2015 Fiscal Year Research-status Report
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26462361
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
山下 幸一 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 准教授 (80335950)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 心音図 / PEP / 心収縮力 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベッドサイドでの循環管理は経験と勘に頼る割合が高い。心拍出量は循環管理の基本指標と考えられているが、予後改善効果は認められていない。しかも、非侵襲で簡便かつ経済的に測定することは不可能であり判断基準も個々の患者で異なるため循環管理技術の教育法は様々である。これまで我々は脈波伝搬時間(心電図R波からプレシスモグラフ上昇点までの時間差)の呼吸性変動値が、輸液指標として使用できることを明らかにした。そして次の段階として、心収縮能の評価法を検討してきた。そこで、心臓の収縮開始から血液が駆出されるまでの時間(pre-ejection periods; PEP)が、心収縮力と相関するという報告に注目し、「心電図R波から心音図の僧帽弁閉鎖音(Ⅰ音)までの時間が、PEPと相関する」という仮説を立て研究計画を立案した。本研究は、心収縮力を非侵襲的かつ簡便に測定する技術を開発し、全く新規の循環管理アルゴリズムを構築することが目的である。高知大 総合研究センター 生命・機能物質部門 動物実験室内の中型動物実験室において、全身麻酔下の豚を用いて実験を施行した。平成26年度において、小型マイクロフォンを試作し、10頭の豚を用い心電図、胸壁に装着した小型マイクロフォンから採取した心音図から僧帽弁閉鎖音を同定し上行大動脈圧波形と比較検し心音がPEPの同定に有効であることを発見した。平成27年度は、心音図から測定したPEPと心室内圧変化(dP/dt)に有意な相関があることを発見した。今後、これらの結果をもとに循環管理アルゴリズムを作成する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小型マイクロフォンはその周波数特性が様々でありPEPを測定するのに適したマイクロフォンは少なくとも市販はされていない。本研究では現在では使用されなくなったを圧電素子を用いたマイクロフォンを試作し心音図の有効性を証明することができたことは本研究の最大の功績と考えている。この技術は心音図がエコー技術の進歩により診療上の有効性が低くなったことが原因で臨床から消滅したものであり、現在の解析技術を駆使すれば再び有効性のあるモニタリング技術となることが示された。加えて非常に安価かつ非侵襲であることは今後際注目されるべき技術とも考えられた。また、このマイクロフォンを用いた心音図によりPEPを同定することができ、直接測定した心収縮力(dp/dt)を有意な相関が認められたことから循環管理アルゴリズム作成が現実化する可能と考えられた。今後、様々な循環状態でのデータを集め循環管理アルゴリズムの精度をあげていくことを目標に研究を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、様々な循環状態(循環作動薬の使用、出血性ショック、敗血症性ショック)でのデータを集めモニタリング技術としての有効性の限界を明らかにする予定である。ただ、現在の解析はoff-line(データ採取後マニュアルでの解析)での解析であり、on-line(同時自動解析)での解析技術は成功していないことが今後の課題である。心音図は元来規則性の乏しい波形であり、自動でその特徴を捉えるプログラムは開発されていない。波形解析に関する新しい知見が必要と考えている。本研究を通して心音図の新たな解析技術を開発することが今後の問題点であると考えられる。
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Causes of Carryover |
試作したマイクロフォンの調整作業にたびたび時間がかかり動物実験の予定数が5匹少なかったことと、予定していた海外出張をテロの関係で取りやめたことなどが原因で予算を達成できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験の遂行と国際学会での発表を予定しており予算の適切な使用を計画している。
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Research Products
(4 results)