2015 Fiscal Year Research-status Report
尿流可視化による尿道機能の解明とフォーカル治療の基盤研究
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26462435
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
五十嵐 辰男 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (70302544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坪田 健一 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10344045)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 流体解析 / 尿流 / 排尿障害 / 局所療法 / 尿道ファントーム |
Outline of Annual Research Achievements |
男性下部尿路形状に基づく排尿機能のモデル化を目的として、これまでに内視鏡ビデオ映像から再構築した前立腺部尿道の再現性精度向上と、尿道拡張前後の尿流動態解析を行ってきた。平成27年度は、膀胱、尿道の運動計測を行い、尿流連成解析の準備を行った。排尿時には利尿筋と膀胱全体の収縮により膀胱内圧が上昇するが、排尿時膀胱ビデオ映像をもちいて、膀胱形状変化を数量的に捉える手法の開発を行った。各ビデオフレームから膀胱の輪郭を抽出し、膀胱の重心と坐骨などすべてのフレームで明確に描出される基点を軸として、重心から周方向に見た膀胱辺縁との距離をプロットし経時的に膀胱の変形をグラフで表現した。これより排尿時膀胱収縮のパターンには個人差があるものの、神経疾患を有する患者とそうでない患者の間には有意差が認められたこと、および神経性疾患を有さない患者における排尿時膀胱収縮運動のモデル化における基礎データが得られた。尿道や周囲の間質の物理学的特性が不明なため、市販の流体計算ソフト(ANSYS)に、単に推測される物性データを入力するだけでは、コンピュータの処理能力を超えてしまい計算不能となることがわかっているので、先ずファントームを用いて仮想空間上での計算結果の妥当性の検証を試みた。これまでにCADで作成した軽度前立腺肥大症の尿道モデルで型を作り、先行研究を参考にシリコンで尿道モデルを作成した。これを寒天の中に封入して、ポンプでファントーム内に水を注入し、エコーで尿道の動きを観察する実験系を作成した。これにより、内腔が水流により閉鎖している状態から一定の口径まで拡大する様子が観察でき、膀胱の運動と組み合わせ、排尿時下部尿路全体の運動をモデル作成の実験系を作成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では排尿障害患者の責任病変の同定を目的としている。既に内視鏡ビデオ映像から作成した仮想尿道内の流体シミュレーションにより、責任部位を元のビデオ画面中に表示する技術は作り上げた。ただこれは生理的な排尿状態を反映していないこと、および剛性モデルでの計算であり、排尿初期から終末期までの排尿症状を説明するものではない。従って平成27年度は実際の排尿状態に近いモデルの作成を行った。前年度に超音波診断装置により、ヒトの膀胱壁の運動量計測を試みたが、測定結果の妥当性が確認できなかったので、排尿時膀胱造影によるビデオ映像から変形状態をグラフ化する手法に切り替えた。2次元画像ではあるがこれにより膀胱形状変化の数値化が可能になり、排尿全期間を通しての膀胱運動モデル作成の準備ができた。尿道のモデル作成において、超音波診断装置により腹壁から排尿時の前立腺尿道描出を試みているが、手技が安定せず良質な画像取得に至っていない。同時に進めている尿道ファントームは、水流負荷時に尿道と類似の動きをすることを超音波診断装置で確認できるところまで作り込んでいる。ただしこの作成までに研究時間の多くを費やし、この中を流れる水流の変化を観察するところまでには至っていないが、実験系の構築までは完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
仮想空間上で排尿全期間に渡る膀胱・前立腺部尿道の動きとそれに連動した尿流動態のシミュレーションを行うモデルを作成し、内視鏡映像から作成した尿道の排尿時の動きを推測し、これまでの剛性体モデルとの比較を行う。そのためには①平成27年度までに作成した膀胱壁運動解析ソフトを用いて、20例程度のヒト排尿時膀胱の動きを計測し、平均的な膀胱の運動をモデル化する。これより排尿時内圧が約30 cmH2Oになるように膀胱壁の粘弾性を設定し、連成解析に備える。②尿道ファントームの動きを超音波診断装置で計測した数値をもちいて流体解析ソフトで連成解析を行うと同時に、可能であればヒトの排尿時尿道の動きとの比較を行う。③尿道ファントーム中の流体中に気泡を混入させ、超音波診断装置で内部流体の観察を行い、仮想尿道内での計算結果との整合性を検討する。④内視鏡映像から作成した尿道立体画像に②・③で得られた変形量をもちいて連成解析を行い、排尿症状と比較を行うと同時に排尿の各時期に置ける排尿症状の責任部位の同定を試みる。⑤責任病変の同定が可能であった場合、同部に治療を行った後の排尿状態の推測を試みる。⑥最終的に、剛性体モデルによる推測との比較を行い、臨床用途の検査法として必要最低限のアルゴリズムの仕様を策定する。
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Causes of Carryover |
動物実験を計画していたが、ファントームを用いた計測実験が先行したため、動物購入費用が思弁できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
動物実験のための動物購入費用および麻酔薬、動物処理費用(1回分約10万円)に充当する予定です。
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Research Products
(8 results)