2015 Fiscal Year Research-status Report
GABA抑制系による脳可塑性の制御と麻酔薬:鎮静と毒性の分子基盤に関する新研究
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26462341
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
西川 光一 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (00334110)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 麻酔薬 / 鎮静 / 鎮痛 / 神経毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】GABAとグリシンは、小胞型GABA/グリシントランスポーター(VGAT)によって神経終末小胞内に取り込まれる。我々はVGATが減少したヘテロ接合体マウス(VGAT+/-)で炎症性疼痛反応が増強することを報告してきた。今回の研究では、プロポフォール、回収セボフルランの鎮痛・鎮静作用に対するVGAT低下の影響を野生型とヘテロ接合体マウスの2群で比較した。 【方法】プロポフォールを静脈投与後、立ち直り反射消失(LORR)、尾ピンチ反応消失(LTWR)、後肢ピンチ反応消失(LHWR)の濃度を、野生型(WT)とヘテロ(12-16週)で比較した。それぞれ鎮静と鎮痛の指標とされる。また、回収セボフルランを気化器から濃度モニターしながら投与して、同様な指標を使って評価した。また幼弱期マウスに麻酔薬暴露2ヶ月後の学習能力への影響を調べた。 【結果】プロポフォールによるLORRでは、両群間での有意差はなかった。一方、LTWR、LHWRは、プロポフォールの呼吸抑制作用が強くなり、実施不可能であった。また、回収セボフルランによる鎮静・鎮痛作用において、群間差はなかった。麻酔薬暴露後の水迷路試験等で、成長後の学習能力への影響は最小限であった。 【考察と結論】VGATの発現低下は、セボフルランやプロポフォールの鎮静効果に影響が少なかった。この結果は、VGAT低下による小胞内への抑制伝達物質取り込みが減少した状態でも、セボフルランやプロポフォールによる抑制系賦活による鎮静作用の効果発現は、シナプス後膜の受容体への作用によって可能であることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
麻酔薬の効果発現には、VGATの発現が減少したマウスでも、大きな違いは認められなかった。この発見は新しい知見であり有益な発見である。
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Strategy for Future Research Activity |
麻酔薬の効果発現には、抑制系神経伝達物質の賦活が必須であるが、麻酔薬の効果維持と覚醒に関するVGATの役割についてはまだ不明である。今後この点を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
今年度は、海外学会の発表と参加がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外学会参加費と論文校正費用を計画している
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Research Products
(2 results)