2016 Fiscal Year Research-status Report
中腎管コンピテンス維持におけるFgf9/Sox9発現機構と間葉シグナル動態
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26462440
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
城倉 浩平 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (30303473)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中腎管 / 尿管芽 / 分化応答能 / 成長因子 / 転写因子 / 上皮間葉相互作用 / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
後腎の発生には中腎管が必須である。中腎管は、後腎間葉が分泌するグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)をそのレセプターRETで受容して応答を開始し、尿管芽を形成する。この中腎管分化応答性の維持機構は、腎臓の組織再生を考える上でも重要と考えられる。 我々は、中腎管および周囲の間葉に発現する線維芽細胞増殖因子9(FGF9)が、この分化応答性に対し促進的に働くことを見出した。また、主に周囲の間葉に発現し、中腎管の応答性を抑制すると報告されている骨形成因子4(BMP4)が、培養単離中腎管のRET、FGF9等の遺伝子発現を低下させ、FGF9が培養間葉のBMP4遺伝子発現を低下させることを確認した。そこで、腎臓発生に必須とされる転写因子に注目してさらに解析を進め、BMP4が培養単離中腎管のSox9のみならずHnf1b, Emx2, Pax2, Lhx1等の転写因子発現を低下させることを確認した。 平成28年度には、BMP4の中腎管応答性抑制作用について、遺伝子発現のみならず、現在用いている中腎器官培養系においても形態学的に確認できるかを検証した。GDNFによる中腎管の尿管芽誘導にBMP4を添加すると尿管芽形成は強く抑制され、また、組織内在性BMP4の働きを阻害剤等で抑制すると、尿管芽形成は促進傾向が認められた。これにより、BMP4が中腎管の分化応答性に対し、抑制的に働くことが確認された。通常の中腎器官培養にBMP4を添加すると、中腎管は狭小化し、免疫染色を用いた解析では、上皮細胞核のHNF1b染色は対照に比べ減弱が認められた。これらのことから、間葉のBMP4による中腎管の分化応答性抑制機構には、腎臓発生に必須とされ、GDNFに対する応答性を支持すると考えられるHNF1b等の転写因子の発現制御が含まれる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度には、所属教室が分担する学会開催に関する業務があり、研究時間が十分に確保できなかった。主にこの理由により、研究期間の延長申請を行った。 計画段階では、FGF9とSOX9の相関に着目して中腎管分化応答性の理解を進める予定であったが、BMP4を用いたこれまでの応答性抑制実験の結果から、SOX9は、BMP4により発現が変動する幅広い転写因子群の中の一つと考えられる。特に、腎臓発生に関わる遺伝子カスケードの上流に位置するとされる転写因子HNF1b, EMX2などの発現低下が、応答能抑制の基幹にある可能性がある。FGF9とBMP4との関係を含む中腎管上皮間葉相互作用がこれらの転写因子発現に与える影響を、さらに解析する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
腎臓発生に重要な転写因子群に対するFGF9とBMP4の作用を明らかにし、どのような支持・抑制のバランスがあるのかを引き続き探る。PCRアレイ等、効果的に遺伝子発現変動を捉えることができる手法を検討する。
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Causes of Carryover |
進捗状況の欄で述べた学会開催業務の理由により、主として動物実験、組織培養、遺伝子解析に使用予定であった物品費等の予算執行に変更があった。研究期間の延長申請を行い、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、研究のための備品購入、消耗品購入、学会参加費および旅費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)