構造が骨分化を促進する可能性が示唆された。②マウス脾細胞及び骨髄細胞からM-csf/Ranklを用いて破骨細胞の単培養を行うと、pillar上ではcontrolやpolystyrene上と比較して、破骨細胞の形態は比較的小さかった。そこで成熟破骨細胞からRNAを回収し、qPCRで破骨細胞のマーカー遺伝子(Trap,c-Fos,Nfatc1,Ctsk)の発現を解析したところ、quartzとpolystyreneの材質の違いによる有意差は確認できたが、培養表面構造の違いによる有意差は認められなかった。 2.微細加工技術を用いた培養皿の作製 プラズマエッチングを利用した金型による微細加工ポリスチレンプレートの作成を行った。プレートの作成は大阪大学工学部に依頼し、凹凸の形状を有するピラー付き培養皿の作成に成功した。当初、培養皿に直接金型をプレスする事でピラー付培養皿の作成を試みたが、隙間により熱と圧力が培養皿部分へうまく伝導せず、型通りのプレスができなかった。このため条件検討を重ね、別の手法を用いることにより、pillar/poreの凹凸構造において、中心部および端部で十分な高さを有する培養皿の作成が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は主に、プラズマエッチングを利用した金型による微細加工技術を用いた培養皿の作製に時間を要した。プレートの作成手順において、当初予定していた方法ではpillar/poreの凹凸微細加工の作成が困難であり、条件検討に時間を要した。培養実験にはこの微細加工培養皿を用いるため、培養表面微細構造が骨芽細胞や破骨細胞などの骨関連細胞の分化能や発現因子に与える影響を検討する細胞培養実験の進捗状況はやや遅れている。H27年度内に微細加工皿の作製方法が確立できたため、今後は解析目的に応じたサイズの培養皿を作製したうえで、pillar構造を有するquartzを用いた培養実験と同様の実験を新規作成培養皿で行い、qPCRを用いた遺伝子解析およびタンパク質レベルでの解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は、H27年度に得られたプラズマエッチングによる微細加工技術を用い、pillar/pore構造を有する実験目的に応じたサイズの培養皿を作成する。また、quartz、polystyreneプレートを用いて現在までに行った、骨芽細胞破骨細胞を用いた同様の培養実験をpillar/pore培養皿上で行い、骨関連細胞の増殖能、分化能及び石灰化能を定量化し、骨代謝関連因子の発現について検討する。また、H26年度の結果から、1α,25(OH)2D3存在下で培養した骨髄由来ストローマ細胞ST2細胞のRankl/Opgの発現がpillar上の培養において有意に低下することを確認したことから、ST2細胞におけるRankl発現の細胞内シグナル経路について、タンパクレベルでの解析を行う。これまで、細胞培養表面構造が細胞の挙動に与える影響について、骨芽細胞に焦点をあてた報告がみられるものの、破骨細胞について検討を行った報告は見られない。骨代謝には骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収のバランスが必須であり、本実験では骨芽細胞に加え、微細構造における破骨細胞の挙動についても調べることにより、培養表面構造の違いが骨代謝に与える影響をトータルで解析したい。 また、表面微細加工を行った足場材料とラット間葉系幹細胞と組み合わせた皮下異所性骨形成モデルで、骨再生のスキャフォールドとしての性能を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は主に、プラズマエッチング技術を用いた微細加工技術による凹凸ピラー構造を有する微細加工培養皿の作製を行った。細胞培養、分子生物学的解析や動物モデルへの移植などの検討は次年度に行う予定であり、当初の使用予定額と多少の相違が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、凹凸ピラー構造を有する微細加工培養皿で細胞培養を行い、培養表面の微細構造が細胞の挙動に与える影響についてRNA、タンパク質レベルで検討を行う予定であり、分子生物学及び生化学関連試薬の必要な消耗品、動物を購入する。また、学会発表の際の参加費を要する。
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