2014 Fiscal Year Research-status Report
インドシアニングリーンを用いた局所脳血流測定法の確立に関する研究
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26462376
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
吉谷 健司 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (30524029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 佳彦 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (40443501)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 局所脳血流 / インドシアニングリーン / 近赤外線分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は近赤外線分光法を用いたインドシアニングリーン(ICG)の静注による局所脳血流(rCBF)測定の実用化に向けて研究を行ってきた。当初は前頭葉の局所ICG血中濃度の上昇する曲線の傾きから(Blood flow index: BFI)を用いて脳血流を算出する予定であった。BFIの算出自体は、安定した値が測定できることが確認され、現在、その方法と結果は"Cerebral blood flow measurement by near infrared spectroscopy in carotid endarterectomy"としてJournal of Neurosurgical Anesthesiologyに投稿中である。また、上記内容をアメリカ麻酔学会、アメリカ神経麻酔学会で発表した。さらに、来年度の計画に含まれる麻酔薬の脳血流への影響を評価するために予備データとしてBFIを麻酔薬ごとに測定した。その結果はアメリカ麻酔学会、アメリカ神経麻酔学会で発表した。 しかし、BFIを用いて脳組織へのICGの流入の傾きから計算した脳血流は測定値が不安定でばらつきを生じる結果となった。その後は計算アルゴリズムを再検討した。BFI算出に用いるICGの濃度上昇曲線は動脈血と静脈血の双方を含んでいるが拍動成分を分離することで、組織に流入する曲線と流出する曲線を分けることに成功した。その結果、測定精度は向上しrCBFの算出値も安定してきた。現在、その方法は確立されたので、当初の計画に含まれていたPET、SPECTにより得られたrCBFと、本研究のICGとNIRSを用いることで得られるrCBFとの値を比較検討するためのデータ収集に当たっている。今回のCBFの測定のもととなるBFI算出が安定して得られ、臨床的な症状と一致していることが確認されたことには充分な意義が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の目標は脳血流(CBF)測定の標準値として用いられているPET、定量SPECTで測定されたCBFとNIRSを用いてICGの静注により得られたCBFとを比較、検討することであり、以下の3段階のステップを計画していた。 ⅰ)Blood Flow Index (BFI)の算出, ⅱ)局所CBF(rCBF)への変換, ⅲ)PET,SPECTとの比較 であったが、ⅰ)に関しては安定した値が得られた。ⅱ)は当初は最大血中濃度法で行う予定であったが、この方法ではインドシアニングリーン(ICG)の注入速度が高速である必要がありバラつきが大きいことから再現性に乏しいことが判明した。その結果、計算アルゴリズムを再検討し、Perfusion CTなどで用いられているdeconvolution法を用いることとした。ただし、この方法は組織への流入濃度変化と組織からの流出濃度変化の双方が必要であった。組織に流入する動脈血の濃度変化は動脈の拍動性分のみを周波数フィルターを用いることで分離に成功した。この結果、測定値は安定した物になった。このステップで予想より時間を要した。ⅲ)は現在とりかかりつつあり、登録患者をリクルート中である。 平成26年度に計画した3段階のうち2段階までは達成し、3段階目もすでにとりかかっていることからほぼ、前年度計画は達成したと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度計画のPET、SPECTにより得られた局所脳血流とICGにより得られたrCBFを比較検討する研究を継続しつつ、平成27年度の計画の実施に移行する。PET、SPECTによるrCBFとICGによるrCBFの差異が臨床的に許容できる範囲であれば、麻酔薬のrCBFに対する影響、人工心肺中の脳血流の変化、脳血流の自動調節能が維持されているのか、クモ膜下出血での脳血管攣縮の際の血流低下を検知できるのかなどの臨床研究を行っていきたい。 吸入麻酔薬(セボフルラン、デスフルラン)と静脈麻酔薬(プロポフォール)などはそれぞれが脳血流、脳圧に対しての作用が異なることが報告されている。しかし、それらはすべて動物実験か、経頭蓋超音波ドップラーによる間接的な脳血流評価しか行われていない。前年度、BFIの測定により予備研究を実施したが今年度はrCBF測定を行い、比較する。対象は予備研究と同様で全身麻酔症例で手術侵襲の少ない腹部大動脈のステントグラフト手術で行う。さらに心臓外科手術で人工心肺中の脳血流が変化するのかを調査する。これもBFIですでに予備研究は行っており、復温時に脳血流が低下することが示唆されたが実際に脳血流がどう変化するのかを検討する。また、灌流圧の変化で脳血流が変化するのかどうかを調査することで人工心肺中の脳血流の自動調節能が維持されるのかどうかを評価することも行いたい。さらに、脳外科領域ではくも膜下出血後の脳血管攣縮は重篤な合併症であるが、rCBFを定時測定することでその前兆が把握できないかを検討する。今年度はこれらの臨床研究を行っていく予定である。
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