2014 Fiscal Year Research-status Report
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26462295
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
北川 教弘 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (30294284)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 骨・軟骨代謝学 / 破骨細胞 / 骨吸収 / NFATc1 / ITAM |
Outline of Annual Research Achievements |
Siglec-15は成熟破骨細胞の形成に必須なレクチンであり、細胞外領域のV-setドメインを介してシアル酸化糖鎖を、また膜貫通領域リジン残基(K272)を介してITAMを細胞質内領域に有するDAP12と結合する。またSiglec-15の細胞質内領域に微小管関連タンパク質SBP50(仮称)が結合することをこれまでに見出していた。 本年度は、1)Siglec-15の細胞質内領域にSBP50が結合すること、2)SBP50の結合領域はSiglec-15の機能に必須であること、を見出した。本知見に基づきK272A変異を導入したSiglec-15の細胞外領域から細胞質内機能領域と、DAP12のITAM下流のアミノ酸配列を融合させたSSDKA317キメラタンパク質を設計し、本分子が3)DAP12との結合を介さずにSiglec-15の機能を代償し得ること、4)SSDKA317の活性にはV-setドメインとともに自身のITAMが必須であること、が分かった。以上の知見は、少なくともin vitro分化誘導系では、Siglec-15が破骨細胞におけるDAP12会合受容体であることを証明するものである。 Siglec-15はNeu5AcがGalNAcとα(2,6)結合した糖鎖構造を認識するが、破骨細胞分化過程において5)本糖転移反応を司るST6GALNACX(仮称)が恒常的に発現すること、をタンパク質レベルで明らかにした。破骨細胞の前駆細胞であるマクロファージに野生型Siglec-15を強制発現するとV-setドメイン依存的に破骨細胞分化が抑制されること、またSiglec-15が成熟破骨細胞形成に必須であることから、ST6GALNACXの発現プロフィールは理にかなったものである。そこで破骨細胞におけるSTXGALNACXの機能を解析するために、6)発現ベクターならびにノックダウンベクターを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成熟破骨細胞では微小管を構成するα-Tubulinのアセチル化が亢進し、微小管構造が安定化することが報告されている。Siglec-15がDAP12のITAMを介してシグナルを伝達すること、またSBP50と結合することから、Siglec-15がα-Tubulinのアセチル化に影響を与えることが考えられた。しかし既報とは異なり、骨髄マクロファージならびにマウスマクロファージ細胞株RAW264を前駆細胞として用いた誘導系において破骨細胞分化に伴うα-Tubulinのアセチル化の亢進が認められず、Siglec-15がα-Tubulinのアセチル化に影響するのかについては検証することが出来なかった。 また細胞膜画分におけるSiglec-15に結合するタンパク質の探索を計画していたが、現在細胞膜画分の精製条件の検討を行っており探索をなし得ていない。これに対して本年度はSiglec-15-Fc融合タンパク質の精製に成功しており、本タンパク質を用いてSiglec-15リガンドの同定をグリコブロットにより検討しうると期待される。さらにSSDKA317を破骨細胞特異的に発現する遺伝子組み換えマウスの作成は次年度の予定としていたが、本年度の成果に基づいて本発現単位を既に設計しており、実際に構築を行っている点では予定より先行している。以上を踏まえて、本年度の研究はおおむね順調に進行しえたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.SSDKA317キメラタンパク質を破骨細胞特異的プロモーター制御下で発現するトランスジェニックマウスを作成する。本マウスに必要なベクターは前年度に設計しており、現在構築を試みている。しかし申請当時には想定していなかった動物実験施設改修工事が本年度に組み込まれたため、本計画は予定より遅れる可能性が考えられる。 2.破骨細胞分化過程におけるST6GAKNACXの機能解析を行う。前年度に構築した過剰発現ベクターやRNA干渉法による発現抑制ベクターを破骨細胞に導入し、ST6GALNACXの意義を検討する。本計画においてST6GALNACXが破骨細胞の分化や機能に必要であることが示された場合、遺伝子欠損マウスの作成に取り組む。 3.Siglec-15の認識するシアル酸化糖鎖修飾分子の探索を試みる。前年度に作成したSiglec-15-Fc融合タンパク質を用いたグリコブロット法で候補タンパク質の分子を検討するとともに、前年度に条件検討した破骨細胞膜画分の調製条件に基づき破骨細胞に強制発現させたタグ付きSiglec-15をアフィニティー精製により精製する。見出された候補タンパク質は質量分析法により同定し、免疫沈降法によりSiglec-15との会合能を検証するとともにRNA干渉法によりそれらタンパク質の機能を検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は質量分析を依頼しなかったためにそれに関わる費用が発生しなかった。また研究代表者の所属機関の動物実験施設使用費が平成27年度から大幅に値上げとなったことから、来年度以降の実験計画に支障をきたす可能性が生じた。そこで消耗品その他の出費を抑え、次年度以降の施設使用費とするために未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度未使用額は前年度に実施し得なかった質量分析を次年度に計画しているため、これに使用する。また動物実験施設使用費の値上げに伴う予想外の飼育費の出費に当てる。
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Research Products
(1 results)