2014 Fiscal Year Research-status Report
膀胱内環境に生じるがん幹細胞シグナル異常の解明と膀胱癌診断マーカーの開発
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26462423
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
千原 良友 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (40405395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 清秀 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (50264867)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 膀胱癌 / がん幹細胞 / エピジェネテイクス |
Outline of Annual Research Achievements |
膀胱癌細胞株 T24(高悪性癌)、J112(低悪性癌)、UMUC3(上皮間葉転換膀胱癌)および、尿路上皮細胞株 HB/EpCを用いて、各細胞株におけるOCT4/SOX2シグナル経路に位置する遺伝子群の遺伝子発現と、エピジェネテイクス制御の関係を検討した。HB/EpCと比較し、膀胱癌細胞株で発現の上昇を認めた遺伝子はPHC3、FOXA2、LRH1、SF1であった。一方、IGF2BP、BRCA1、FoxD3は発現が低下していた。これらの遺伝子のうち、DNAメチル化頻度と遺伝子発現が一致した遺伝子はFoxD3とBRCA1であった。とくに膀胱癌細胞においてはBRCA1のH3K9m3の頻度が高く、エピジェネティクスによる遺伝子発現がもっとも顕著である結果となった。また膀胱癌細胞株での比較では、BRCA1の発現がT24でもっとも低く、FoxD3の発現はUMUC3で高かった。これらの遺伝子発現はDNAメチル化頻度と相関した。5'Aza処理により膀胱癌細胞におけるBRCA1の発現は上昇したが、増殖能に変化は見られなかった。また、siRNAを用いたFoxD3のノックダウン処理でも、3種類の膀胱癌細胞の増殖能に変化は見られなかった。これらの結果から、OCT4/SOX2シグナル経路上の遺伝子発現と、エピジェネティクス異常は膀胱癌の悪性度を示す指標となり得ることが示唆されたが、これらの遺伝子は治療標的分子となり得る可能性は低いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載した平成26年度分の研究は概ね達成した。本研究は尿に暴露された膀胱内環境での発癌に関与する遺伝子の同定と診断マーカーの作成が目的であり、検討した遺伝子群の発現、エピジェネティクスは正常尿路上皮細胞と膀胱癌細胞で異なり、また悪性度の異なる膀胱癌間でも異なっていた。したがってこれらの遺伝子は診断、予後予測の指標になり得る。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床試料を用いた後ろ向き、および前向き研究で、これらの遺伝子、エピジェネティクス異常を対象とした診断と予後の検証研究を引き続き行っていく。
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Causes of Carryover |
平成26年度は細胞株を対象とした研究が主であり、微量サンプルのDNA濃度測定が不必要であったため、備品に計上した分光高度計は購入しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
臨床試料を用いた検証研究では多数の微量DNA濃度測定が必要となるため、平成27年度以降に購入予定である。
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