2015 Fiscal Year Research-status Report
変形性関節症における核酸修復酵素の活性・発現制御機構と軟骨変性機序との関連解析
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26462323
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
遊道 和雄 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60272928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
油井 直子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (20266696)
唐澤 里江 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50434410)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 変形性関節症 / 核酸損傷修復酵素 / 軟骨細胞 / 軟骨変性 / メカニカルストレス / 酸化ストレス / 細胞エネルギー代謝 / ATPエネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
国内外における多くの精力的研究から、変形性関節症(OA)の発症は加齢に伴う軟骨基質の組成変化に加えて、肥満や荷重等のメカニカルストレスと、それに伴い誘導される酸化ストレス(活性酸素種)の蓄積が関与し、軟骨細胞活性や軟骨基質の変性を引き起こすとされ、加齢と酸化ストレスならびに関節軟骨変性の発症・進行は密接な関連を持つことが明らかとされてきた(Arthritis Rheum. 2006;54:1357-1360)。 本研究課題において、OA発症の主要因とされる関節軟骨組織への炎症、酸化ストレスおよびメカニカルストレス等の因子に対する細胞応答によって軟骨内に生じる過剰なフリーラジカル産生と、軟骨細胞核酸酸化損傷および軟骨基質変性との関連について一連の研究を進め、軟骨変性の発生機序を軟骨細胞の核酸酸化損傷の観点から解析している。 平成27年度は、軟骨細胞のストレス応答能と病因・病態との関連を解析したところ、軟骨細胞において脱アセチル化・ADPリボシル転写酵素Sirtuin 1は炎症性サイトカインIL-1beta刺激により発現が増強し、かつ、骨芽細胞分化・内軟骨内骨化・肥大軟骨化に関わる転写因子osteogenic transcription factor Runt-related transcription factor 2(Runx2)の活性、ならびにDNA損傷修復酵素(APEX2)の発現活性を制御するポテンシャルを持つことを明らかにした。さらに、in vitroのOA実験系(炎症性サイトカインIL-1beta刺激下)において、関節軟骨細胞におけるsirtuin 1はRunx2発現の活性化を介して、軟骨マトリックス分解酵素(MMP)-13の産生を誘導し、軟骨変性に関わることを詳らかに、International journal of Molecular Scienceに投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、前年度までの研究成果を基盤に、関節軟骨細胞において細胞エネルギー代謝の源であるミトコンドリア機能に注目し、各細胞のエネルギー代謝(解糖系・TCA回路)、ミトコンドリア活性(ATPエネルギー産生量・電子伝達系)、ミトコンドリア機能制御機構(AMP活性化プロテインキナーゼ AMPK)およびDNA修復酵素活性調整メカニズムと病態との関連を詳解し、① リウマチ性関節炎(炎症モデル)および関節変性を実験的に再現したin vitro実験系において、の細胞エネルギー代謝(解糖系・TCA回路・ATP産生)は一過性に亢進し、滑膜増生、軟骨基質分解酵素MMPs産生、肥大軟骨化・骨棘形成等の関節異化のエネルギー源となること、② 同in vitro実験系の炎症性サイトカイン刺激存在下において、一過性にATP産生が亢進する過程で電子伝達系から漏出する電子e-が増え、この漏出電子が酸素と結合した活性酸素種量(酸化ストレス)も増加し、その結果として酸化ストレス・DNA損傷による細胞活性・組織機能の低下を誘導する可能性、③ 脱アセチル化・ADPリボシル転写活性を持つSirtuin 1が、ATP産生量の変化を感知することでATP産生量を制御するAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性をコントロールすることを示唆する知見を得た。これらの研究成果の一部は、International journal of Molecular Scienceに投稿、国際変形性関節症学会、日本整形外科学会およびアメリカリウマチ学会(ACR2016)で発表予定であり、概ね計画は順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27-28年度に準備を進める当初計画に則って、実験的OA異化因子刺激下における軟骨細胞の核酸損傷修復酵素 (Ogg1, APEX2など) 活性化や調節機構の細胞内情報伝達路を翻訳後修飾の網羅的解析(プロテオミクス解析)の結果を基にして解析していく。かつ、平成27年度の研究成果として、我々が注目している脱アセチル化・ADPリボシル転写酵素Sirtuin は変性軟骨細胞のミトコンドリア活性・エネルギー代謝を制御する重要な因子であることを示す結果が得られたので、関節疾患の骨・軟骨変性のメカニズム(MMPs産生制御、肥大軟骨化変性、骨棘形成等)への関与および変性抑制ターゲットとして解析を進めていく。
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Research Products
(5 results)