2015 Fiscal Year Research-status Report
前立腺癌の高リスクファクターとしてのアクネ菌感染と前立腺発癌に関する研究
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26462404
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
江石 義信 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70151959)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アクネ菌 / 前立腺癌 / 持続感染 / 前立腺炎 / 新規診断マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度から引き続いているヒト前立腺生検組織における免疫学的解析と、アクネ菌感染によるマウス前立腺発癌モデルの検討を行った。ヒト前立腺生検組織における免疫組織学的解析では、現在までに癌群44症例、対照群36症例について解析が終了している。解析の結果、アクネ菌の陽性腺管率は対照群に比較して癌群で有意に上昇しており(Mann-Whitney test, p<0.001)、前立腺癌とアクネ菌との関連性が強く示された。本解析結果については現在、論文執筆中である。 またマウスを用いた検討では、麻酔下にて開腹したマウスの前立腺にアクネ菌(ヒト前立腺由来株)を接種し、接種後3日から2週にかけて観察した。摘出した前立腺組織はホルマリン固定パラフィン包埋ブロックを作製して免疫組織学的解析を行った。その結果、抗アクネ菌抗体免疫染色にてアクネ菌を接種した全ての個体で前立腺上皮細胞内にヒト前立腺組織中に観察されるような小型円形顆粒状の陽性像が認められた。対照として生理食塩水を接種した個体においてはいずれもアクネ菌陰性であった。また抗NF-κB抗体を用いて免疫染色を行うとアクネ菌陽性腺管では活性化NF-κBが核内に高頻度に認められた(Fisher’s exact test, p< 0.001)。さらにアクネ菌陽性腺管においては好中球、マクロファージを主体とした炎症反応が認められた(Fisher’s exact test, p< 0.001)。これらの所見はヒト前立腺癌組織中にて認められるものと同様の傾向を示しており、アクネ菌の感染が前立腺癌の発生に与える影響を解析するモデルとなり得ると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度における研究の進捗は、概ね順調に進展している。ヒト前立腺生検組織におけるアクネ菌の免疫組織学的解析では、目標としていた症例数に達し、解析が終了している。この結果に関しては現在、論文を執筆中であり、次年度内での投稿を予定している。また、今年度よりアクネ菌に関連した前立腺癌モデルの動物実験を開始している。現在までに得られた結果として本菌の接種後2週間までのポイントで解析を行っており、ヒト前立腺組織で観察されるようなアクネ菌の上皮細胞内への感染や、感染腺管でのNF-κBの活性上昇などが観察されている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はヒト前立腺生検組織におけるアクネ菌の免疫組織学的解析についての論文投稿を予定している。また今年度より開始した動物実験に関しては、短期間においてはヒトで観察されるような感染像等が得られており、マウス前立腺上皮細胞内への感染手法の確立に成功した。そのため、今後はヒトで想定されるような長期間に渡る感染実験を行い、アクネ菌やそれに関連する癌関連遺伝子等の経時的な解析を施行する予定である。また、本研究結果についても今年度内の論文投稿を目標とする。
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