2015 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部扁平上皮癌におけるマイクロRNAを基点としたセツキシマブ効果予測因子の探索
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26462596
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
花澤 豊行 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90272327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 直彦 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345013)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マイクロRNA / セツキシマブ / 頭頸部扁平上皮癌 / EGFR / 分子ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
頭頸部扁平上皮癌の臨床において、遠隔転移をきたした患者の生命予後は極めて不良であり、治療法も限定的である。頭頸部扁平上皮癌細胞では、高頻度に上皮成長因子受容体(EGFR)の過剰発現が認められることから、EGFRを特異的に阻害する分子標的薬(セツキシマブ)が認可され臨床で使用されている。セツキシマブ投与患者の治療反応性はおおむね良好であるが、治療抵抗症例や治療終了後の再発症例も存在する。現状において、セツキシマブに抵抗性を示した患者の治療法は、既存の化学療法以外には殆ど存在しない。これらの患者に対する新規治療法の開発に向けては、セツキシマブに抵抗性を示した患者の臨床検体を用いて、ゲノム科学的な解析を行い、治療抵抗性の分子メカニズムの解明が必要である。我々は、頭頸部扁平上皮癌において、タンパクをコードしないRNAの1つであるマイクロRNAに着目して研究を行い、頭頸部扁平上皮癌における「癌抑制型マイクロRNA」の探索と、マイクロRNAが制御する新規分子ネットワークを解明してきた。本研究ではセツキシマブ使用後に腫瘍が残存・再発した症例の臨床検体から、マイクロRNA発現プロファイルを作成し、発現変化を認めたマイクロRNAを起点とした分子ネットワークの解明を行っている。これにより治療前にセツキシマブに対する治療効果を予測する因子を追及することと最終的にはセツキシマブの作用機序の解明に近づくことができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
千葉大学医学部附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科では、セツキシマブ使用後に腫瘍が残存した症例、治療後に再発した症例に対してサルベージ手術を行っている。サルベージ手術を行った患者の中で、本研究の同意を得た臨床検体からRNAを抽出し、cDNAライブラリー作成後、次世代シークエンサーを用いた網羅的なマイクロRNA発現解析を施行した。現在までに正常上皮組織、未治療癌組織、セツキシマブ治療抵抗性癌組織の3群についてデータを習得することができた。セツキシマブ治療抵抗性癌組織において、他の組織に比べて発現の上昇または低下しているマイクロRNAについて検討を行っている。 また、EGFRを制御することが予測されるマイクロRNA(miR-1、miR-206、miR-23b)について検討した。その結果、miR-1、miR-206およびmiR-23bは、直接EGFRに結合し、発現を抑制することが判明した。更に、これらマイクロRNAは頭頸部扁平上皮癌組織で優位に発現抑制されており、機能解析から「癌抑制マイクロRNA」であることが示された。更に、これらのマイクロRNAがターゲットとするEGFR以外の遺伝子についても検討を行った。その1つのターゲットである肝細胞成長因子受容体(c-MET)は頭頸部扁平上皮癌での過剰発現が認めている。miR-1、miR-206およびmiR-23bがc-METに直接結合し、その発現を抑制することを明らかにした。c-METがセツキシマブ治療抵抗性の獲得メカニズムの一旦を担っている可能性を考え、治療抵抗症例でのc-METに発現解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロRNA発現解析を施行した正常上皮組織、未治療癌組織、セツキシマブ治療抵抗性癌組織の3群についてデータマイニングを行い、セツキシマブ治療抵抗性癌のマイクロRNA発現プロファイルを完成させた。このプロファイルを基に、セツキシマブ治療抵抗性癌において特異的に発現変動するマイクロRNAを探索する。探索されたマイクロRNAについては、機能解析を施行して、「癌遺伝子機能」または「癌抑制機能」があるか、検討を行う。「癌遺伝子機能」あるいは「癌抑制機能」が認められれば、これらマイクロRNAを起点とした分子ネットワークの探索を行う。抽出された分子ネットワークに含まれる分子を検討し、セツキシマブ治療抵抗性に関する分子を探索する。更に、セツキシマブ治療抵抗性に関する分子の活性を遮断する方法を見つけ出し、セツキシマブ治療抵抗性解除につながる治療薬の探索を行う。
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Causes of Carryover |
手術検体が回収できてはいるが、その組織中のマイクロRNAの解析が完了していない項目が存在し、そのために経費(物品費)が余剰となっているように算出されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残りの解析項目についても、試薬の購入を行い、迅速に解析を完了させ、データを収集する予定である。
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[Journal Article] MicroRNA expression signature of oral squamous cell carcinoma: functional role of microRNA-26a/b in the modulation of novel cancer pathways.2015
Author(s)
Fukumoto I, Hanazawa T, Kinoshita T, Kikkawa N, Koshizuka K, Goto Y, Nishikawa R, Chiyomaru T, Enokida H, Nakagawa M, Okamoto Y, Seki N
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Journal Title
Br J Cancer
Volume: 3
Pages: 891-900
DOI
Peer Reviewed