2015 Fiscal Year Research-status Report
好酸球性鼻副鼻腔炎における組織リモデリングとその対策
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26462581
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
清水 猛史 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00206202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神前 英明 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (10402710)
清水 志乃 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (50505592)
戸嶋 一郎 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80567347)
小河 孝夫 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (90549908)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 好酸球 / 上皮細胞 / MUC5AC / IL-8 / EGF受容体 / LPS / 杯細胞化生 / TNF-alpha |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、好酸球性細胞株(EoL-1細胞)あるいは末梢血好酸球と気道上皮細胞の共培養により、その相互作用によって著明な粘液(MUC5AC)産生やサイトカイン(PDGF,VEGF, IL-8)産生が生じること、その機序として気道上皮細胞におけるEGF受容体のtransactivationが関わっていることを明らかにした。さらにEGF受容体のtransactivationは、膜結合型のMatrix metalloproetinaseの活性化により、膜結合型のリガンドであるTGF-alphaやamphiregulinが切り離され、EGF受容体を活性化させて生じることを、それぞれの阻害薬や中和抗体を用いて証明した。 そこで、上皮細胞と好酸球の相互作用だけでない、それ以外の炎症性刺激についても検討したところ、LPS刺激やTNF-alpha刺激、トロンビン刺激による、気道上皮細胞からの粘液(MUC5AC)産生やIL-8産生が、いずれもEGF受容体阻害薬(AG1478)で濃度依存性に抑制され、多くの炎症刺激による上皮細胞からの粘液・サイトカイン産生が、EGF受容体のtransactivationを介して生じていることが明らかになった。 以上の結果からEGF受容体をターゲットとした難治性上気道炎症に対する新たな制御法の可能性を、ラット鼻粘膜上皮の炎症モデルを利用して検討した。ラット鼻腔にLPS(0.1mg)を3日間連日点鼻すると、鼻中隔粘膜に著明な杯細胞化生、粘液産生と好中球浸潤が認められる。このモデルを利用して、EGF受容体阻害薬(AG1478)の作用を検討した。LPS点鼻の1時間前にAG1478を腹腔内投与すると、濃度依存性にLPS刺激による鼻粘膜上皮の杯細胞化生や粘液産生、好中球浸潤が優位に抑制された。 EGF受容体阻害薬は既に臨床では抗ガン剤として使用され、全身投与では様々な副作用が出現する可能性がある。そこで次に、AG1478の局所鼻腔内投与の効果を検討したところ、LPS点鼻の1時間後にAG1478を点鼻投与すると、濃度依存性に腹腔内投与とほぼ同等な抑制作用が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
好酸球と上皮細胞の相互作用の機序を明らかにし、EGF受容体のtransactivationが気道炎症における、粘液・サイトカイン産生に重要な働きをしていることを証明した。次に、さまざまな刺激による粘液・サイトカイン産生にこの機序が関わっていることを明らかにし、さらに、LPS刺激によるラット鼻粘膜の炎症モデルを利用して、EGF受容体阻害薬の腹腔内投与が粘液産生や好中球浸潤を著明に抑制すること、EGF受容体の局所点鼻投与によっても腹腔内投与と同様な抑制効果が得られることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、LPS刺激によるラット鼻粘膜炎症モデルで、EGF受容体阻害薬の腹腔内および局所点鼻投与の有効性を確認することができた。そこで、アレルギー性炎症のラット鼻粘膜炎症モデルで同様な効果を検討する予定である。 ラットにOVAの腹腔内感作と点鼻投与によってアレルギー性炎症モデルを作成し、杯細胞化生、粘液産生、好酸球浸潤、好中球浸潤などに対するEGF受容体阻害薬の抑制作用を、腹腔内投与と局所点鼻投与によって比較検討する予定である。 また、気道上皮細胞からの、好酸球性炎症に関わるeotaxinやRANTESの産生と、EGF受容体阻害薬の作用を検討し、さらに、鼻腔線維芽細胞からのサイトカインや細胞外マトリックス産生に対する作用も検討する予定である。
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