2014 Fiscal Year Research-status Report
マウスモデルを用いた変形性関節症の発症の分子メカニズムの解析
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26462287
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
神野 哲也 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (90343152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 邦和 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (20323694)
宗田 大 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50190864)
関矢 一郎 東京医科歯科大学, 再生医療研究センター, 教授 (10345291)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 変性性関節症 / メカニカルストレス / 卵巣摘除 / 遺伝的背景 |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性関節症(Osteoarthritis, OA)は、慢性の炎症を伴う関節疾患で、関節軟骨の退行性変性および、骨軟骨の増殖性変化を特徴としている。加齢、性差、人種等の遺伝的背景、生活習慣等の複雑な要因が関与する多因子疾患であるため、その発症並びに病態の進行の分子メカニズムの解析には、ヒトの変形性関節症の特徴を再現できるマウスモデルの構築が必須であると考えている。この考えから、私たちは平成23年度から25年度までの基盤研究において、膝組織に対する非侵襲のマウスOAモデルの確立とその再現性の検証を行ってきた。このモデルは、卵巣摘除(OVX)を行ったマウスに対して週5日、速度20m/min、100分のトレッドミルによる強制走行を6週間行うものである。Balb/cマウスを用いた実験では、OVX(OVX+CAGE)並びに強制走行(SHAM+RUN)は、それぞれ単独では、関節軟骨に対して重篤な変化は与えなかったが、OVXと強制走行を組み合わせた群(OVX+RUN)においては、コントロール(SHAM+CAGE)と比較して顕著な軟骨の退行変性が観察された。OVX+RUN群においては、他の群に比較して重篤な滑膜の肥厚並びに滑膜マクロファージ(F4/80)の浸潤が観察された。以上の結果は、OVX、強制走行による過度の力学的負荷は、相乗的に膝関節に対して退行変性を誘導するが、その理由の一つとして関節炎症の重篤化が考えられた。本研究は、その詳細な分子メカニズムの解析を行うことである。当該年度においては、OA発症における遺伝的背景の差異を検討するため、骨量の異なる2種類のマウス系統(C57Bl/6及びC3H/HeJ)において同様の検討を行い、Balb/cの結果との対比を行った。その結果、C57系統においては、OVX+RUN軍においても重篤な軟骨変性と滑膜炎症は観察されず、本実験系が、OA発症における遺伝的背景解析の実験モデルとして有用である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本実験系は、6週間に及ぶトレッドミル走行試験を行う必要があるため、実験期間中におけるマウスの脱落を抑止する工夫が必要である。また、実験の開始からデータ取得(組織学的解析の完了)までに長期の期間を必要とすることも考慮して研究計画を実行していくことを常に考えるべきと考えている。当該年度において、2系統のマウスを用いた実験を行い、現在組織学的解析を行っている最中である。次年度中にはこの実験結果の解析を終了できると考えており、計画よりは少々遅れているが、概ね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Balb/cマウスにおいて確立した非侵襲の変形性関節症マウスモデルを用いて、異なる表現型を有するsyngenicマウス(C57Bl/6、C3H/HeJ、DBA/2)を用いた、関節軟骨の変性を制御する遺伝的背景の検索を継続して行う。 本研究項目では、骨量や炎症性反応の程度が異なることが明らかとなっている種々のsyngenicマウスの系統を用いて、OVXと強制走行を行い、関節軟骨の変性の重症度の比較を行う。現在までに10系統以上のSyngenicマウスのラインが樹立され、基本的な表現型の解析が行われている。それによると、平均的な骨密度はC57Bl/6JとC3H/HeJマウスでは約1.5倍異なっていることが示されている。また、平常時の単核球、リンパ球数は、DBA/2JマウスがC57Bl/6Jに比較して2倍以上多いことが示されている。これら遺伝的背景の違いに伴うマウス表現型の差異がOVXと強制走行後の軟骨変性に対する影響を検討するため、C57Bl/6J、C3H/HeJ、DBA/2Jマウスの系統間での比較を行う(各群8匹)。
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Causes of Carryover |
マウス系統の購入費以外の必要経費に関して、組織学的解析が当該年度に終了できず、次年度に繰越となっていることで、差額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
差額分は次年度において進めている組織学的解析の試薬購入費として使用予定である。
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