2014 Fiscal Year Research-status Report
変形性関節症における核酸修復酵素の活性・発現制御機構と軟骨変性機序との関連解析
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26462323
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
遊道 和雄 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60272928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
油井 直子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (20266696)
唐澤 里江 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50434410)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 変形性関節症 / 軟骨変性 / DNA修復酵素 / 活性酸素種 / メカニカルストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性関節症(Osteoarthritis, OA)において、メカニカルストレスや炎症等に対する軟骨細胞のストレス応答・防御機構の変化と軟骨変性との関連については未だ不明な点が多い。我々は平成26年度の研究において、変性軟骨ではグアニン酸化体を始めとする核酸の酸化損傷が蓄積し、かつ、軟骨変性度と核酸酸化損傷度とは相関することをOA軟骨組織において確認した。さらに、OAのin vitro実験系において、軟骨細胞の核酸酸化損傷に対する防御因子としての核酸(DNA)修復酵素 [Ogg1, APEX2]は軟骨変性に関連して発現が変動を見いだした。 平成26年度の研究成果から、軟骨変性部においては核酸酸化損傷の結果としてグアニン酸化体が高発現しており、これに相反して核酸修復酵素Ogg1活性は低下していることを確認した。この研究結果から、変性軟骨では核酸損傷が蓄積して軟骨細胞活性低下や細胞死が誘導され、軟骨組織の維持・恒常性低下、ついには軟骨変性につながっていくものと考察した。Apex2については、変性軟骨部の軟骨細胞において高発現し、かつ、OA誘導因子(軟骨異化因子)によって細胞にApex 2g発現が誘導されることを明らかとした。Apex2は核酸損傷の修復過程の後半で機能することが知られていることから、軟骨変性部の軟骨細胞自体には細胞生存・核酸損傷修復に向けた抗OA反応もみられることが示唆され、かつ、軟骨細胞活動・軟骨組織の恒常性の破綻がOA発症に関与するものと考察している。これらの研究成果を基盤にして、OAの病因・病態に軟骨細胞の核酸酸化損傷と、その防御機構の異常が関与する可能性について、今後解析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軟骨細胞のストレス応答因子(核酸損傷修復酵素)に関する研究計画のうち、(1) 軟骨細胞のOAストレス応答機構(防御機構)を核酸(DNA)修復酵素活性の観点から解析し、Ogg1, Apex2の発現動態について知見が得た。また、(2)軟骨細胞核酸酸化損傷の程度を正常軟骨 と変性軟骨において比較し、(3)軟骨異化因子に応答する核酸修復酵素の活性変化、酵素間クロストークの可能性に関する知見が得られた。これらのことから、計画はおおむね順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な外因性ストレス刺激に応答した細胞内蛋白質の多彩な翻訳後修飾の中で、リン酸化・脱リン酸化の反応は細胞内情報伝達経路を制御するメインイベントであるとされている。“どの蛋白質”の“どの部位”が、“いつ”、“どのくらい”リン酸化・脱リン酸化されるのかを知ることは情報伝達機構解明のうえで極めて重要である。 そこで、核酸修復酵素 (Ogg1, APEX2) について、RNA干渉法を用いた酵素欠損軟骨細胞および遺伝子導入による当該酵素の過剰発現軟骨細胞株を樹立し、各種ストレス条件下におけるこれらの細胞のリン酸化翻訳後修飾の網羅的解析を比較分析し、OA誘導因子に応答した軟骨細胞核酸修復酵素群の細胞内情報伝達路を解析する。
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Causes of Carryover |
研究分担者(唐澤里江講師)が平成26年度途中で国外へ研究留学したため、唐澤理江講師に譲渡する研究費は次年度の研究費として繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に帰国予定の研究分担者・唐澤理江講師が研究費(消耗品費)として使用する予定である。
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