2015 Fiscal Year Research-status Report
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26462295
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
北川 教弘 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (30294284)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 骨・軟骨代謝学 / 破骨細胞 / 骨吸収 / NFATc1 / ITAM |
Outline of Annual Research Achievements |
シアル酸化糖鎖を認識するレクチンSiglec-15は成熟破骨細胞の形成に必須であり、その機能にはDAP12との会合に必須なリジン残基および糖鎖認識に必須なV-setイミノグロブリン様ドメインを必要とする。本研究では1) Siglec-15が認識する糖鎖の生合成に関わる糖転移酵素や被修飾分子の同定、2) Siglec-15細胞質内領域の機能解明、および3) in vivoにおけるSiglec-15-DAP12シグナル伝達系の意義の検証、を通じて、破骨細胞におけるDAP12シグナル経路の制御機構に迫ることを目的とする。 本年度は以下の2点の成果を得た。I) これまでの研究からDAP12との会合に必須なリジン残基をアラニンに置換したSiglec-15の細胞外領域から細胞質内領域と、DAP12のITAM以下C末端配列を融合したキメラタンパク質SSDKA317は、DAP12との会合を介さず1分子でSiglec-15-DAP12複合体を模倣することをin vitro分化誘導系を用いた実験により見出している。本年度はSSDKA317を破骨細胞特異的に発現するベクターの作成に成功した。本ベクターはトランスジェニックマウスの作成に使用する予定である。II) 破骨細胞で恒常的に発現する糖転移酵素ST6GALNACXの発現抑制をRNA干渉法により行った結果、II-1) 発現レベルを30%程度まで抑制し得たこと、II-2) 発現抑制したマクロファージからは対照細胞に比較して形成される多核破骨細胞数が有意に減少したこと、を見出した。本結果はST6GALNACXが多核破骨細胞形成に関わることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は計画申請当時には予定されていなかった本学動物実験施設の改修工事が行われ、仮実験施設での一部の使用のみが可能であった。このため飼育頭数の制限や飼育環境の変化が避けられなかったため、本年度に予定していた1) 破骨細胞特異的にSSDKA317を発現するトランスジェニックマウスの樹立、2) Siglec-15遺伝子欠損マウスの骨形態計測などは実験を見送らざるを得ず、当初の実験計画に比べて遂行の遅延が生じた。トランスジェニックマウス作成用のベクターは設計済みであり、動物実験施設が再稼動する次年度初期から直ちに本実験を行う予定である。 本年度の成果から多核破骨細胞形成にST6GALNACXが関わることが示されたが、RNA干渉による発現抑制効率が70%程度であり完全にもしくはより効率よく発現抑制した場合では顕著な影響が観察される可能性がある。このためゲノム編集技術によりST6GALNACX遺伝子を欠損した細胞を用いることで多核破骨細胞形成におけるST6GALNACXの意義をさらに検証する必要がある。 Siglec-15の認識するシアル酸化糖鎖修飾を受けた分子の探索を本年度は行えていない。当初の計画では野生型Siglec-15を用いる予定であったが、1) SSDKA317が一分子でSiglec-15-DAP12複合体を模倣すること2) SDKA317は野生型Siglec-15に比較して高い発現を示すこと、からHis6タグおよびFLAGタグをタンデムに付加したSSDKA317をbaitに用いることでより効率よく会合分子の探索が可能となると考えられた。そこで実験計画を修正し本年度に発現するベクターを構築し、次年度に本ベクターを用いた分子の探索を行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 本年度に作成したSSDKA317を破骨細胞特異的に発現するベクターを利用し、本学動物実験施設の受託サービスを用いてC57BL/6系統トランスジェニックマウスの作成を試みる。得られたファウンダーマウスの遺伝子型を決定するとともに、ファウンダーマウスと野生型マウスを交配し挿入した発現カセットが次世代に遺伝することを確認する。得られたF1マウスから骨髄細胞を採取し、in vitro分化誘導系を用いてSSDKA317がSiglec-15と同等の時期に発現することをウェスタンブロット法にて検証するとともに、各系統におけるSSDKA317の発現レベルを比較する。得られた系統を凍結保存するとともに、軽度の大理石骨病を呈するSiglec-15遺伝子欠損マウスと交配し、SSDKA317の発現がSiglec-15遺伝子欠損マウスの表現型を回復しうるのかについて骨形態計測等により検討する。 2. 破骨前駆細胞株RAW264にてCRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集技術によりST6GALNACX遺伝子欠損細胞株を樹立する。樹立した細胞をin vitroで破骨細胞に分化誘導し、ST6GALNACX遺伝子の機能を検討する。 3. 本年度に作成したタグ付加したSSDKA317をSiglec-15遺伝子欠損マウス由来破骨細胞に強制発現し、細胞膜上に発現するSSDKA317をアフィニティー精製する。必要であれば膜不透過型架橋剤DTSSPの使用も検討する。見出された候補タンパク質は質量分析により同定し、Siglec-15と共に破骨細胞で発現させたのちに免疫沈降法により会合能を検証する。会合能が認められたタンパク質についてRNA干渉法もしくはゲノム編集技術によりそれらの機能を検討する。
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Causes of Carryover |
本研究申請当時は予想していなかったことであるが、申請者が使用する動物実験施設は本年度に改修工事が行われた。これにより計画していたトランスジェニックマウスの作成、系統の選別・凍結保存、およびSiglec-15遺伝子欠損マウスとの交配が行うことができず、止むを得ず次年度以降に持ち越しとなった。また野生型マウスとSiglec-15遺伝子欠損マウスの骨形態計測による比較も計画していたが、仮の飼育施設では飼育条件が異なるためにデータの整合性が得られない場合が考えられたため、本実験も次年度以降に行うこととした。以上の事情により次年度以降使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に遂行し得なかったSSDKA317トランスジェニックマウスの樹立およびSiglec-15遺伝子欠損マウスとの交配実験に未使用額をあてる。また遺伝子発現抑制実験の一手法として新規にCRISPR/Cas9を用いたゲノム編集技術の導入にかかる経費に使用する。
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