2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26462295
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
北川 教弘 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (30294284)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨・軟骨代謝学 / 破骨細胞 / 骨吸収 / NFATc1 / ITAM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではこれまでにin vitro分化誘導系を用いた解析から、Siglec-15とDAP12のキメラ分子改良型SSDKAが内在性DAP12との会合を介さずにSiglec-15-DAP12複合体を一分子で模倣しSiglec-15遺伝子欠損マウス由来破骨細胞の骨吸収活性をV-setドメインおよびITAM依存的に回復すること、を明らかにした。このことはSiglec-15がDAP12を介して機能することを示す。 昨年度に作成した破骨細胞特異的プロモーター下流で改良型SSDKAを発現するベクターを用いて、トランスジェニック(Tg)マウスを作成した。得られたファウンダーマウス系統を野生型マウスと交配し、Tgアリルを有する産仔を得た。本マウスから採取した骨髄細胞をもとにin vitroにて破骨細胞へ分化誘導し、ウェスタンブロッティングにて破骨細胞特異的に改良型SSDKAを発現するファウンダーマウス系統を確認した。さらに得られたTg系統マウスとSiglec-15遺伝子欠損マウスと交配し、両アリルを有するマウスの作出に成功した。今後はSiglec-15遺伝子欠損マウスに改良型SSDKAを発現させたマウスの骨形態や骨吸収を検討し、Siglec-15がDAP12会合受容体として破骨細胞で機能することを個体レベルで検証する。 ゲノム編集法ではベクターを導入した細胞のクローン化が必須となるが、各クローン間の違いが大きく結果に影響する。そこで破骨前駆細胞株RAW264細胞から複数クローンを限界希釈法により選択した。その結果、効率良く破骨細胞へと分化する複数クローンの樹立に成功し、継代初期のストックを作成した。今後はクローン化されたRAW264細胞を材料として、ST6GALNACX遺伝子を欠損させたマウス破骨前駆細胞RAW264細胞株の樹立を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に計画申請時には予定されていなかった研究代表者所属機関動物実験施設の改修工事が行われた。その結果、新たなTgマウスの作成を始めとする遺伝子組換えマウスを利用した実験は1年間の遅滞を余儀なくされた。そこで本研究は補助事業期間の延長を申請し、これを受理された。 本年度はTgマウス作成を始めとする、研究申請時点では2年目の課題を遂行しえた。さらに外部研究機関との連携し、計画当初は予定していなかったマイクロCTを用いた骨形態の観察を行う共同研究体制を整えた。また破骨細胞におけるST6GALNACXの機能解析については当初RNA干渉法を予定していたが、ノックダウン効率が低く、傾向は認められるものの明確な結論は得られていない。そこでゲノム編集技術をすでに活用している本学他研究室との連携を確立し、共同研究によりST6GALNACX遺伝子を欠損させたマウス破骨前駆細胞RAW264細胞株を樹立することが可能となった。 以上のことから当初3年の計画を4年に変更し、本期間内で本課題の遂行は可能であると共に、申請時には計画していなかった共同研究によりマイクロCTによる解析やゲノム編集技術の導入により計画当初以上の成果があげられることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
1)改良型SSDKAは、内在性DAP12との会合を介さずにSiglec-15-DAP12複合体を一分子で模倣する。このことは、少なくともin vitroにおいてSiglec-15がDAP12を介して機能することを示す結果である。そこで今年度はTgマウスとSiglec-15遺伝子欠損マウスを交配し、Siglec-15遺伝子欠損マウスの破骨細胞特異的に改良型SSDKAを発現させ、その骨形態ならびに骨吸収活性を個体レベルで検討する。遺伝子欠損マウスで認められる破骨細胞の骨吸収の減少および大理石骨病が改良型SSDKAの発現により回復することが認められれば、in vivoにおいてもSiglec-15が破骨細胞におけるDAP12会合受容体であることを示す始めての知見となる。 2)昨年度クローン化・樹立したRAW264細胞からゲノム編集技術によりST6GALNACX遺伝子欠損細胞を作成し、破骨細胞におけるST6GALNACXの働きを検証する。 3)Siglec-15遺伝子欠損マウス由来細胞に、タグを付加した野生型Siglec-15およびV-setドメイン欠失変異体を導入し、アフィニティ精製によりそれぞれに会合するタンパク質を共沈する。V-setドメイン依存的に会合するタンパク質を質量分析により同定する。同定されたタンパク質とSiglec-15の会合を免疫沈降法により確認する。さらに2)でST6GALNACXが成熟破骨細胞の形成に関わることが示された場合、両者の会合をST6GALNACX遺伝子欠損RAW264細胞で検討し、ST6GALNACXがSiglec-15の認識する糖鎖の形成に関わるのかについて検証する。
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Causes of Carryover |
平成27年度に研究代表者が使用している動物実験施設の改修工事がなされた。これは申請時には予想していなかったことであり、計画していたマウスの交配・維持やトランスジェニックマウスの作成がやむをえず次年度以降に持ち越しとなった。このため当初予定していたマウスの飼育や組換マウスの作成および系統保存、ならびにその解析にかかる費用が持ち越された結果による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に樹立したトランスジェニックマウスの系統維持にかかる費用や、本年度当初に予定していた、改良型SSDKA317を破骨細胞特異的に発現するSiglec-15遺伝子欠損マウスの骨形態計測にかかる費用に未使用額を当てる。また他機関と連携し本マウスの骨形態計測についてマイクロCTを用いて行うことを計画しており、これにかかる旅費や輸送費に使用する。
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