2014 Fiscal Year Research-status Report
モルヒネの鎮痛耐性形成に対するNMDA受容体活性調節因子D-セリンの作用
Project/Area Number |
26462385
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
伊藤 健二 東海大学, 医学部, 講師 (10317779)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 正信 東海大学, 医学部, 准教授 (90276791)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | モルヒネ慢性投与 / 鎮痛耐性 / NMDA受容体 / Dセリン |
Outline of Annual Research Achievements |
モルヒネを慢性投与し鎮痛に対する耐性が形成されたラット脳内においてDセリン量、Dセリン関連タンパク質量、およびそれらの遺伝子発現変化について解析し、Dセリン代謝とモルヒネ依存・耐性形成あるいは退薬症候との関連を明らかにすることを目的とする。研究結果(1)耐性形成:モルヒネ(10mg/kg)を30日間投与し耐性が形成されたことを確認した。(2)Srr & DAO mRNA量の変化:モルヒネ慢性投与によりSrr mRNA発現量は全ての脳部位で、DAOは前脳部(線状体、海馬、大脳皮質)において有意に増加した。(3)Srr & DAO タンパク質量の変化: モルヒネ慢性投与によりSrr タンパク質量は全ての脳部位で有意に増加した。一方DAOは有意な変化が観察されなかった。(4) Dセリン量の変化:モルヒネ慢性投与により前脳部(線状体、海馬、大脳皮質)において有意に増加した。(5)Srr発現細胞:これまでDセリンおよびDセリン合成酵素Srrは2型アストロサイトで発現されるとの報告があるが、神経細胞で発現していることが明らかとなった。(6)ベンゾジアゼピン系薬物とDセリンの鎮痛効果との関連:Dセリンを脳室内投与して現れる鎮痛効果はミダゾラム脳内投与により有意に減弱された。 以上の結果から、モルヒネ慢性投与は関連タンパク質(Srr, DAO)遺伝子発現の変化を伴い前脳部のDセリン量を増加することが明らかとなった。Dセリンおよびその合成酵素のセリンラセマーゼは主に神経細胞で発現することを明らかにした。また、モルヒネ慢性投与によりミクログリア、アストロサイトが中脳水道周囲灰白質、側座核、腹側被蓋野で増加することが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた生化学的解析の他に、組織化学的解析を進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
モルヒネ慢性投与後の脊髄レベルでのDセリン代謝変化について解析することで、鎮痛耐性との関連性を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた生化学的解析が進んだため、使用予定試薬を節約できたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
脊髄での解析に使用する。
|