2015 Fiscal Year Research-status Report
高濃度酸素吸入が幹細胞の動員と臓器虚血再灌流障害に与える影響
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26462339
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
稲冨 千亜紀 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (20508444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 桃生 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (50379997)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 循環・高血圧 / 虚血再還流障害 / 高濃度酸素 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓の虚血再還流障害を軽減する方策として、虚血プレコンディショニングの効果が知られており、その作用機序は、末梢血中の骨髄由来幹細胞の動員と、虚血再還流組織局所への集積の増大が寄与している可能性が示唆されている。一方、麻酔導入時には一過性に高濃度酸素投与を行う状況が生じるが、この高濃度酸素曝露による骨髄由来幹細胞の動員や虚血再還流障害に与える影響はまだ明らかにされていない。本研究は、一過性の高濃度酸素曝露が骨髄由来幹細胞の動員と虚血再還流障害に与える影響を調べ、その分子・細胞機序を解明することを目的としている。 平成27年度は、心臓虚血再還流障害に対する保護効果に関するメカニズム、特に骨髄由来幹細胞の寄与の有無を解明するため、まずC57BL/6マウスを用いてGFP陽性骨髄細胞移植キメラマウスを作製した。このキメラマウスを用いて、高濃度酸素曝露により血清中の骨髄由来幹細胞数(CD34、c-kit陽性幹細胞数をflow cytometry解析で定量)がcontrol群と比較して増加が認められた条件のうち、高濃度酸素5分曝露後3時間後に気管挿管下に人工呼吸管理し、冠動脈左前下行枝を結紮し30分後に再還流させ、心臓虚血再還流障害モデルを作製した(5分曝露3時間群)。control群は酸素曝露させないキメラマウスを用いて同様に心臓虚血再還流モデルを作製した。モデル作製の3日、14日後にマウスを犠牲死させ心臓を採集し凍結組織標本を作製した。心筋細胞のapoptosisをTUNEL法で評価したところ、5分曝露3時間群ではcontrol群と比較して少ない傾向が認められた。現在、心筋線維化組織面積をマッソン・トリクローム染色により群間比較評価中である。今後さらに免疫染色法により左室心臓組織内の骨髄由来(GFP陽性)のCD34、c-kit陽性幹細胞数を定量評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高濃度酸素曝露の心筋虚血再還流障害に対する保護作用を、心筋細胞のapoptosis(TUNEL法)と心筋内線維化組織面積(マッソン・トリクローム染色による測定)の解析による群間比較検討で評価しているが、解析にやや時間を要したため、免疫染色法による左室心臓組織内の骨髄由来(GFP陽性)のCD34、c-kit陽性幹細胞数を定量評価する実験を終了できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫染色法による左室心臓組織内の骨髄由来(GFP陽性)のCD34、c-kit陽性幹細胞数を定量評価する実験は、5分曝露3時間群とcontrol群の心臓虚血再還流障害モデルからすでに心臓組織は採集済みであり、今後、順次凍結組織切片を作製でき、実験は順調に進むと思われる。
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Causes of Carryover |
実験がやや遅れているため、心臓虚血再還流障害障害モデルの心臓組織の免疫染色に使用する試薬の一部を購入していなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
心臓虚血再還流障害障害モデルの心臓組織の凍結組織切片の作製や免疫染色法に必要な物品・試薬・抗体を購入する予定である。また今後、高濃度酸素曝露により血清中の骨髄由来幹細胞数がcontrol群と比較して増加が認められた別の条件でも実験を行うため、心臓虚血再還流障害障害モデルの作製に必要なC57BL/6マウスと心筋虚血再還流障害モデル作製に必要な物品を購入する予定である。
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