2016 Fiscal Year Research-status Report
ABO血液型不適合移植腎障害におけるADAMTS13、vWFと免疫学的順応
Project/Area Number |
26462457
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
齋藤 和英 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (20262438)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 由紀 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (70422607)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ABO血液型不適合腎移植 / 血液型糖鎖抗原 / 血管内皮細胞 / アンカー蛋白 / ADAMTS13 / vWF / 血栓性微小血管障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度に研究を開始した。平成26年度・27年度は①臨床症例の臨床病理学的並びに血液学的検討、②ABO血液型糖鎖抗原合成酵素と血管内皮細胞特異的蛋白質の合成を主に行った。①においては自施設におけるABO血液型不適合腎移植症例の0時間・1時間・イベントまたはプロトコル腎生検標本におけるADAMTS13,vWF,Fibrinogen, C3c, C4d, IgG, IgMの系統的経時的検索と臨床経過についての検討を行った。その結果、移植後に抗体関連拒絶反応(AMR)、血栓性微小血管障害(TMA)を発症した症例とそれ以外の症例の比較では、血管内皮細胞障害の強さに応じて臓器障害発症の前後におけるADAMTS13活性の一時的な低下とその後の回復が見られることが明らかとなった。
②では血液型糖鎖合成酵素をコードする遺伝子をトランスフェクトしたHEK293細胞において、合成酵素の産生状況をイムノブロッティングとフローサイトメトリーで確認した。次の段階としてvWF,PECAM-1などの血管内皮細胞特異的蛋白質の遺伝子トランスフェクトによりこれらの蛋白質を発現させ、HEK293細胞膜上で血液型糖鎖+アンカー蛋白(vWFまたはPECAM-1)を共発現させることによりin vivoの腎血管内皮細胞にmimicさせた細胞の作成を試みた。平成28年度後半に入りようやく血液型糖鎖とvWF,PECAM-1の共発現が確認できた。ここから抽出したヒト腎血管内皮細胞類似の糖鎖アレイを用いた、患者血清中の抗A抗B抗体のポリクローナリティと特異性の解析系を確立でき、血管内皮細胞障害におけるADAMTS13とこれらの分子との相互作用についての解析が可能になった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①ABO血液型不適合腎移植症例の腎生検標本におけるADAMTS13、vWFをはじめとする凝固線溶系および補体関連分子の免疫組織学的検討は、症例数が限られる上に、近年の免疫抑制療法の進歩によって高度のAMRやTMAを発症する症例数が減っており、重症例と軽症例・無反応例の定量的な比較解析に困難が生じている。 ②In Vitro培養細胞系で血管内皮細胞特異的蛋白であるvWF, PECAM-1(アンカー蛋白)と血液型糖鎖抗原を共発現する系の作成に時間がかかった。ようやく平成28年度後半になってこの系を安定して作成することができるようになり、これらの分子を抽出し、糖鎖アレイを構築し、患者血清中ならびに正常対照中抗A抗B抗体の結合特異性の解析が緒についたところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
①ABO血液型不適合腎移植のAMR、TMA発症時の血管内皮細胞障害におけるADAMTS13、vWF, PECAM-1並びに補体系の関与については症例の蓄積によりある一定の見解を示すことは可能と思われ、今年度も症例ベースでの検討を加える。 ②患者血清中に存在する抗A抗B抗体が腎血管内皮細胞膜上に発現する血液型糖鎖抗原ーvWF,PECAM-1(アンカー蛋白)複合体に結合し、補体を活性化させる過程を解析する第一歩として、糖鎖アレイの作成にようやくこぎ着けた。今年度はこの糖鎖アレイを用いて、 患者血清中の抗A抗B抗体の特異性のサブタイプ解析に集中し、AMR、TMA発症症例と非発症症例の違いを見いだすとともに、このプロセスに対するvWFマルチマー切断酵素とされるADAMTS13の役割について臨床病理学的検討との比較において一定の見解を示したい。
|
Causes of Carryover |
HEK293細胞にたいしてヒト腎血管内皮細胞上に発現するABO血液型糖鎖抗原およびそのアンカー蛋白であるvWF,PECAM-1を共発現させることにようやく成功し、この分子を抽出・固相化した糖鎖アレイの作成にようやくこぎ着けた。この過程に時間を要していたため、次年度への1年間の研究期間の延長を申請した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、臨床症例の蓄積と臨床病理学的解析を追加するとともに、平成28年度後半に作成した糖鎖アレイを用いて、患者血清中の抗A抗B抗体の特異性の解析に踏み込める予定である。 具体的には、AMR、TMA発症症例と非発症症例、非移植例(対照例)の血清中に存在するに抗A抗B抗体(A,B血液型糖鎖抗原・抗体ともにポリクローナルであると考えられている)の質的な違い、すなわち血液型糖鎖サブタイプとアンカー蛋白質の違いによる、結合特異性・補体活性化能の特異性を明らかにする。この過程におけるADAMTS13(vWFマルチマー切断酵素とされる)の関与についても解析を進め、ABO血液型不適合腎移植のAMR,TMA発症や免疫学的順応成立メカニズムの解明を目指す。このために次年度使用額を用いる予定である。
|
Research Products
(15 results)
-
-
-
[Journal Article] A comparative study of the ATP concentrations in the peripheral CD4+ lymphocytes of living donor and cadaveric donor renal transplant recipients.2017
Author(s)
Sugiyama K, Tsukaguchi M, Kusano J, Isogai K, Sasahara H, Suzuki N, Toyama A, Nakagawa Y, Saito K, Takahashi K, Hirano T.
-
Journal Title
Current Topics in Pharmacology
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Results of a multicenter prospective clinical study in Japan for evaluating efficacy and safety of desensitization protocol based on rituximab in ABO-incompatible kidney transplantation2017
Author(s)
Kota Takahashi, Kazuhide Saito, Shiro Takahara, Shohei Fuchinoue, Takashi Yagisawa, Atsushi Aikawa, Yoshihiko Watarai, Norio Yoshimura, Kazunari Tanabe, Munio Morozumi, The IDC-C2B8 ABO-IKTx Study Group
-
Journal Title
Clin Exp Nephrol
Volume: 21
Pages: 705-713
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-