2015 Fiscal Year Research-status Report
尿路上皮癌における抗がん剤耐性獲得下の微小環境とユビキチンシステムの解明
Project/Area Number |
26462429
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田中 伸之 慶應義塾大学, 医学部, 講師(非常勤) (60445244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小坂 威雄 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30445407)
大家 基嗣 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00213885)
松本 一宏 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80366153)
丹羽 直也 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40626743)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 尿路上皮癌 / 上皮間葉転換 / ユビキチン / FBXO32 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性癌である転移・再発性尿路上皮癌の克服を目的として、本年度はシスプラチン(CDDP)耐性下における上皮間葉転換(EMT)誘導の機序解明に焦点を当てた。網羅的アレイ解析から抽出したユビキチンリガーゼFBXO32発現低下に伴うEMT誘導機構として、FBXO32のユビキチン化基質であるMyoD発現が2種のCDDP耐性尿路上皮癌細胞株で上昇しており、EMT誘導の一因と考えられた。SiRNA法によるMyoDノックダウンではがん浸潤能低下を認めた。またCDDP耐性獲得下のFBXO32発現低下の調節分子として、FOXO転写因子であるFOXO1・FOXO3aの核内発現が、CDDP耐性尿路上皮癌細胞株5637PRではAKTリン酸化上昇に併せて低下しており、FBXO32発現低下の原因と考えられた。膀胱癌臨床組織(N=94)を用いた後ろ向き解析では、FBXO32低発現群におけるEMT関連因子SNAILの高発現とE-cadherin低発現が確認され、FBXO32低発現群でのEMT誘導が示唆された。本染色結果を用いた予後解析では、膀胱癌においてFBXO32低発現が術後再発・癌死に関連する危険因子であり、膀胱癌おける予後予測マーカーとしての有用性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度は、CDDP耐性下のおけるFBXO32-EMT機構の更なる解明を目的に、まずFBXO32下流カスケード解明に焦点を当てた。FBXO32のユビキチン化基質であるMyoDの発現上昇が、CDDP耐性尿路上皮癌細胞株ではEMT誘導の原因である可能性が示唆された。またFBXO32上流カスケードとして、FOXO転写因子FOXO1・FOXO3aを介したFBXO32発現低下が新たに確認され、昨年報告した染色体レベルでのFBXO32発現抑制とは対照的である、CDDP耐性獲得下のエピジェネティック変化を介したFBXO32発現調節が示唆された。膀胱全摘術が行われた膀胱癌組織を用いた免疫組織学的染色では、FBXO32低発現群におけるSNAILの高発現とE-カドヘリン低発現が確認され、昨年報告した上部尿路上皮癌に加えて、膀胱癌においてもFBXO32低発現群でのEMT誘導が示唆された。また予後解析においては、膀胱癌における予後予測マーカーとしてのFBXO32発現の有用性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
1)化学療法治療前後の組織検体を利用した免疫組織学的検討:局所進行性である膀胱癌では術前全身化学療法後に摘出術が行われる。本治療プロセスを利用することにより、化学療法前後の癌組織を比較検討することが可能であり、本研究では同一症例での縦断的なFBXO32・EMT関連因子の発現変化を解析予定である。 2)FBXO32発現を介したCDDP耐性獲得機構の同定と癌幹細胞性への関与:FBXO32はヒストンメチル化酵素阻害剤の誘導遺伝子として癌研究では注目された。本薬剤はアポトーシスを介した抗がん作用が報告されたおり、FBXO32低発現環境のCDDP耐性化への関与が示唆される。具体的にはアポトーシス関連因子や細胞周期関連因子に着目すると共に、癌幹細胞性への関与も検討予定である。 3)網羅的アレイ解析により抽出された、遺伝子群(FBXO32を除く)を用いたCDDP耐性獲得後の尿路上皮癌における新規治療標的の探索:2種のCDDP耐性尿路上皮癌細胞株を用いた絞り込みアレイ解析により、CDDP治療に伴い共通して変化を来す49遺伝子が抽出された。FBXO32以外の48遺伝子に関しても、CDDP耐性化への関与を検討予定である。
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Causes of Carryover |
H27年度実施予定であった細胞実験にかかる備品や関連する消耗品の当該年度購入を見送ったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未購入である備品、消耗品にかかる実験は次年度以降に実施を予定しており、H28年度に繰り越して使用を計画している。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Impact of Combined Use of Blood-based Inflammatory Markers on Patients with Upper Tract Urothelial Carcinoma Following Radical Nephroureterectomy: Proposal of a Cumulative Marker Score as a Novel Predictive Tool for Prognosis2015
Author(s)
Nobuyuki Tanaka, Eiji Kikuchi, Kent Kanao, Kazuhiro Matsumoto, Suguru Shirotake, Yasumasa Miyazaki, Hiroaki Kobayashi, Gou Kaneko, Masayuki Hagiwara, Hiroki Ide, Jun Obata, Katsura Hoshino, Nozomi Hayakawa, Takeo Kosaka, Satoshi Hara, Ken Nakagawa, Masahiro Jinzaki, Mototsugu Oya
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Journal Title
European Urology Focus
Volume: 1
Pages: 54-63
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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