2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒト前立腺癌に発現する特異性の高いmicroRNAの有用性についての検討
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26462424
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
藤井 智美 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50623477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 登 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20145832)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Syndecan-1 / microRNA / 前立腺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
microRNA は19-25塩基からなる低分子量RNAで、標的mRNAの3’非翻訳領域に結合し、mRNAの転写、翻訳の阻害や分解を行うことで、癌細胞の増殖抑制或いは促進する。Syndecan-1 はheparan sulfate proteoglycan の1つで、細胞の生存、遊走、血管新生など多彩な機能を有することが知られている。 本研究では、前立腺癌細胞株PC3を用いて、Syndecan-1の発現に連動するmicroRNAを検討したところ、microRNA-126, 149, 331-3p, 148a, 345, 30d, 23aがSyndecan-1の発現に連動して前立腺癌細胞に発現していることが明らかとなった。Syndecan-1あるいはそれぞれのmicroRNAを抑制し、細胞増殖能を検討したところ、syndecan-1の発現抑制により細胞増殖が抑制され、microRNA-126,149の抑制により同様の結果が得られた。免疫細胞化学染色ならびにSA-β-gal assayの結果、細胞増殖抑制の機序として、p21の発現上昇を介し、senescenceを誘導していることが示された。microRNA-126,149の標的候補分子を検討したところ、これらのmicroRNAがSOX2, NANOGおよびOCT4の発現を制御していることが明らかとなった。また、パラフィン包埋された前立腺癌組織よりRNAを抽出し、リアルタイムPCR定量法を用いて検討すると、これらのmicroRNAの発現が前立腺癌組織においてGleason分類による組織診断と発現が相関することが示された。 現在、Syndecan-1の発現に連動するmicroRNAについて、前立腺癌の進展に関わるような分子機序を明らかにすべく更に検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Syndecan-1による前立腺癌の細胞増殖に関与するmicroRNAおよび標的分子を同定し、そのmicroRNAの発現が前立腺癌組織において分化度に相関することを示すことができた(Fujii T et al. BBRC 456;183-189,2015)。さらにSyndecan-1の発現抑制により、上皮系マーカーの上昇と間葉系マーカーの低下が認められたことから、Syndecan-1に連動するmicroRNAのうちmicroRNA-331-3pの浸潤能ならびに上皮間葉移行への関与について前立腺癌細胞株PC3を用いて検討している。 以上の成果は、当初の研究目的ならびに計画のとおりに進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を踏まえ、本研究でSyndecan-1と連動することが明らかとなったmicroRNAが前立腺癌の進展にどのように関わるかを前立腺癌細胞株を用いてmicroRNAの発現抑制あるいは発現実験を行い、これによって誘導される上皮間葉移行やそれに伴う浸潤能の評価を行う。浸潤に関わるmicroRNAについて、前立腺癌組織検体を用いて、パラフィン包埋組織からRNAを抽出し、癌組織中のmicroRNAの定量的評価を行う。 in vitroの検討で分子機序を明らかにすることのできたmicroRNAについて、病理形態学的アプローチとしてin situ hybridization法によるmicroRNAの検出を新たに検討することと、液状細胞診検体からのRNA抽出法についても検討することで、組織ならびに細胞診と併せた前立腺癌の分子診断法を確立することを目標とする。
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